世界中のあらゆる常識を変えた新型コロナウイルスによる感染症ですが、それはまたこれまで我々が気づいていなかった真実を可視化する役割も果たしたようです。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、コロナ禍により世界が止まったからこそ見えてきた日米中露各国の「真の姿」を解説。その上で我々一人一人に対して、自分自身をコントロールするために気を配るべきことを説いています。
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動いて見えなかったものが止まって見えた
1.中国の野望が見えた
コロナ禍で世界は止まった。止まることによって、見えないものが見えてきた。
動いているときには見えないものが、止まると見える。我々の生活も同様だ。毎日のルーチンは、何も考える必要がない。同じ行動パターンを繰り返すことは安定を意味するが、一方で、五感のセンサーや、感情や思考を鈍らせることにもつながる。
動きが止まると、センサー、感情、思考が戻ってくる。コロナ禍が変えたものは、世界だけではない。我々の内面も変えたのだ。
日本は安全保障で米国と軍事同盟を組み、経済では中国と戦略的互恵関係を結び、両国とのバランス外交を進めてきた。
しかし、米国と中国が対立することで、このバランスを維持することができなくなった。それだけではない。中国そのものがこれまでと違った姿を見せ始めたのだ。
これまで我々は、漠然と以下のように考えていた。
中国は共産主義でありながら、経済的には日本より資本主義的である。中国には拝金主義がはびこっており、経済的合理性が徹底している。今後、中国は更に改革開放が進み、やがては民主国家になるのではないか。
習近平が総書記になってから、中国国内の締めつけは強くなっていたが、それでも基本的には、中国は経済第一主義の国だと考えていたのだ。しかし、それは間違いだった。
中国は共産主義を捨ててはいなかった。というより、経済成長は世界中に共産主義を拡大していく手段に過ぎなかった。全ては、資本主義に対する長期的な「超限戦」だったのだ。「超限戦」とは、これからの戦争を、あらゆる手段で制約なく戦うものとする考え方で、通常戦だけでなく、外交戦、国家テロ戦、諜報戦、金融戦、ネットワーク戦、法律戦、心理戦、メディア戦などを含むものだ。
それを証明するかのよう、中国は経済合理性に反する行動をするようになった。
まず、国際金融都市の「香港」を完全に潰してしまった。中国政府にとって、香港の利用価値は高い。香港を維持していた方が経済的には有利だったはずだ。
次に、国際競争力のあるICT企業を次々と国営化していった。国営化した企業はやがて競争力を失うだろう。
国内経済と地方政府の財政を担っていた不動産業も救済しなかった。国内で成長していたゲーム産業、教育産業、エンターテインメント産業も潰してしまった。
これらの一連の政策は経済的に損失を与えるものだが、中国政府は躊躇することなく実践している。
世界が動いている時に見えていた中国は、偽りの姿であり、世界が止まったときに真実の姿が見えてきたのである。
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2.分断された米国が見えた
米国は、世界一の軍事力と経済力を持つ超大国だ。そんな米国も一枚岩ではなかった。米国大統領選挙では、分裂した米国の姿が露になった。
分裂は政党や政治家間だけではない。マスコミの偏向報道も目立った。特にトランプ大統領への攻撃は熾烈なものだった。キャスターはトランプ大統領の演説を途中で遮り、メガテック企業は現役大統領のアカウントを停止し、言論を奪ったのだ。
米国国内の分断は、米中分断にもつながっている。トランプ氏は中国を敵とみなし、ロシアに対しては比較的友好的だった。バイデン氏は、中国には融和的な姿勢を見せる一方で、ロシアに対しては徹底的に敵対している。
現代は、国家という組織とは別に、多国籍企業や国際金融資本など、世界的に強大なパワーを持った勢力が存在する。
それも世界が止まってから、見えてきたことでもある。
米国は超大国であるからこそ、大統領でさえも全体をコントロールできない様々な強大なパワーが渦巻いているのだ。
3.孤立するロシアが見えた
ロシアのウクライナ侵攻は世界を驚かせた。まさか、世界の眼前でロシアという軍事大国が堂々と戦争を仕掛けるとは思っていなかったからだ。
西側諸国の政府及び主力メディアは、独裁者プーチンが一方的にウクライナを責めたてていると報じている。しかし、90年代初めにNATOは東方拡大しないとゴルバチョフと約束しながら、それを反故にしている。更に、ウクライナは、ドンバス地域での戦争を終わらせることを目的としたミンスク合意を履行していない。
勿論、一方的に戦争を仕掛けたロシアの罪は否定できない。しかし、プーチンが悪でウクライナが正義という勧善懲悪的な見方はあまりにも単純かつ一方的といえるだろう。
また、米国、NATOは早々に派兵しないと発表し、経済制裁を主張しているが、そのことがプーチンを動かした部分もある。
こうした国際情勢に対する見方も世界が動いていたときには分からなかったことだ。世界が止まったお蔭で、それまで隠されていたことが次々と明るみに出ているのを感じる。
4.日本の混沌が見えた
国際政治は国家の意志だけで動いているわけではない。宗教組織、金融機関、グローバル企業、メガテック、その他の組織等がそれぞれの戦略や利害対立の中で、様々な工作活動や謀略等を駆使して、超限戦を展開しているのである。
そして、相対的に動く政治と経済は互いに干渉し、複雑に動いている。
世界が動いていたときには、マスコミの中立性を信じられたが、現在はファクトとフェイクの境界は曖昧になっている。それぞれが戦略的な意図を持って情報戦を戦わせているのだ。
日本も米国同様に分断している。あるいは分裂しているかもしれない。米国追随が正義だと信じている人もいれば、日中友好が正義だと信じている人もいる。平和憲法の固持が正義であるという人もいれば、改憲こそ正義だという人もいる。
強力なリーダーシップが存在せず、マスコミは、敵対する米国と中国の情報を適当にミックスしながら、常に国民を不安にする報道を繰り返すだけだ。コロナ禍の中でも、科学的な分析や情報を公開するのではなく、感情的に恐怖を煽り、政治的に行動制限とワクチン接種を呼びかけているだけだ。
西欧的な対立軸もなく、対立軸がないから分断も起きず、ただ混沌の中にいる。それが現在の日本ではないか。
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編集後記「締めの都々逸」
「動いていれば 瞬間だけど 動かぬものは 永遠に」
陰謀論に人口削減計画というものがあります。世界の人口が増えすぎて、食料が足りなくなり、環境が汚染されるので、恣意的に人口を削減しようというものです。具体的には、世界中の人に避妊薬を注射してしまうという話でしたが、まさか、世界中の人に同時に注射を強制することなんて不可能だ、と思っていました。
しかし、気がつけば、世界中の人が同じワクチンを注射しています。こんなことが起きるんだなぁ。と驚いています。
そもそも世界をコントロールする偉い人が簡単に人の命を奪うわけがないじゃないか、とも思っていたのですが、これについても、もしかすると人の命なんて軽く考えているかもしれないな、と思ったりしています。
他人をコントロールするような武器もお金も持たない庶民としては、自分をコントロールするしかないわけです。ですから、簡単に自分の行動を他人に任せてはいけません。(坂口昌章)
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image by: Robert Way / Shutterstock.com