ロシアのウクライナ侵攻にも見える、大国からの小国侵略。過去のチベットにも同じようなことが起きていました。そこで今回は、メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』の中でチベットについての入門書を紹介。中国からの侵略に対し、独立国家であったチベットはどういう選択をしてきたのでしょうか。
【一日一冊】チベット入門
『チベット入門』
ペマ ギャルポ 著/日中出版
ロシアのウクライナ侵攻もあり、大国が小国を侵略することはよくあることということで、手にした一冊です。
現在の中国の「チベット自治区」は、チベットという独立国家でした。ところが1949年、中国共産党が内戦で勝ち政権を取ると、中国は武力を背景に、チベットを併合してしまいました。
その時の「17条協定」では軍事・外交以外の内政はチベット政府の自治にゆだねることになっていましたが、結局中国は軍を派遣し、内政干渉し、仏教を弾圧しました。
1959年には、これに反発したチベット民衆が決起しましたが、人民解放軍はこれを殲滅する作戦を実施し、多くの死者を出しました。現在のウクライナ危機もウイグル問題も、実は歴史の繰り返しにしかすぎないように私には感じるのです。
中国解放軍は八方面からチベットに侵入を開始、東チベット首都シャドムに全面攻撃を加えていた(1950年10月7日)(p119)
チベットは自治や宗教の自由を保障すると騙されて中国に併合され、7、8年すると農業の集団化が強制されたり、寺院が破壊されてしまったのです。
1959年の血塗られた金曜日と呼ばれる弾圧では、裕福な地主や村のリーダーが野原に集められ、中国人によって銃殺されたという証言があります。また、裕福な人を磔にして火あぶりにしているのを中国人に見ているよう命じられた人もいたそうです。
1950年から1984年までの間に死んだチベット人は120万人以上になるとチベット亡命政府は発表しています。割り引いて考えても万人単位でチベット人の命が失われたのは事実なのです。中国はこれをウイグルで再度行っているにすぎないのです。
武力と騙しで併合。土地と富を奪い、反発したら住民を殺害、収容所送りというのが中国のパターンであることがわかります。最近は、収容所の犯罪者を臓器提供の資源としても有効活用しているのです。
数多くの人々が財産を公開しなかったという理由で処刑された(p199)
テレビ朝日の玉川という人間が現在のウクライナへのロシア侵攻に対して、「圧倒的な戦力差があるなかで、長引けば、市民の犠牲が増える…命を守ること以上に、大事なことは果たしてあるんだろうか」と述べています。
私はこの本を読んで「命を守ることを選んだチベット人は、国を失い、結局、多くの命を失った」ことを知りました。当時のチベットには表面上もっともらしいことを口にする人間を信じる人が多かったのでしょう。そしてその先には地獄が待っていたのです。
ギャルポさん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★☆☆(79点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(お薦めです!ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(買いましょう。素晴らしい本です)
★★★☆☆(社会人として読むべき一冊です)
★★☆☆☆(時間とお金に余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては価値を見い出すかもしれません)
☆☆☆☆☆(こういうお勧めできない本は掲載しません)
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