コロナ禍にあって厳しい業績が続く鉄道各社ですが、JR東日本の「攻めの姿勢」に変化はないようです。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』ではMBAホルダーの理央 周さんが、同社がスタートさせた駅ナカ食品の宅配事業について詳しく紹介。その上で、保有する経営資源に新たな事業を加え、全てを駅周辺で囲い込むというJR東日本の戦略を高く評価しています。
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JR東日本の新規事業に学ぶ経営資源を活用する差別化の仕方
JR東日本が、宅配事業に進出しました。品川駅中に、ちょっとしたショッピングモールの様な場所があります。
お土産や駅弁はもちろん、惣菜やベーカリーも売っていて、ご飯を食べられるレストランも豊富です。先日も駅ナカにある「バルマルシェ コダマ」という店のワンコインのモーニングセットが、話題になっていました。
また、食品だけでなく、ユニクロや書店、雑貨屋さんのような物販のお店もあるのです。これがいわゆる駅ナカと呼ばれる、ショッピングスペースです。
JR東日本では、その駅ナカで販売している食品を、駅の物流の拠点に集めて、そこから宅配をする、ということです。
この商品の配達に、単発での仕事を請け負う、ギグワーカーと呼ばれる人たちを起用するのです。
ビジネスモデルとしては、ECとウーバーのようなシェアリングを合体させたもの、といえます。
これを、スタートアップ企業の「207」という会社と組んで行うそうです。
日経新聞によると、2021年11月には、新潟の漁港で朝に水揚げされた鮮魚を、新幹線で都内に運んで、そのギグワーカーが宅配する実験を実施したそうです。
計画としては、品川駅の駅ナカで販売している食品を、この仕組みで配送するとのことです。
私も品川駅はよく利用するのですが、定番のお土産や、新幹線で食べるおいしいお惣菜、お弁当、ワインショップもあります。本当に何でも揃う感じです。
さらに、期間限定のショップが、出店のような形で出店していたりするので、目新しいものもあり、近隣に住んでいる人や、働いている人たちの楽しみが増えることが予想されます。
JR東日本の事業は鉄道での人や物資の輸送がメインです。駅という抜群の立地を生かして、物販にも力を入れています。
主要駅の多くで、JR東日本グループは、アトレやルミネという商業施設を有していて、そこにも食品や飲食店があります。
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また、駅ナカの店ではJREポイントという、Tカードやポンタカードのような、ポイントを貯めることができます。
貯めたポイントは、JRの交通系カードのSUICAに、チャージすることができ、そのままSUICAのポイントとして使えるので、運賃支払いやショッポイングにも便利です。
もともとSUICAカードでJRに乗ると、少し割引になったりするので、同じ乗るならJRにする、また、同じ買い物をするなら、駅で買っていけば時間もセーブできるし、ポイントもたまる、という、お客様維持のサービスにもなっています。
そこに今回の宅配が加わると、「同じ宅配ならJRにしようかな」と、選ばれる理由が増えることになります。
このように、これまでJR東日本が持っていた、一等地の場所で、便利に物が買え、さらに食事など楽しむことができる、さらに、支払いもSUICAでやりポイントも貯まる、というビジネスモデルに、今回の宅配が加わって、全てを駅周辺で囲い込む、という戦略を取っています。
これは、楽天がショッピングだけでなく、保険や車検、クレジットカードなどでポインをためて、楽天ファンになって欲しい、また維持をする、という「経済圏」を作る戦略と似ていますよ。
持っている経営資源を活用して、顧客サービスを充実させるのは、ビジネスの鉄則です。
JR東日本の経営資源の中で、唯一無二の好立地の「場所」、鉄道で移動してくる人流をそのまま集客できること、の2点が特に他社が真似できない、参入障壁の高い資源です。
そこに、通販を加えることで、これからどうなるのか?とても楽しみです。
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