世界史の教科書には決して掲載されない、マイナーな国家が滅亡した理由。それを知ることによって、私達は何を学ぶことができるのでしょうか。今回は、メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の中で、Amazonでも売上1位に輝いたという国家滅亡史について書かれた一冊を紹介しています。
傑作。消えた48カ国とその理由とは?⇒『世界滅亡国家史』
ギデオン・デフォー・著 杉田真・訳 サンマーク出版
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、教科書に載らないた48カ国のマイナー国家の「滅亡国家史」を、シニカルにまとめた一冊。
Amazon.comでも1位になったという、知的好奇心あふれる歴史書で、東京大学名誉教授の本村凌二氏(歴史学者)も、推薦の辞を寄せています。
それもそのはず、著者のギデオン・デフォー氏は、オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻した秀才でありながら、作家・アニメ脚本家としても活躍の人物。アカデミー賞にノミネートされた『The Pirates! In an Adventure with Scientists』の脚本も執筆しています。
本書が秀逸なのは、基本面白おかしく48カ国の運命を語りながら、その成立と滅亡の原因をまとめている点。
ロシアとウクライナが戦争している今、何を安全保障上、考えておかなければいけないか確認するために、ぜひ読んでおきたいところです。
特に、「滅亡国家の教訓」として書かれた部分は、勉強になります。
忙しい人は、ここだけでも読んでおくといいでしょう(ちなみに教訓の1は、
「イギリスが助けてくれる」は実現しない
でした。笑)。
本書を読んでいると、歴史のなかで、国境が次々と書き換えられてきたことがよくわかります(次、どういう展開があり得るかの参考になります)。
庶民の立場から見ても、どんな土地に住むと間違いないか、教訓が得られるでしょう。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
<国家は『マーヴル・スーパーヒーローズ』のキャラクターたちのように、一度死んだあとに復活してもおかしくない>
<テオドールが彼らに協力したのは、健気な弱者を助けるという英雄的な行為に惹かれたこともあったが、最大の理由は、サンゴの密輸をするチャンスに魅力を感じたからだった(コルシカ王国)>
<滅亡国家の教訓1 「イギリスが助けてくれる」は実現しない
滅亡国家の教訓2 他国が「手を出さない土地」は怪しい
滅亡国家の教訓3 「口約束」と「うまい話」は疑うべし
滅亡国家の教訓4 現実の「真反対」を宣伝してはいけない>
<クリーク族はもうこの自称・指導者を信じられなくなっていた。彼らはひそかにスペイン人と契約を結んだ。それは、ボウルズをスペイン人に引き渡す代わりに、自分たちの債務を免除してもらうというものだった。こうしてボウルズは、ハバナでふたたび囚人になった。(中略)他方、リーダーを欠いたクリーク族に国の運営は不可能だった。アメリカはまたたく間にマスコギー国の領土を飲み込んだ。ボウルズが建設した首都は、のちに大統領になるアンドリュー・ジャクソンによって徹底的に破壊され、クリーク族は虐殺された。ジャクソンは、その労苦によって20ドル紙幣の顔になった>
<人間というのは、たとえ絶海の孤島にいたとしても、どうでもいいことで同胞の半分を敵にまわして争うものなのだ>
<国を作った男たちの人生を眺めると、奇妙な共通点があることに気づく。父親を亡くしている、母親に溺愛されている、浮気者、かつて軍人か文筆家だった、金遣いが荒い、夢想家の傾向がある……>
<教皇の管轄外にあり、タバコを栽培するのに最適な気候だったコスパイアは、自分たちがほぼ独占的にタバコ栽培を行えることに気づいた。これが250年にわたる好景気の始まりだった>
<中立は決して「安全」ではない>
<トゥヴァがのちにソ連に飲み込まれると、表向きの理由は、この併合はトゥヴァの国民が栄光あるソビエト連邦に自ら加わることを望んだからだとされた。間違っても、トゥヴァの山脈に堆積されている大量のウランに、スターリンが1944年になって急に興味を持つようになったからではない>
・「暇」すぎて滅亡 エルバ公国
・「モンゴル」なめすぎて滅亡 ホラズム
・「カルト」で滅亡 太平天国
・「殺人鬼」上陸で滅亡 ラパ・ヌイ
・「警官」たった一人 中立モレネ
・「中立」で滅亡 ヴェネツィア
48カ国の大半は、どうしようもない理由で立ち上がり、どうしようもない理由で滅びた国家の話ですが、なかにはクリミアや台湾など、今もくすぶっている地域の問題が含まれています。
歴史の闇に葬り去られた国家の興亡史を知ることで、国家というものの本質や、世界情勢を読み解くヒントが見えてきます。
ぜひ読んでみてください。
image by: Shutterstock.com