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マンションの“長寿化”を目指せ。将来を見据えた取り組みで必要なこと

4月1日より「マンション計画認定制度」というものが始まりました。まだどういった制度なのか明らかにはなっていないのですが、今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では一級建築士でマンション管理士の廣田信子さんが、この「マンション計画認定制度」について噛み砕いて伝えています。

管理計画認定制度をマンションで生かすには

こんにちは!廣田信子です。

4月1日より「マンション計画認定制度」が始まりました。と言っても、何か大きな変化がある訳ではありません。

今年4月1日より開始すると決めた地方公共団体のホームページにアップされています。準備に追われた団体、地方公共団体の担当者の方はたいへんだっただろうと思います。でも、どのホームページを見ても、管理組合の立場に立ってみると、正直、何ための制度なのかがよくわかりません。それは、これからのことかと思います。

一方、設計コンサルタント、管理会社等の、「マンション管理計画認定制度」がらみの記事も目立ちます。それを見て、正直、ちょっと気持ちがざわざわします。何が管理組合にとって分かりやすい「得」なのかと思うと、なかなか理解ができません。

では、つたない私がどう考えるかをお伝えできればと思います。

マンションでは、建替えが容易ではないことから、長寿命化を目指す取り組みが増えてきました。適正化法の改正、管理計画認定制度の出発は、管理組合がマンションの将来を本気で考える出発点になるととらえたいと思います。

マンション管理センターでは2020年に、「マンションの長期マネジメント計画策定の手引き」を作成し、ハードの管理だけでなく管理組合運営、社会環境の変化も合わせたソフト面も含めて30年を超える将来の方向性を考える試みを提案しました。それを広めたいと思っていた矢先のコロナ禍で、なかなかできませんでしたが…。

マンションの長寿命化には、管理組合が今後どのようにマンションを管理していくかビジョンを持つことが大事であり、ビジョンに沿いどのタイミングで大きな費用を要する改修を行うか考える必要があると思います。改正法の施行、管理計画認定制度が、こうした取り組みを始めようとするきっかけになればと思います。

法改正の背景には、高経年マンションの増加で管理不全に陥り外部に影響を及ぼすことを予防したいという考えがあります。これを機会に、自分のマンションの責任は自分たちが持つということを認識することが重要だと思います。

100年マンション、長寿命化マンションを目ざすのであれば、自分がいなくなった後の次の世代に引き継ぐことを考えることになります。そのために、「長期マネジメント計画」のワークショップを行うことが有効だと考えています。マンションに将来住む人への思いや地域との関りを次世代に伝える必要もあります。

管理計画認定制度の認定取得を考える場合も、マンションの未来を考えるきっかけになると捉えると意味があります。未来を考えるには、何かきっかけが必要だからです。

認定取得のためには、新しくなった長期修繕計画作成ガイドラインに合わせて、長期修繕計画を見直したり、修繕積立金の金額や積立方式を変更する必要も生じます。それを実施するには、総会決議が必要で、広く理解を得るには、数年の時間がかかるかもしれません。その間、マンションの未来を考えると言うことが、とても重要なことだと思います。

すぐに認定を取得するというのではなく、認定に向けて取り組むことで管理組合が長期的なビジョンに立ってマンションの管理を考えることができることは、たいへんな意義があることだと思います。

長期修繕計画の見直しをする中で気づくこともあるはずす。

認定基準では長期修繕計画を5年に1回見直すことが前提ですが、これまではそのスパンで見直してこなかったマンションが5年ごとの見直しに改めたり、長期修繕計画にどんな内容が含まれているかを考え、自分たちの考え方を反映したものに改定しようとするケースも出てくるでしょう。

認定基準の趣旨や意味を考え、自分たちの管理の方法を改善する機会にしてほしいと思います。それによって、管理計画認定基準が、自分のマンションには合わないと思う管理組合もあるはずです。

マンションは多様です。一つの基準に合うか、合わないかだけで、そのマンションの価値が決まるわけではありません。

地方公共団体には、認定基準に必ずしも合うマンションばかりではないことも考え、マンションの努力を評価する役割も果して頂きたいと願います。

多様なマンションの努力が、きちんと認められることが、管理組合のがんばりにつながると思うからです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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