MAG2 NEWS MENU

韓国ソウルの真実。北からの核攻撃に「逃げ場なし」という悲惨な実態

ミサイル発射実験を繰り返す独裁国家と国境を接し、常にその脅威と対峙し続ける韓国。もし仮に今、首都ソウルに北朝鮮から核攻撃を受けたとなった場合、市民の命は守られるのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、現地日刊紙に掲載されたソウルにおける避難所の実態を伝える記事を紹介。そこに記されていたのは、首都に住む一般市民に逃げ場はないという悲惨な事実でした。

【関連】旧ソ時代に建設。ウクライナの地下シェルターが想定していた敵

ソウルに核が落ちたら

ソウルに核が落ちたら…というテーマで国民日報で取材している記事があった。簡潔にご紹介したい。

ウクライナのように爆撃を受ければ、韓国は安全なのか。ある理由で戦争が起これば、ソウルが第一標的になる可能性が高い。都市を離れようと車を運転していては立ち往生する道路の真ん中でミサイルが頭の上に落ちないことを祈るしかない。結局、まずは避難所に駆けこまねばならないが、避難所がどこにあるのか分からない人がほとんど。ある地域は避難所が不足しており、収容人員も膨らみ、町内の人が全員入ることもできない。互いに体をくねらせながら隠れていても、一般のビルやマンションの地下駐車場である民間防衛避難所は、核やミサイルを防ぐほど安全に設計されてはいない。

「避難所とはいえ、駐車場だけがぽつんとあるだけです。避難マニュアルもなく民間防衛訓練もしたことがありません」。ソウル恩平区津寛洞(ウンピョング・ジングァンドン)にあるマンション管理事務所のある関係者は、平然とこう説明した。先月24日に訪れた同マンションの地下駐車場は民間防衛避難所に指定された所だ。

行政安全部が決めた通りなら10個の洞(ドン=何丁目に相当)の住民が使用する同マンションの地下駐車場の2階は、戦争が起これば近隣住民1万9,693人を収容しなければならない。しかし、駐車場は進入から簡単ではなかった。マンションに住む住民はエレベーターや階段で降りることができるが、外部の人は自動車が出入りする出入口から歩いて入らなければならない。出入口は傾斜が急な坂道なので、車椅子に乗った障害者や高齢者はかなり下りにくい。駐車場の出入口のすぐ隣の警備室に勤める警備員は、そこが避難所として使われていることも知らないというおそまつさだ。

平日午前10時を過ぎた時間だったにもかかわらず、駐車場の内部はすでに車でいっぱいだった。2万人に達する避難人員が果たして全員入れるのか疑問だ。辛うじてここに入れたとしても駐車場の構造上、砲火を避けることは容易ではなさそうだ。

地下1階は天井の一部が外から日光が入るようガラス張りになっている。砲弾が降り注いだらガラスの破片とともに頭の上に飛んでくるだろう。避難空間を外部から隔離できる遮断器もない。核や生物化学兵器で攻撃を受けると、毒性物質が穴の開いた駐車場の入り口から入りこみ、ここに避難した住民らを窒息させるのは時間の問題。当然のように、防毒マスクや飲料水のように基本的な非常物資も見当たらない。管理事務所の関係者は、「マンションだけで5回目の勤務だが、民間防衛物資が備えられたところは1か所もなかった」と話した。

韓半島で戦争が起これば、ソウル・京畿道住民の大半は真っ先に民間防衛避難所に避難しなければならない。人口の半分が密集している首都圏で、それぞれ自家用車を運転して脱出しようものなら、渋滞した道路の真ん中で車窓の外に落ちる砲弾を見届けるかもしれない。普段から渋滞の激しい主要道路は脱出車両が殺到して歩くことしかできないのは目に見えている。

ロシア侵攻が始まった今年2月24日(現地時間)以降、ウクライナの首都キーウがそうだった。都市を離れられなかったウクライナ人たちは爆撃を避けて地下に隠れた。建物の地下や地下鉄の駅舎がぎっしり詰まっている。多くの民間人が現在も地下にとどまり、不安に震えている。韓半島での戦争憂慮は常に現在進行形だ。北朝鮮は長距離射程砲と大陸間弾道ミサイル(ICBM)挑発を続けている。最近は「軍事的破壊力をソウルの主要標的と南朝鮮軍を壊滅させることに総集中する」という脅迫が、北朝鮮軍序列1位の人物(金与正)の口から出てきた。

米議会調査局(CRS)は17年の報告書で、北朝鮮がソウルに向かって1分間に1万発あまりの砲撃を加えることができると評価した。紛争発生初期、死亡者は最大30万人余りに達するものと予想した。実際に戦争が起これば、韓半島全体で2,500万人が被害を受ける可能性があるとCRSは説明した。

ソウル中心の駅三(ヨクサム)駅は消火器と消火栓、スプリンクラーだけでなく、火災の時に使える緊急避難マスク200個あまりを備蓄していた。しかし、防毒マスクは職員用の6つしかない。それさえも一部はすでに包装を開けて使用したり、使用期限が過ぎた状態だ。換気システムはあっても外部と隔離させるドアはなく、外の空気を完全に遮断することも難しそうだ。駅関係者は「連携した軍部隊から出動して助けるまで職員ができるのは避難など臨時措置だけ」と話す。

避難所数は人口密度に比例しない。居住人口基準で鐘路区は避難所1か所当たり平均1,104人を収容すればよいが、人口対比施設数が最も少ない恩平区は4,743人ずつ収容しなければならない。ソウル研究院の分析結果、龍山住民20万4,262人のうち29.2%にあたる5万9,555人は空襲状況で7.5分(500メートル)歩いても避難所に到達できない。1.4%の2849人は、15分(1,000メートル)行っても避難所を見つけることができない。22.5分(1,500メートル)かかっても避難所に身を隠すことができない住民は1,296人(0.6%)と推定される。

現在、民間防衛避難所は1週間以上の長期滞在を考慮して作った施設でないことも問題だ。戦争が長期化すれば耐え続けることは難しい。ソウル研究院の申相永(シン・サンヨン)先任研究委員は、「民間防衛避難所のうち、政府支援施設は長く滞在できるがそれも延坪島砲撃事件が発生してから、国境地域にだけできた」と話した。

「それでも長期滞在できる被災者臨時住居施設も、長くて1週間未満の滞在状況を仮定したもの。ウクライナのように1か月以上戦争が続く場合、なすすべがない」と語る。北からの核攻撃があったら、事実上逃げ場がないということ。ミサイル発射の直前に先制攻撃をかけて発射台を壊滅するしか手はない。だから尹次期大統領の口から「北に不穏な動きが感知された場合、先制攻撃をかけるしかない」という発言が出るのもむべなるかな、である。(無料メルマガ『キムチパワー』2022年4月18日号)

image by: Shutterstock.com

キムチパワーこの著者の記事一覧

韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 キムチパワー 』

【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け