旧ソ時代に建設。ウクライナの地下シェルターが想定していた敵

2022.03.11
by kousei_saho
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ロシアの侵略を受けるウクライナで、多くの人々が避難する地下シェルター。しかしそれらが備えられた際に想定していた「敵」は、ロシアではありませんでした。今回のメルマガ『パリ大学博士・世川祐多のフランスよもやま話』では歴史学者で日仏交流に情熱を注ぐ世川祐多さんが、キエフの地下シェルター事情を紹介。5,000を数えるという防空壕の歴史や平時の意外な利用のされ方等を詳しく伝えています。

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キエフのシェルター

ニュースは当たり前のように「キエフの人々がシェルターに潜っている」と言う。

しかし、今東京に空爆があるとして、まさか昔の防空壕が残っているわけもないのだから、いまいちピンと来ず、キエフのシェルター事情は一体どうなっているのかと思う人は多いと思う。

ちょうど「France Info」がこの疑問を解決してくれる記事をあげていた。

キエフのシェルターは、何も今回のロシアからの空爆を見越して、硫黄島の地下壕のように急造されたわけではなく、旧ソ連時代に西側諸国からの攻撃に備えて作られたもので、その数は5,000を数えるという。

いかに、ウクライナが地政学的に、西と東の最前線にいるのかということを思い知らされる。パリにはカタコンブやメトロはあっても、シェルターというのは見たことも聞いたこともない。東京に地下街はたくさんあるがシェルターはないであろう。

まさかロシアからの攻撃に使われることになろうとは、シェルターも思わなかったに違いない。

そして、全部が全部そうではないだろうが、日本の戦時中の座れるだけの防空壕というより地下居住空間的なものまであり、ついこの間までの平和な頃には、バーやレストランに改造されて営業されていたものもあるそうだ。

その他地下鉄もシェルターとして活用されている。環境が劣悪なシェルターもたくさんあるであろうが、残念ながら写真で見るだけでは、匂いや窮屈やトイレバス事情が想像し難い。

いつの日か、またウクライナが平和になり、コロナも治って海外に行けるようになれば、きっとウクライナを訪ねシェルターのバーに飲みにいきたい。シェルターが本来の機能ではなく、バーや遊び場に戻れる日がいつか来る。

外の空気を吸いたいだろうし、空を見上げ太陽を思いっきり浴びたいだろうが、ウクライナの人たちは耐え難きを耐え頑張ってほしい。それを念じることしかできず、申し訳ないながら…。

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image by: Dmytro Falkowskyi / Shutterstock.com

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