韓国では尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領が進む人選作業のなかで出した指針が話題となっています。その背景には悪手続きだった文在寅政権時代の膿を出したいとの思いがあるようです。そこで今回は、無料メルマガ『キムチパワー』の韓国在住歴30年を超える日本人著者が、現在韓国国内で起きている実態に迫ります。
尹錫悦の人事哲学=天下り人事を禁止せよ
尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領が、大統領秘書室の人選作業と関連して、「天下り人事を禁止せよ」などの指針を数回指示した。能力中心の人選をせよという人事哲学を尹次期大統領が再度強調したもので、大統領秘書室の人選を控えた状況でこの指示が大きく影響するだろうという観測が流れている。
24日、「大統領職引継ぎ委員会」の関係者によると、尹次期大統領は最近、人選作業の実務陣に
1.公務員の中で若くて有能な人材最優先選抜
2.天下りと請託人事禁止
3.大統領秘書室のスリム化
などを注文した。そして尹次期大統領は「わたしは政界に借金のない人だ」という言葉も改めて強調したという。
「引継ぎ委」の関係者は、「政治家など外部からの圧力に動揺せず、能力中心の人選をせよという尹次期大統領の要請と理解した」と話した。
卜斗圭(ボク・ドゥギュ)元最高検察庁事務局長が新政権の大統領室人事企画官(このポストはこれまでにはなかったポストだ)に取りざたされているのもこのような理由のためだという。
卜斗圭元事務局長は9級公務員として出発し、検察一般職の「星」と呼ばれる最高検察庁事務局長(1級)を務めた人だ。卜元局長は、「尹次期大統領の古い系譜人物(以前から縁のある人間)ではない。
尹次期大統領は検察総長在職当時、最高検察庁事務局長として卜元局長ではなく別の人物を推薦したが、チョ・グク当時法務部長官が卜元局長を最終的に指名したという。
最高検察庁人事事務官と人事書記官を務めた卜元局長は、検察内の代表的な人事専門家に挙げられる。
尹次期大統領側の関係者は、「卜元局長の場合、政界関係者との利害関係が全くない人だ」とし、「次期大統領の人事哲学を実践し、純粋に人材発掘に没頭する適任者だ」と評価した。
卜元局長は引継ぎ委でも内閣および大統領室人事推薦業務を担当してきたという。
これに先立ち、尹次期大統領が人事検証チーム長に検事出身のチュ・ジンウ弁護士を任命したのも、「人選作業の際、政界に振り回されるなという無言のメッセージ」というのが尹次期大統領側の説明だ。
一方、同日発表が予想されていた大統領室首席秘書官級の人選は行われなかった。
張済元(チャン・ジェウォン)次期大統領秘書室長は記者団に対し、「次官級、庁長、首席秘書官、秘書官など(人事対象が)何人かの検証業務が非常に滞っているためと考えればいいだろう」と語った。
検証途中で過去の不正などが次々に明るみに出てくる候補もいて、「引継ぎ委」は人事・人選にはかなり苦労しているようだ。
ペ・ヒョンジン報道官は、「効率的な政府、能力のある政府を作りたいという次期大統領の深い考えが込められているため、慎重に職制改編と人事を考慮している」とし、「有能な政府大統領室をお見せするために努力している。まだその期日を決められていないという点はなにとぞご了承ください」と述べた。
大統領室の職制改編も確定状態ではないと尹次期大統領側は伝えた。
これと関連して安哲秀「引継ぎ委員長」は同日、引継ぎ委のブリーフィングを通じて、「次期政権で最も重要な役割は未来のドル箱を探すことであり、特に第4次産業革命人材を育てることだ」とし、「それをするための最大の象徴の一つが科学教育首席を設けること」と明らかにした。
さらに安委員長は、「これ(科学教育首席新設)自体が、次期政府が文在寅政府と比べて違うということを示すことができるものではないか」とし、「それを(尹次期大統領に)切に申し上げ、(尹次期大統領から)『考えてみる』という回答をいただいている」と付け加えた。
安委員長の要請どおり科学教育首席が新設されれば、新政権の大統領室は「2室(秘書室長・安保室長)、6首席(経済・社会・政務・広報・市民社会・科学教育)、1企画官(人事)体制で出発する可能性が有力だ。
現在、大統領府は「3室8首席」体制である。次期政府の新しい形が、だんだんその姿を現し始めている。政界に「借金」のないその自由さを生かして、思う存分にしがらみのないスリムな政府を作り、公正なる政治をやっていってほしいものである。
(無料メルマガ『キムチパワー』2022年4月25日号)
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