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ホンマでっか池田教授が警鐘。近いうちにやってくる、子どもの思考力を「AIが奪う」日

デジタル教育を先行して進めた国では、学力低下や思考力への影響を懸念する声も上がり、教育政策の見直しが始まっています。AIは人間の能力を高める道具か、それとも考える力を奪う存在なのでしょうか? 今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、生物学者でCX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田教授さんが、海外の事例や将棋・翻訳などの身近な例を交えながら、「AIとの正しい付き合い方」について考察しています。

馬鹿とAIは使いよう

AIが長足の進歩を遂げて社会システムの中に入り込んできた。最近ではGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想と言って、全国の児童生徒に1人1台ずつ学習用端末を与え、高速大容量の通信ネットワークを整備する政策が進んでいる。デジタル教科書を正式な教科書とする法案は2026年6月に国会で成立した。これにより、数学リテラシー、科学リテラシー、読解力などのスキルを上昇させようとの思惑のようだが、果たしてうまくいくのだろうか。

デジタル教育先進国のノルウェーでは2010年代の半ばからデジタル端末を使った授業が急増した。デジタル画面を使った授業を週4時間以上受ける小学校7年生(日本の小学校6年生に当たる)は、13年の14.5%から19年には46.4%に増えた。もちろん学力向上を狙っての事だろうが、案に反してデジタル化と呼応して学力は下がってきたのである。

OECD(経済協力開発機構)のPISA(国際学力到達度調査:15歳を対象に行われる)では、ノルウェーは18年から22年にかけて、数学リテラシーは501点から468点と33ポイント下がり、科学リテラシーは490から478と12ポイント、読解力は505から476と29ポイントそれぞれ下がったのである。PISAの数学の授業に関するアンケートによれば、「デジタル教科書でよく注意散漫になる」と答えた生徒はOECD平均で30.4%、ノルウェーで31.2%であったという。

事態を重く見たノルウェー政府は「我々はデジタル化による学習成果や意欲の低下、いじめや不登校の増加を目の当たりにしている」(ノルトゥン教育相)と危機感を露わにし、ストーレ首相は「生成AIは小学校では原則使えないようにする」と表明し、過度なデジタル化の修正に向け、小学1年~4年ではデジタル機器の利用を特に慎重にして、「紙の教科書をより優先すべきだ」と自治体に要請したとのことだ。

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生成AIは、反省的思考を身に付けている人にとっては、真に便利な道具であるが、AIの答えを鵜呑みにする人にとっては、能力を減衰させる道具である。例えば将棋のプロはほとんどの人がAIを使って研究しているが、それはAIの出す答えを吟味して、自分なりに納得して自家薬籠中のものにしているからであって、毎日AI相手に将棋を指したからと言って強くなるとは限らない。

将棋の最強AIを隣に置いて、次の一手をAIに聞いてその通りに指せば、たとえプロが相手でも勝つだろう。でもそれは私が考えた手ではないので、そんなことをしても、将棋は強くなれない。児童生徒にAIを与えても、AIの答えを鵜呑みにしている限りは、学力は向上しない。AIを使いこなす将棋のプロと違って、AIの答えを吟味する習慣がない人がAIを使うと、却って思考力は落ちる。小学生に、AIの答えを吟味する反省的思考を期待するのは無理だから、生成AIを使わせれば使わせるほど、思考力や判断力は衰退する。

デジタル教育先進国のノルウェーの首相が、自分たちの失敗を認めて、デジタル教育を推進しようとしている日本に対して、デジタル教育は考え直した方がいいと忠告しているのに、日本側は聞く耳を持たないようである。日本政府は日本の児童生徒を思考力がない大人に育てて、政府に楯突かないように教育したいと考えているに違いない。しかし、イエスマンばかりの組織は企業であれ国家であれ、いずれ衰退することは歴史が証明している。国は滅びに向かって転げ落ちて行っても、権力だけは手放したくないという権力病は死に至る病なのだろうね。

先に将棋の話が出たので、少し寄り道してAI将棋の話をしたい。ゲーム理論にツェルメロの定理というものがあり、有限回の交互手順で進み、過去の手順や現在の局面が開示されている、運の余地が入らないゲーム(完全情報ゲーム)では、先手必勝か後手必勝か引き分けかが、最初から決まっているという。将棋は完全情報ゲームなので、先手必勝かもしくは千日手(同じ手順が無限に繰り返される)か引き分け(持将棋)だろう。AI同士の対局では、先手の勝率が8割を超えているので、恐らく先手が必勝だと思う。しばらく経てば、必勝手順が明らかになるかもしれない。尤も明らかになったところで、プロがおまんまの食い上げになることはない。なぜならば、たとえ必勝手順がAIによって解明されたとしても、その手順は天文学的な数値で、人間が覚えることは不可能だからだ。

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さて生成AIの話に戻るとして、最近は大学のレポートを生成AIに作ってもらってコピペして提出する学生もいるが、完全コピペのレポートはまともな採点者にはばれる確率が高いと思う。AIは過去のデータからごく一般的で常識的な答えを書く確率が高く、余り面白いレポートにはならないことが多いからだ。AIを使うのならば、これを一次ドラフトとして、自分だけしか知らない経験や、常識的な説には反するが、自分なりの意見を盛り込めば、面白いレポートになる。AIを反省的思考の道具として使うのであれば、効率の面から言っても便利な道具となり得る。

今、圧倒的に進歩しているのは自動翻訳で、100以上の言語に対応していて、文章や音声を入力すると指定の言語に迅速に翻訳してくれる。例えば、日本語から英語に翻訳する場合、英語がある程度できれば、出力された文を読んで気に入らなければ、直すことができる。しかし英語に堪能でないと、誤翻訳に気づかない恐れがあるので、重要な書類(例えば契約書)にはまだ使えないだろう。

音声を多言語に翻訳する技術も日進月歩であるが、話者の癖や方言をどこまで拾ってくれるかという課題があって、現状では入力する言語を標準化する必要がある。ただ、関西弁や東北弁に対応可能なAIも開発されているということなので、そのうち学問や趣味は別にして、商売のために外国語を習う必要は薄れてくるかもしれない。

AIで、一番問題になるのは、AIは時に知ったかぶりをすることである。AIは自分が知っている事(データベースに入っている事)に関しては的確な応答をするが、知らないことに関しては適当なお話をでっちあげて、あたかも真実のように答えるのである。これをハルシネーションと呼ぶ。

試しに、googleのAIモードで、「ギガンテア最期の日々」を調べてみた。これは私がかつて「現代思想」に1990年の1年間、「虫の思想誌」と題して12回連載したうちの9番目のエッセイの題である。「虫の思想誌」は1992年に青土社から『昆虫のパンセ』と改題して出版され、更に、1997年に講談社学術文庫の中の1冊として文庫化された際に、表題を連載時の『虫の思想誌』に戻した。ちなみにギガンテアの和名はオニホソコバネカミキリである。さて、AIにはなんて書いてあるかーーー(『池田清彦のやせ我慢日記』2026年07月24日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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