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天安門事件の新たな犠牲者か。消えた中国人インフルエンサーの謎

死者数1万人以上との説もある天安門事件の発生から今年で33年。中国では徹底した情報統制により事件自体が「なかったこと」とされていますが、当局による監視は強まるばかりのようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、天安門事件の前日にあたる今年6月3日に起きた「不可解な事件」を取り上げ、詳細をニュース記事を引きつつ紹介。その上で、この事件からも窺い知ることができる「中国が覇権国家になれない決定的な理由」を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年6月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国・台湾】天安門事件を知らぬ若者のうっかり言動が命取りに

台湾で天安門事件の追悼集会 香港撤去の像再現 「かつての香港」思いはせる

中国政府によって、香港は言論の自由や香港人による自治権が奪われましたが、その結果、毎年行われていた天安門事件の追悼集会ができなくなりました。その代わりに台湾で追悼集会が行われるようになっています。記事を引用しましょう。

中国政府が民主化運動を武力弾圧した天安門事件から33年を迎えた4日夜、台北市内で追悼集会が開かれ、香港で撤去された同事件の犠牲者を悼む像の複製が披露された。集会に参加した香港からの移住者は、台北での集会には天安門事件を追悼できた「かつての香港」を悼む意味もあると語った。

 

香港国家安全維持法(国安法)施行以降、反体制的な言動を取り締まる動きが強まる香港では天安門事件の追悼集会が開催できなくなっている。この日の台北での集会には香港からの移住者も駆け付け、会場では広東語が飛び交い、参加者は「光復香港(香港を取り戻せ)」などと声を上げた。

 

集会で披露されたのは昨年、香港大から撤去された「国恥の柱」の複製。作者であるデンマークの芸術家から許可を得て、3Dプリンターで制作された。主催団体「華人民主書院協会」の曽建元・理事長はこの像について、香港が天安門事件を忘れないという思いを台湾が引き継ぐことの象徴だとしている。

台湾で天安門事件の追悼集会 香港撤去の像再現 「かつての香港」思いはせる

これに対して、蔡英文総統はフェイスブックで「天安門事件の集合的記憶が香港から組織的に消されていると指摘」しました。

1989年6月4日に起こった天安門事件は、専制政治による弾圧の象徴として、主に香港を中心に語り継がれてきましたが、ここ数年はコロナを理由に追悼集会は禁止されていました。7月1日には、行政長官が警察出身で中国寄りの李家超氏に交代する予定となっており、そうなったら追悼集会などもってのほかでしょう。

これを受けて、今年は香港から台湾に移住した人々を中心に、台湾で追悼集会が開かれました。それが冒頭の報道です。台湾は、言論の自由も行動の自由も保障されています。これからは、毎年台湾で追悼集会が開かれることでしょう。

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そんな折、天安門事件をめぐって中国である事件が起きました。超売れっ子のインフルエンサーで、自ら口紅を塗る販売パフォーマンスから「口紅王子」と呼ばれる李佳琦氏が、いつものようにアリババの動画配信サービス「タオバオライブ(淘宝直播)」で、商品を売っていた時のことでした。

彼は、中国全土で6,400万人のフォロワーを誇る超人気インフルエンサーで、中国の若者なら知らない人はいない存在です。その彼が、6月3日、ライブ配信をしながらケーキを販売していました。そのバニラ味のケーキは、戦車の形をしていたのです。

報道によれば、「タイヤはオレオで、大砲はウエハースでできていた」そうです。そのケーキが出てきた際、彼は驚いた表情をしたそうです。そして突然ライブ配信が終了しました。見ていた人々は訳が分からず驚くばかり。その数時間後、李佳琦氏は自身のSNSで2度にわたり、機器の不具合で配信が強制終了してしまったと謝罪しました。

戦車を模したケーキが原因?「口紅王子」ライブ配信が強制終了 中国

しかし、その後に予定されていた中国最大のオンラインショッピングの祭典で予定されていたライブ配信3件ともに中止となり、その後も「タオバオライブ(淘宝直播)」で検索しても出てこないと報道されています。

容易に推測されるのは、天安門事件が起こった6月4日の直前に戦車のケーキを持ち出したことで、当局への抗議の意思表示をしたと取られての配信中止、出演中止、プロフィール削除などの措置を取られたということでしょう。

しかし、中国のネットでも疑問視されているのは、彼がなぜそんな墓穴を掘ってしまったのか。自滅するだけで何のメリットもないことをなぜしたのか、ということです。

報道にもあるように、そもそも李佳琦氏ら中国の若者世代は天安門事件を知りません。学校で教わることもなければ、中国の規制されているネットでは関連動画や写真などは出てもこないのですから、知りようがありません。そのため、用心のしようもないのです。

そこで、多くの人は、売れっ子の彼を妬んだ周囲の人々による罠だったのではないかと憶測しています。中国では最近売れっ子インフルエンサーが脱税で次々と逮捕され、李さんの一人勝ちといった様子を呈していたようなので、嫉妬される立場だったのは確かでしょう。一部報道では、戦車のケーキを手渡された際、李さんは驚いた表情をしていたともあります。

中国のネットセレブ、戦車形のケーキ見せ配信停止 天安門事件との関連を指摘する声も

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しかし、もしそんなことで李さんが逮捕や拘束されたとしたら、中国の専制ぶりは予想以上に危険な状態です。いくらロシアのことで中国政府が敏感になっているとはいえ、6月3日に単に戦車のケーキを紹介しただけで人気絶頂のインフルエンサーが仕事や財産を全て取り上げられるとしたら、何が地雷になるかわからず、社会の混乱と人民の不満が高まるだけです。

すでに、そのときのライブ配信を見ていたネット民のなかには、自分たちに飛び火が来ることを恐れているようです。天安門事件を知らない若者が、戦車のケーキがなぜダメなのかと質問しても、巻き込まれたくないから教えられないなどの声があるそうです。

新型コロナによる都市封鎖で外出もままならず、フラストレーションが溜まっているのに、事情を知らない者が何の意図もなく行った言動までも取り締まりの対象となるならば、不安で怯えながら毎日を過ごさざるをえません。

中国は、ますます台湾とは対照的な統制国家となりつつあり、まるで監獄の中にいるような不自由さです。誰がこのような国と一緒になりたいと思うでしょうか。中国が覇権国家になれないのは、中国に住みたい、中国人になりたいというような、憧れの対象にならないからです。

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image by: LO Kin-hei / Shutterstock.com

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