経済大国だったはずの日本がなぜ、こんな現状になってしまったのか。日本の凋落ぶりを嘆き、不思議に思う人は多いでしょう。そこで、今回のメルマガ『熱血日記』では外資系金融機関で30年間の勤務経験を持つヒデキさんが、その理由はコンプライアンスにあるとして、持論を展開しています。
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コンプライアンス・バカが増えた民間。法令順守をやり過ぎて人材の小粒化が進行
最近、経済の落ち込みぶりが心配になるくらいのニッポンですが、往年の経済大国ぶりを知る人からは、「なぜこんなていたらくになってしまったのだ?」と、急激な経済の縮小ぶりを不思議がる声が後をたちません。
少子化の進行や輸入インフレばかりメディアに上がりますが、それ以外にも100くらい理由があります。ニッポン経済が復活するための提言です。
「日本は起業率は高いのに、GAFAクラスのグローバル企業が産まれなくなってしまった」と、よく言われます。日本の企業数は約300万社もあり、社長さんの数が大阪市の人口とほぼ一緒、というくらいに社長さんがそこら中にいるほど起業率が高いです。
ところが、従業員数10人未満の中小企業が多く、産業界から世界の基準を握るような革新的企業が産まれてきません。IT時代到来となり、巨大な新興企業が産まれてくるのは米国や中国ばかり。
かたや日本はどうかというと、戦争直後や高度成長期、バブル期に生まれたような創業者人材が起こす大企業が産まれくなりました。
人材育成に問題があるのと、企業社会がコンプライアンス部や法務部の設立と、あまりに法令順守をまじめにやり過ぎて、働く人が委縮してしまったところに大きな原因があります。社内結婚も“社内恋愛禁止”のためにできなくなり、少子化に拍車をかけてしまいました。
自由奔放に社員を伸ばしておけば、革新性や創造性に満ちた社員が、新機軸の製品やサービスを考案してくれるのに、規制遵守ばかり業務の最優先に掲げるようになった2000年頃からダイナミズムが失われるようになりました。
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高度成長期の頃は、“気宇壮大なスケールのバカ”が各産業におり、社会通念をひっくり返すようなビジョンをかかげて、大企業をつくってきました。
浜松の町工場からスーパーカブを世に出して二輪産業からはじめた本田宗一郎は、つぎは自動車だと、自動車製造工場をたちあげると、「日本の自動車会社は2社に集約する政策」を打ち出した経済産業省(旧通産省)に出向き、官僚の前で“ニッポンの自動車産業をつぶす気か!”と怒鳴りこんだそうです。まだ町工場に毛が生えた程度の本田技研工業だったころです。
ソフトバンクを創業した孫正義社長は、アメリカ留学から帰ってくると、福岡市のアパートの一室に、アルバイト社員を集め、「俺たちはいずれ、売上高が1兆円、2兆円と、豆腐をかぞえるようなスケールの会社になるのだ!」と叫び、アタマがおかしいと思われてアルバイト社員が退社してしまいました。
孫社長は、ソフトウェアの卸売会社から、携帯通信会社に脱皮すると、新興企業に回線を回してくれない総務省にしびれをきらし、役所をおとずれると、官僚の前で「イエスといってくれなければ、私はここを動きません。ここで油をかぶって自殺します。」とまで言って、回線認可の許可を取ったそうです。
こうした破天荒な発想をもつ創業経営者が多く生まれ、終戦直後も高度経済成長期も、バブル期も新興企業が急成長していきました。
ところが、官庁が民間に法令順守や過剰な規制を矢継ぎ早にかけていくと、民間も法務部やコンプライアンス部などの非営利部門ばかり拡大し、監督官庁のつくった規制ばかりを守るように社員を“Don’t”(あれをするな、これをするな)でしばりつけます。
社内恋愛くらい、社員のモラルにまかせて、違法行為さえしなければやっても良いと思いますが、そうした個人の行動ですらコンプライアンス部が規則でしばりつけ、あげくの果てに成婚率の減少にむすびついてしまいました。
非営利部門が拡大し、社員の行動に手かせ、足かせがつけられると、自由な発想、大胆な行動で周囲を驚かせる気宇壮大なバカは、息苦しくなり、会社を捨てたり、日本を捨てたりしてカリフォルニア州や、東南アジアのシンガポールや香港、マレーシアなどに移住してしまいます。
おりしもリーマンショックが起こった2008年以降、金融業界では、「日本の金融庁が課す過剰な規制のもとでは業務がやりづらい」と、外資系金融機関はどんどんアジアのヘッドクオーターをシンガポールや香港にうつし、外資金融の業界人口は最盛期の3万8,000人から2万2,000人にまで減ってしまいました。
民間のダイナミズムを活かすには、非営利部門を肥大化させず、勢いのある社員を自由に動かし、大胆な発想や新機軸の事業アイデア創出に任せるべきではないでしょうか。
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