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6月の熱中症搬送1.5万人超。今夏「命」を奪われるリスクが高まるワケ

最速の梅雨明け後にやってきた連日の猛暑で熱中症による救急搬送が激増。猛暑を一時的に収めた台風4号は長崎に上陸し、日本中のあちこちに局地的な豪雨をもたらしました。“暑さ”だけではなく豪雨に極寒など、極端な気象現象を頻発させるのが「温暖化」と語るのは、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で、気象予報士でもある健康社会学者の河合薫さん。台風が多発した2019年同様、日本の東側の海水温が高いことから、今年の夏も台風や豪雨による災害発生のリスクが高いと注意を促しています。

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“国民の命”を守れているのか?

6月に熱中症で救急搬送された人が、初めて1万人を突破し、過去最多だったことがわかりました。搬送されたのは1万5657人で、死亡が確認されたのは17人。さらに、直近の6月27日〜7月3日まで1週間では、搬送者が1万4353人で、27人が亡くなったそうです。

前号でお伝えしたとおり、今年の夏は酷暑との長い戦いになりそうですので、「私は大丈夫!熱中症にはならない」と過信せず、くれぐれも暑さ対策(気温が低くても湿度が高い場合は要注意!)を怠らないようにしてください。

今回の「裏返しメガネ」も「異常高温」問題で、2週連続となります。今年の暑さは「世界的な異常高温」の流れの一部です。2018年8月、人為的な地球温暖化と自然要因による地球表面温度の上昇の相乗作用により、少なくとも2023年までの5年間は、「異常高温」が世界各地で続くと予測を示した研究論文が、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載されました。

地球の表面温度は、氷河期と現在より気温が高かった温暖期を、10万年ごとに繰り返してきました。人類が繁栄したのは、この気温変動が極めて穏やかになった過去1万1000年の間です。そして、産業革命以降、人は大量の温室効果ガスを大気中に放出。その結果、人為的な気候変動が生じ、今では自然変動を圧倒するのではないか?と危惧されています。

そこで、仏ブレスト大学の気象学者フロリアン・セベレック氏率いる研究チームは、自然要因による地球表面温度の短期的な変動を予測するシステムを開発。その結果、「2018~2022年の5年間は、自然変動が人為的温暖化の影響と同等であること」を発見しました。

つまり、現在進行中の地球の温暖化は、人為的プラス自然変動の両方に起因する「異常な高温期」。気候に大きな影響を及ぼす、海の「温暖化現象」の発生確率は150%も増加すると予測されました。実際、2021年の年平均海面水温(全球平均)の平年差は+0.13℃で、統計を開始した1891年以降では6番目に高く、過去8年間(2014~2021年)の値は、すべて歴代8位以内の値です。

日本で、台風被害が続発した2019年9月の海面水温は、27℃以上の暖かい海域が広範囲に広がっていましたし、今年の6月下旬も本州の東側の海域の水温は平年より2度〜4度暖かくなっています。こういった「海」の状況からも、やはり今年の夏は暑い。加えて、豪雨が頻発する恐れがある。極めて危険な状況といっても過言ではありません。

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昨日(5日朝)、長崎県佐世保市付近に上陸した台風4号の影響で、長崎県や福岡県、熊本県では1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降りましたが、温帯低気圧に変わった後も各地で豪雨を降らせました。これから9月くらいまでは、台風だけでなく、晴れた日の午後に降る、ゲリラ豪雨にも十分な警戒が必要です。

かつて「お天気の世界」に身を置いていたものとして、痛感したのは「地球は生きてる」ってこと。異常な暑さが続くと、その暑さを冷やすために豪雨が降る。酷暑のあとは寒い日が多くなったり、大気のバランスを保とうとするのです。

今年同様、6月に梅雨明けした2018年には、西日本を中心に記録的な大雨となった「平成30年7月豪雨」が発生。河川の氾濫、浸水害、土砂災害等などで、237名が亡くなりました。一方で8月中旬の後半には、非常に強い寒気が流れ込み、東日本や北日本を中心に8月の最低気温を更新しています。

「温暖化」という言葉から「暑い日だけ」をイメージしがちですが、両極端な気象現象が頻発しやすくなる。それは「災害が増える」ことを意味し、酷暑、豪雨、大雪、極寒などで、「命」が奪われるリスクが高まるのです。

問題はそれだけではありません。たとえ命を守ることができても…奪われた“日常”は戻ってきません。熊本県内で、災害関連死を含め67人が犠牲となり、2人の行方がわからなくなった2020年の記録的な豪雨から2年が経ちましたが、今も2600人ほどが仮設住宅などでの生活を続けています。

岸田政権は、感染症、自然災害や安全保障上の緊急事態で、多くの国民の命を救うことをミッションとする「健康危機管理庁(仮称)」創設を検討していると報道されました。しかし、参院選選挙を週末に控えているのに、その“中身”の構想は聞こえてきません。SDGsへの関心もかなり低いです。

と、温暖化の話から政治の話になってしまいましたが、もっと「私」たち自身も温暖化・異常気象に敏感になる必要があるのではないでしょうか。ただでさえ日本列島は「自然災害」が多い国。急峻な地形で、河川の流れが短く急流であるため、豪雨が起こりやすいのです。

「国民の命を守る」とは、何なのか?みなさまのご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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