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費用も全額「国が負担」。安倍元首相を国葬で弔うことは妥当なのか?

調査によっては7割以上の反対の声が上がっている、安倍元首相の国葬。それでも岸田政権は「強行」を閣議決定しましたが、この選択を識者はどう見るのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、安倍氏を国葬で送ることを「間違ったやり方」としてそう判断せざるを得ない理由を解説。さらに国葬までの数週間に政界で起こる変化について考察しています。

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安倍氏の「国葬」と統一教会「政治の力」と:「デモくらジオ」(7月22日)から

冒頭に申し上げたいのは、国葬に関する話です。もう、どんな理由か分かりませんが、それほどたくさんは報じられていないですね、既に。ワイドショーみたいな番組で、最近はパネルというんですかね、言うことが全部最初から決まっているという感じで次から次へと進んでいく。呼ばれたゲストは自由に話をしたりしているのですが、なんとなくですが、「国葬問題」を報じるときのスタジオの中がいつもより緊張しているなと感じたのは、もしかしたら私だけではないのではないかと思います。

昨日の「東京新聞デモクラTVエクストラ」でもこの件について申しましたが、あれはテレビ朝日のモーニングショーという番組で、昨日はあまり正確でないお伝えの仕方をしてしまったので、少し言い直しますけれど、…というのはもうちょっと説明しなければなりませんね。

亡くなった安倍さんと旧統一教会の関係はどうなのかということがこれから焦点になるわけですね。じゃ、統一教会が日本の政治家にどんな働き方をしていったのかという観点、あるいは統一教会のそもそもの成り立ちと、安倍さんのお祖父さん、岸信介さんの関わりはどうだったのかなど、色々な論点がありますが、これあの、霊感商法で膨大な被害を生み出した旧統一教会。その後、学生の世界では原理研があったり、イデオロギー的なところでは勝共連合というものがあったり、でも、どれも実態はそう変わらない、根は一つというか、同じ組織が色々な顔を持って運動しているというふうにしか、私には感じられません。

統一教会が色々な問題を起こして、特に献金と霊感商法、お金の問題を起こしたときに、統一教会は宗教法人ですよね、今に至るまで宗教法人。名前は変えていますが。で、これ、月曜日だったかな、その番組で、「宗教法人で居続けられたのはどうしてなのか」という質問を玉川徹さんがしたんですね。そりゃそうですよ。私も不思議に思っていました。宗教法人って、そんなに守られているのか。いや、結構「守られているなあ」(笑)という法人もありますけれど、例えばオウム真理教に関しては宗教法人格を剥奪されていますが、統一教会はそういうことはなかった。その質問をしたら、有田芳生さん。落選されましたが、統一教会に関して取材する側の第一人者は誰かと言えば、それは間違いなく有田さんなので、その有田さんがこんな説明をしてくれました。私は本当に吃驚したのですが。

有田さんはオウムについても熱心な取材者の一人だったわけですが、オウムに関してのレクチャーをしてくれと警察庁、警視庁の幹部から言われたと。で、3月にサリン事件があった年の秋ぐらいに麹町のある建物でって、多分麹町署ではないかと思うのですが、麹町のある建物の中で20~30人の人たちにレクチャーをした。そのときに、一つだけ言われたのは、どういう人たちが来ているかについては聞かないでくれと言われたそうなのです。どういう人間か分からないけれど、20~30人の大人が集まっている。そこに有田さんがオウムについてレクチャーをした。有田さんは目つきの鋭い人たちという言い方をしていましたけれど、間違いなく、全国の公安警察担当者、宗教団体を担当する公安だと思いますが。それは私の勝手な解釈ですが。レクチャーの後に目的を聞いたら、「オウムの次は統一教会を摘発する」と警察側が言った。ところがその後、音沙汰がない。10年ぐらい後に、今だから言えることはあるのかと尋ねたら、統一教会の摘発がされなかったのは「政治の力だった」と一言。圧力、つまり警察は摘発しようとしていたが、政治の力で抑えられたということ。

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つい最近もありましたよね。政治の力…かどうか分からないのですが、伊藤詩織さんの性被害の件、逮捕状まで出ていたのに、警察の幹部、現在の警察庁長官である中村格さんが押さえた。

で、結局、その後30年間統一教会についてはメディアもほぼ一切取り上げないし、国会でも大きな問題にならずにずっときている。私は吃驚したのですが、スタジオにいた若い女性アナウンサーは、統一教会については今回初めて知ったということなのです。メディアにいる人でも統一教会のことを知らない。桜田淳子さんの話とか、新体操の方とか、テレビのタレントの方とか。有名人も色々と統一教会かその系列の組織に取り込まれていくストーリーがいっぱいありました。それを知らなかったらしいのですね。そんな形の中で、今度の安倍さんを殺害した容疑者がなぜ安倍氏のところに矛先を向けたのかという問いに対する答えの一端ではありますよね。つまり、今言ったことだけでは何の証明にもなりませんが、政治と統一教会との関わり、日本の政治家と統一教会との関わりというのは極めて深いものがありそうですし、それはずっと続いていたということでもあろうかと思います。

で、安倍さんが亡くなって、ではどうやって弔うのかということは非常に重要な問題だと思います。前々回くらいにも申しましたが、安倍さんは色々な問題を引きずってあの世に行ってしまわれたわけですよね。モリ・カケ・サクラはもちろん、経済政策であるアベノミクスの是非、安保法制、特定秘密保護法、共謀罪、その他その他山のようにありますよ。こういうことは海外の首脳がこぞって弔意を表明してくれたとしても、日本国民としてはそれがどういう意味を持つのか分からないこともたくさんありますね。

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評価が定まるのはずっと後の話だと思うのですが、にもかかわらず、現在の政府が国葬、つまり国を挙げて弔うということですよね。いや、今回は前回の吉田茂さんの時のように学校を午前中で終わりにしたり、役所を休みにしたりなど、そういうことはしませんと。弔意を強制するようなことはしませんと、言っていますが、それでも国葬の名で、全額国の負担でやるわけですね。これはね、やるべきではないですよ。あの、例えば政治家が亡くなったときに、家族や一族郎党、同じ政党の同志、同じ考えの人たちが弔うのは当然でしょう。一般的に人が亡くなれば、それはお気の毒にということはあるでしょう。しかし、国葬にしてしまうのは間違ったやり方だと私は思います。ただ、これに関しては閣議で決定してやってしまうのでしょうね。

以前、靖国の問題を取材したことがありましたが、それに近いものを感じます。あの、靖国にまつられている「英霊」とされる人たち。これは日本軍の兵士で、赤紙一つでひっぱられた人たちもいるわけですが、戦死したり病死、餓死したりした人たちです。この人たちに対して、日本の国のためによく頑張ってくれたという評価を国が行う、褒め称えるのは間違っていると私は思います。まあ、安倍さんは赤紙を渡す方の人ですけれど。そんなことを考えますね。

それからもう一つあるのは、葬儀というものに対する考え方はこの間大きく変わってきている。例えばお寺さんにお墓がある方も大勢いらっしゃるでしょう。何々家代々の墓とあり、裏側に何年何月何日に誰某が亡くなったと記述があり、そこにお骨が納められているという形。よく考えてみると、代々と言ってもそれほど遡れないんですよね。その問題も一つあり、あるいは遺骨に対する考え方も大きく変わってきていて、その実例にするのは恐縮ですが、私も親の遺骨については父も母も海に散骨しました。そうしたことも広がっていますし、そもそも有名人が亡くなっても、「葬儀は済ませました」という記事が多くないですか。お金をかけて、皆さんの時間をいただき、大きな葬儀場に人を集め、何百人何千人を集め、葬儀委員長がいて葬儀を行うことを嫌う傾向もある。そのときに、国葬というのは、時代遅れな感じがしてきます。

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全然関係ないですが、1967年10月31日の吉田茂さんの国葬については私は覚えていまして、当時小学校の6年生でした。号外か新聞の一面だったか忘れましたが、亡くなったのは10月20日。そのときに、それまではろくに見たこともなかった吉田さんの顔が写真で大きく載った、新聞に。そのイメージが強すぎて、私ははなぜか学校の図工の授業で、粘土で何かを作る課題の時、吉田茂さんの顔を作ろうとして、実際に作りました。一生懸命に頭に思い浮かべながら作っていたときに、気がついたら自分のおばあちゃんの顔になっていたんですよ。別に吉田さんが嫌いだったわけではないですよ、当時。おばあちゃんはまだ生きていたのですが、気がついたら「なんか、ばあちゃんの顔に似てきたな」というふうに当時6年2組の私は感じました。

そして今、その粘土の像は書斎の棚に飾ってあるのですが、そういうことでしたね。国葬については当時から議論があった。吉田さんの場合、亡くなったのが10月20日で国葬が31日。病気でしたから、危篤状態からどのくらいだったかは今となっては分からないのですが、ある種の準備があってわずか11日後に国葬が実現したのかもしれません。今度の場合は亡くなったのが7月8日、国葬は9月27日、2ヶ月と19日後ということになる。ざっと7週間も間が開く。亡くなり方が違うので比較は同じようには出来ませんが、かなり後に設定された国葬、という感じがします。海外から参加する国家元首がおられるかもしれないとか、新型コロナのこともあるでしょう。そう簡単にはできない、準備が必要ということはあるでしょうが。

それにしても、9月27日までに何があるかを考えれば、政治が非常に大きく動く数週間になる。というのは、安倍派のトップがいなくなったわけですよね。すると、100人からの議員が今も自分たちは安倍派の一員と言っていますが、そのうち、言っていられなくなる。どこかに中心を求めて求心力を求めて動いていく人たちがいる。そこに政権を持っている岸田さんが関心を持たないわけがないじゃないですか。党内の力関係で岸田派が第4派閥に過ぎない。どう考えるか。とても興味深いことに、これから内閣の改造がある、これを利用しつつ党内の力関係が9月27日までに色々動いて、ある形になっていくのだと思います。その形かこの先の政治の動き、とくに国会の動きとして大きな意味を持ってくるのではないかというふうに思っております。

ちょっと気に入らないのは、メディアでは、国葬にすることについて大方の日本人が賛成してるような言い方をした後で、「一部野党の反対がある」という言い方をするんだね。あれ変だよね。一部野党、もう判で押したように司会者などがそんなことを言う。テレビ朝日の玉川徹はさすがに偉くって、司会者が「一部」と言ったのを、「今、一部という発言があったけど、38%の人が反対しているのを『一部』とは言えないのではないか」というふうに言っていました。そういうところで」微妙なところで意識のコントロールをしようという意図も見えてくるので、こういうのは気をつけなければならないなと思います。

(『uttiiジャーナル』2022年7月24日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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