20世紀を代表するロックバンド、ザ・ビートルズが初めて作ったものは多々あることはご存じだと思いますが、その中でも特筆すべきものは「音楽ビジネス」の原型だということを知っていましたか? 元国税調査官の大村大次郎さんが、お金の流れからビートルズの成功を読み解いた一冊をメルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』の中で紹介しています。
【一日一冊】お金の流れで読み解くビートルズの栄光と挫折
大村大次郎 著/秀和システム
ビートルズが現代の音楽ビジネスの常識である、ファンクラブやミュージック・ビデオなどをはじめたと聞いて手にした一冊です。
1960年代の音楽業界ではロックバンドの成功例はほとんどなく、ソロ歌手として売り出すのが常識でした。しかし、ビートルズは4人組のバンドとして売り出されたのです。
これはビートルズのマネジャーとなったブライアン・エプスタインに先見の明があったということなのでしょう。無名のバンドと契約し、レコード会社に売り込みをかけてくれたのです。
メジャーデビューにあたり、それまでリーゼントの不良ロックバンドだったビートルズを、マッシュルームカットの礼儀正しいアイドルバンドに生まれ変わらせたのもエプスタインと言われているのです。
ビートルズがはじめておこなったもの…ミュージック・ビデオ、ファンクラブ、世界ツアー(p61)
また、エプスタインがレコード店のオーナーであったことも影響したと思われますが、ビートルズはアルバムの売上を柱としたビジネスモデルを展開します。
このレコード中心戦略は、作詞・作曲も行っているビートルズの印税収入が、作詞作曲しないミュージシャンの3倍であったことも有利に働きます。
ビートルズはライブでの演奏料を格安にして露出を増やしました。また、お金を出してテレビ番組に出演することまでしており、「レコードを売ること」を最終目標に販促活動を行っていたのです。
さらに、それまでのミュージシャンシングル曲を中心に売り、シングル曲が下火になったころに曲を寄せ集めてアルバムにして売るというのが常識の中で、ビートルズはシングル曲を入れないアルバムを売ることまで挑戦したのです。
レコード売上を収益の柱にするビジネスモデル…当時、ミュージシャンの多くは…ライブでの演奏料を主な収入源としていた(p130)
ビートルズは音楽の天才でしたが、税金や著作権については素人であり、お金が原因で8年間で解散してしまったのは残念に思いました。
お金とは評価や価値を定量化できる便利な道具ですが、お金に支配されるようになると、本業に悪影響を与えることもあるのです。お金とは、切れ味のよいナイフのようなものであり、お金を扱う担当者を厳選しないと痛い目に会うのです。
ビートルズのデビューの背景や、当時のリバプールの音楽が「マージー・ビート」と呼ばれたこと。リバプールにマージーという川が流れていたことなどはじめて知り、楽しく読めました。
大村さん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★★☆(87点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(素晴らしい本です)
★★★☆☆(読むべき一冊です)
★★☆☆☆(余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては)
☆☆☆☆☆(こういう本は掲載しません)
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