黒田東彦総裁は幾度となく否定してきたものの、ついに昨年末、実質的な利上げに踏み切った日銀。その突然の転換が世界に与えた衝撃は、我々日本人が思った以上に大きいものだったようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、米有力紙の記事を翻訳する形でその理由を解説。さらにこの利上げが、市場の暴落や恐慌を引き起こす可能性もあるとの見方を記しています。
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NYタイムズが語る「世界が依存してきた日本」
昨年12月20日、日銀が長期国債金利の変動幅を±0.25%から±0.5%に拡大すると発表しました。
地味な話ですが、これまで黒田総裁は「利上げは考えない」と発言されていたので市場関係者にとって驚きでした。
しかし、それは世界中の人々に大きな影響を与えかねないものです。
1月3日のニューヨークタイムズ紙オンライン版が記事にしていますので抜粋紹介しましょう。
「日本の急転換が世界に衝撃を与えた理由:世界は日本の超低金利に依存してきた。もし金利が上がったらどうなるのか?」
日本は世界最大の債権国である。2021年末時点で約3兆2,000億ドルの対外資産を保有し、第2位のドイツを30%上回っている。
10月時点で米国債を1兆ドル以上保有し、中国よりも多い。
日本の銀行は世界最大の国境を越えた貸し手であり、他国への債権は4兆8,000億ドル近くある。
先月末、日本の中央銀行が突然、債券購入のスタンスを調整すると発表したことで、世界は日本が世界経済にとっていかに不可欠な存在であるかを思い知らされることになった。
金融政策の複雑さを知らない人にとっては、日本の10年債利回りの上限を引き上げるという決定の意味は、すぐには理解できなかったかもしれない。
しかし、金融業界にとっては、世界の信用市場をさらに圧迫する可能性があるとの予想を抱かせるものだった。
解説
インフレに苦しんでいる世界、その中で日本だけは異質でした。低金利で大量の資金を供給してくれたのです。
その日本が方向転換しそうだという可能性が世界に衝撃を与えているのです。
私はEconomist Intelligence Corporate Networkという英誌エコノミストの主催する勉強会に属しています。
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会員メンバーは大企業や金融機関などのトップが多いのですが、彼らが心配しているのは、どこに自分の資産を保全したらよいのか?という事です。
これは現在の世界中のお金持ちの心配です。
インフレ懸念で通貨に信用がおけなくなっています。株式や土地もどこの国のものが安心なのか分からない。どうすればよいのだ?と心配しているのです。
不安が高いとき市場は過剰に反応することがあります。
ちょっとした予想外の情報が引き金となって市場が暴落から恐慌に発展するような事がありえるのです。
日本の金融政策の変更もそういった暴落・恐慌の引き金(トリガー)を引く可能性は十分にあります。
記事は以下のような人の言葉も紹介しています。
S&Pグローバル社の元チーフエコノミスト、ポール・シアード氏は、「誰も、おそらく黒田氏でさえも、日本銀行が次に何をするのか分からない」と語った。
外交問題評議会の研究員であるブラッド・セッツァーは「可能性は低いが日銀の急激な反転は世界に予想を超えた衝撃を与えるだろう」と言う。
世界から「資金を供給してくれる大国」と思われていた日本。
その日本が変わりそうだ、という関心と不安は我々、日本人が思う以上に高いのです。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』1月8日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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