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伝わらない本気度。結局、やってます感で終わりそうな「こども家庭庁」

4月3日、鳴り物入りで開庁したこども家庭庁。「こどもまんなか社会」の実現を大きな目標に据えていますが、デジタル庁以来の新省庁はその役割を果たすことが出来るのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、発足式を見て嫌な予感を抱いてしまった理由を解説。これまでの政府の取り組み同様「やってます感」だけで終わってしまう可能性を危惧しています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「やってます感」だけで終わらせないで!

子ども政策の司令塔である「こども家庭庁」の業務が、本格的にスタートしました。HPのトップには次のように書かれています。

こどもがまんなかの社会を実現するために
こどもの視点に立って意見を聴き
こどもにとっていちばんの利益を考え
こどもと家庭の、福祉や健康の向上を支援し
こどもの権利を守るための
こども政策に強力なリーダーシップをもって取り組みます。

3日の発足式には、岸田文雄首相や小倉将信こども政策担当相らの他、子どもや若者6人が参加。最大の“ウリ”は「こどもの意見を政策に反映させること」。

2021年10月~11月に、約60名のこども・若者たちから意見を聞き、政府に取り組んで欲しいことや、どのような仕組みなら意見がいいやすいのか?などのアイデアをもらったそうです。

現在、こども家庭庁のスタッフは430名。妊娠期からの子育て支援のほか、虐待やいじめ、貧困などの課題にも子どもの目線を重視して対応し、全省庁に対して「勧告権」を持ちこども政策について対応が不十分な場合には必要な対応を求める「勧告」もできます。

当事者であるこどもが、「意見が言える」のはとても大切だし、政策実現に関わった経験が、政治への関わりや、「1票」の大切さの理解につながればいいなぁと心から思います。

しかしながら、これまでも散々問題視されてきた幼保一元化は見送られましたし、政府が本気で「こどもまんなか政策」を目指すなら、庁ではなく省にすればよかったと思います。

それに今回の発足式を見ていて、なんかデジャブ感がありありで。「いつか来た道」になりそうな予感…がよぎりました。

安倍政権時代に、「ほにゃらら推進室」と書かれた縦書きを看板を、「ほにゃらら担当大臣」が安倍首相(当時)と掲げていた“あの頃”。すっかり忘れてしまった方もいるかもしれませんが、「一億総活躍推進室」「働き方改革実現推進室」「人生百年時代構想推進室」「統計改革推進室」などなど、スローガンばかりが先行し残念ながら“すべて”キャンペーンで終わりました。

「骨太の方針」だの「3本の矢」だのなんだのというのがありましたが、どれもこれも中途半端なままで立ち消えになり、“すべて”問題の解決には至っていません。

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今回の「こども家庭庁」の当面の課題は、「次元の異なる少子化対策」の具体化と実現なのに、肝心の財源はいまだに示されてない。報道によれば6月の「骨太の方針」の策定までには予算規模も含めた財源を明らかにするとのことですが、私たちが納得できるものになるのか?あるいは単なる選挙対策で終わるのか。まったくもって「本気度」が伝わらないのです。

そもそも「こどもの意見を政策に反映させる」としていますが、声にならない声の中にこそ、解決すべき問題は存在します。その汗をかく覚悟が政治家や閣僚にあるのか?「こどもの意見」を大切にすることと、大人が「自分の頭できちんと考える」ことは別物です。

こどもの権利にプライリティを置くなら、「家族とは何か?」という根本的な問題にも踏み込んだ議論が必要不可欠ですし、同性婚や夫婦別姓問題の議論と法律の改訂や制定も必要でしょう。

また、子どもの貧困問題や子どもや若者の自殺対策も、家族・夫婦・非正規雇用のあり方、女性の低賃金問題など「大人問題」の細部にわたって言及する必要もあります。

「子どもの意見を聞く」という耳触りのいい言葉ばかりが先行し、これまでと同様に単なるスローガンで、「やってます!感」だけで終わるような気がしてなりません。

大人が「当事者」にならない限り、こども問題は解決しない。そのことを大人たちはわかっているのでしょうか。

みなさんはこの問題、どう考えますか?ご意見お聞かせください。

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image by: 首相官邸

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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