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発射自体をなかったことに。なぜマスゴミは「ロケット落下」を隠蔽するのか

3月7日、種子島宇宙センターから発射されたH3ロケット1号機がフィリピン沖に落下しました。今回の発射は過去の失敗の再挑戦だったこともあり、「日本の宇宙開発政策」に厳しい課題があると言わざるを得ません。メルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』の著者でジャーナリストの伊東森さんは、なぜ日本のロケットは落下するのか? そして、落ちたことを隠蔽するマスコミに対して苦言を呈します。

なぜ日本の国産ロケットは堕ちるのか? “空”だけ見続け“足元”の現実、直視できず ロケット“敗戦” マスゴミも真実隠す

JAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱重工業は、3月7日午前10時37分ごろ、日本の新型主力機であるH3ロケット1号機を、種子島宇宙センター(鹿児島県)より発射した。

しかし離陸後、2段目のエンジンが点火せず、約14分後に信号を出し機体を破壊、結果、地球観測衛星だいち3号の打ち上げは失敗した。1号機は、衛星ごとフィリピンの東方沖に落下したとみられる。

JAXAは記者会見で、1号機の発射トラブルが連続したことについて、

「見直すべきことがあったと言わざるを得ない」(*1)

とした。

山川宏理事長は謝罪しうえで、

「原因を究明し、早期に信頼を回復していくことが最優先の課題。それに専念してきたい」(*2)

と語る。開発担当の岡田匡史プリジェクトマネージャーは、

「対策をどうするかも含めると時間は読めない」(*3)

とし、失敗の原因究明から対策までの期間の見通しは立たないとした。

今回の発射は、2月17日に機器の誤作動で中断した発射のやり直しだった。しかし、昨年の10月にも、小型固体燃料ロケットにイプシロン6号機が指令破壊され、失敗したばかり。日本の宇宙戦略の見直しは避けられない。

目次
・再挑戦急ぎ 最悪の結果 「迅速だ」との見方も
・“空”だけ見続け“足元”の現実、直視できず
・ロケット“敗戦” マスゴミも真実隠す

再挑戦急ぎ 最悪の結果 「迅速だ」との見方も

2月の発射中断から2週間あまりでの再挑戦となった日本初の新型主力機H3ロケット1号機は、しかし機体の指令破壊という最悪の結果に。

問題となったのは、最も懸念されていた主エンジンではなく、2段目エンジンのトラブル。

「まだ見当もつかない」(*4)

失敗を受け開かれた7日午後のオンライン記者会見で、2段目エンジンが点火しなかった原因を聞かれたJAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャーは、こう答える。

本来、最も懸念されていたのは1段目の主エンジン。H3の開発で最も難航を極め、独自構造を採用した。シンプルな構造にすることで部品を少なくしコストの削減につながった一方、大きな推進力を生み出すのが難しく、計画が2年遅れる要因となった 。

しかし実際には、2段目のエンジンが点火せず、指令破壊となった。

一方、政府内には、

「迅速だったのでは」(政府関係者) (*5)

との見方もある。

海外では1号機は失敗のリスクがあるためダミーを載せることもあるが、今回は地球観測衛星「だいち3号」を搭載したからだ。

 

 

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“空”だけ見続け“足元”の現実、直視できず 

そもそも、日本の宇宙開発政策が、“はなから”世界と対等に渡り合えるはずはないことは分かりきっている。

事実、宇宙政策に詳しい鈴木一人・東京大学教授(国際政治経済学)は朝日新聞の取材に対し、

「徹底的に原因究明して、長い時間をかけてでも徐々に打ち上げて、信頼を回復していくしかない。一方で、日本のロケット技術をこれ以上高めることが本当に必要なのかという問いも必要だと思う」(*6)

と指摘する。

世界的に見てもロケットビジネスの分野は起業家のイーロン・マスク氏が率いる米スペースXが抜きんでた技術力を持っている。再利用可能なロケット「ファルコン9」は1回の費用を5,000万ドル(約65億円)程度に抑え、これまでの打ち上げ実績は200回を超えた。

予算面でも、H3と同じころに開発が始まったヨーロッパ各国による新型ロケット「アリアン6」の開発費用は、35億ユーロ(約5,000億円)と日本の倍以上。

アメリカは、1960年代から航空宇宙分野での優位性を保つためにさまざまな手段を用い、他国へ政策的圧力をかけてきた(*7) 。

結果、1960年代から国策として育成してきた日本の衛星産業・ロケット技術は大きな打撃を受けた。

ロケット“敗戦” マスゴミも真実隠す

今回の失敗でしかし一番腹立たしいのはマスゴミの報道だ。

7日夜のNHKのニュースは「成功していた」らトップであろう話題を2番手とし、その日のトップにまだ開幕してもないWBCの話題を5分以上にもわたり流し続けたけた。まるでロケットの発射自体、「なかった」かのよう。

2月にH3を発射できなかったとき、JAXAは記者会見で「中止」と表現。通信社の記者が、「中止ではなく失敗では」と追及、さらに「一般に言えば失敗」と捨てぜりふのようにいった記者にインターネット上で批判が殺到した。

しかし経済ジャーナリストで千葉商科大の磯山友幸教授は、東京新聞の取材に対し、

JAXAが中止という言葉にこだわったこと自体に違和感があった。想定内ではないことが起きたら、失敗と言われても仕方がない。戦時中に日本軍が撤退ではなく転進と言い張ったことを思い起こさせる」(*8)

とする。

太平洋戦争の“敗戦”もメディアが真実を伝えず、一般市民が戦争を煽った。それと同じことが宇宙開発の分野でも起きているようだ。

■引用・参考文献

(*1)西日本新聞「H3打ち上げ失敗」2023年3月8日付朝刊 1項

(*2)西日本新聞 2023年3月8日 1項

(*3)西日本新聞 2023年3月8日 1項

(*4)西日本新聞「実績の2段目「まさか」 2023年3月8日付朝刊 3項

(*5)西日本新聞 2023年3月8日付朝刊、3項

(*6)嘉幡久敏・竹石涼子・矢田文「第2段着火せず破壊」朝日新聞 2023年3月8日付朝刊 3項

(*7)松浦晋也「国産ロケットがなぜ堕ちるのか」日経BP社 2004年

(*8)宮畑譲・岸本拓也「こちら特報部」東京新聞 2023年3月9日付朝刊 22項

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2023年4月9日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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