就業時間中の喫煙、あなたの会社ではどのように扱っていますか?今回、無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんは、喫煙率が低下している現代に即した規則にしたほうがよいとしています。
就業時間中の喫煙
今日は、就業時間中の喫煙について考えていきます。
オフィス内での喫煙は、健康増進法によって原則禁止されていますから、就業時間中に喫煙しようとすれば、仕事を離れることになります。仕事を行っていない時間については、賃金を支払う必要はありません。これを、ノーワーク・ノーペイといいます。
労働基準法の原則は、賃金は働いた時間に対して支払います。月給制であっても、この原則は変わりません。そのため、残業代は1分単位で支払わなければならないとされています。そうであれば、働いていない時間については、1分単位で賃金控除ができることになります。
ただ、実務的には、労働者一人ひとりの喫煙時間を計測し、その分の賃金を控除するとなると、大変な労力が掛かります。それもあって、今までは、就業時間中の喫煙であっても、賃金控除を行っていなかったという会社も多いのではないでしょうか。
しかし、喫煙率が低下している昨今、多数を占めるようになったタバコを吸わない労働者からみれば、喫煙者の行動はサボり以外の何ものでもなく、喫煙者への優遇、タバコを吸わない者への差別と映るでしょう。これは、何とかしなければなりません。
就業時間中の喫煙を一律禁止するか、喫煙時間分の賃金を控除するといった対応が考えられます。
就業時間中の喫煙を一律禁止した場合、それが労働条件の不利益変更に該当するのではないかといった懸念が生じます。労働条件の不利益変更については、その変更に合理性がなければ、民事的には変更が無効になります。
ただ、就業時間中の喫煙は、職務専念義務に反しますし、今の喫煙を取り巻く社会情勢から考えても、就業時間中の喫煙を一律禁止にすることには合理性があると考えます。
もちろん、休憩時間中やプライベートな時間での喫煙を禁止することはできません。
では、就業時間中の喫煙について賃金控除を行う場合はどうでしょう。
喫煙によって業務から離れている時間について、その時間分の賃金を控除するのは問題ありません。しかし、喫煙の合計時間が10分であったにもかかわらず、15分の賃金を控除するといった扱いはできません。これでは、5分ぶんの賃金未払いが生じます。逆に、喫煙時間が15分であったにもかかわらず、10分の賃金しか控除しないのであれば、それは問題ありません。
実務上は、それぞれの労働者の喫煙時間をいちいち計っていられないでしょうから、一律の時間分を喫煙時間とし、その分の賃金控除を行うといった扱いをしている会社が多いのではないかと思います。その場合には、実際の喫煙時間を超えないような時間に定めなければ、賃金未払いの問題が生じ得ますので注意が必要です。
また、喫煙時間にこのような扱いを始めると、労働者からは、「たとえ1分でも、残業した分の残業代をきちんと支払え」といったような声が上がることがあります。先にも述べたように、賃金は、労働時間1分単位で支払うことが原則ですから、この労働者が言っていることは尤もなのですが、あまり厳密にやりすぎると、職場がギスギスすることもあります。そのあたりの取扱いが非常に難しいですね。
個人的には、就業時間中の喫煙は禁止する扱いの方がおさまりが良いと思っています。
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