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中居正広の“中絶強制スキャンダル”も徹底追及した今は無き気骨の雑誌『噂の眞相』とは?

先日掲載の「全メディアが沈黙。ジャニー喜多川『性加害』問題を報じぬニッポンの異常」でもお伝えした通り、日本を代表するエンタテインメント企業を巡る犯罪的行為を黙殺する国内メディア。何が彼らに真実を報道することを躊躇させるのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』ではジャーナリストの伊東森さんが、その原因を考察。さらに日本のメディアとしては唯一ジャニーズの醜聞を徹底追及していた、伝説的な月刊総合誌を紹介しています。

【関連】全メディアが沈黙。ジャニー喜多川「性加害」問題を報じぬニッポンの異常

徹底追及「ジャニーズ・タブー」。2000年、中居正広妊娠中絶強制スキャンダルを唯一報じた雑誌『噂の眞相』とは?

電通、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)につづき、また日本のタブーを構成するものが露わとなった。

4月12日には、元ジャニーズJr.の岡本カウアンさんが東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、自身への被害の実態を克明に公表する。

とくに岡本さんが会見で語った内容は衝撃的だった。

喜多川氏による性加害については、20年以上も前から『週刊文春』が報道していたのにも関わらず、あるいは被害者やその保護者から裁判も起こされていたのにも関わらず、大手の新聞やテレビ局はことごとく“黙殺”。

そのために、岡本さんは問題を事務所に入るまで知らなかったという(*1)。

ジャーナリストの片岡亮氏は、このような逸話を語る。

「2006年、ある情報番組の出演で、一般ニュースにコメントする仕事の際、制作サイドから『これらを口にするときは内容に気をつけてほしい』と渡されたリストがあった。そこには広告代理店の電通、創価学会、朝鮮総連、ディズニー、ジャニーズ、食品環境ホルモン、コンビニ弁当など、多数のワードが並び、そこに統一教会もあった」(*2)

目次

2000年、中居正広妊娠中絶強制スキャンダル

筆者自身が“ジャニーズ・タブー”を思い知ったのは、2000年のとき。月刊誌『噂の眞相』(2004年休刊)が、2000年12月号で、

「国民的アイドルSMAPリーダー中居正広を襲った妊娠中絶劇の顛末独占衝撃告白」

という記事を掲載した。

記事によると、中居正広と女性は1996年から付き合うように。

一時別れていたものの、2000年になりまた中居の方から連絡が来るようになり関係が復活。それからしばらくして女性の妊娠が発覚。女性は中居に「できればうみたい」と妊娠を告げたものの、中居は、

「もしうんだら事務所に切られてしまう」

と拒否。そして中居は

「大丈夫だよ、まだただの細胞だし、手術だって簡単でたいしたことはない。俺の友達も何人も下ろしているけど、その日のうちに仕事だってできちゃうくらいだし」

と中絶を迫った(*3)。

しかも、告白した女性は中居に中絶同意書にサインをされており、『噂の眞相』は同号のグラビアで、その中絶同意書も公開した。

また女性は、中絶後、中居に電話をかけ、その内容をテープに録音。その音声を噂の眞相はそのままインターネット上で公開した。それにもかかわらず、このスキャンダルは一般に知られることはなかった。

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「噂の眞相」とはどのような雑誌か?

中居正広の中絶強制スキャンダルを唯一報道した『噂の真相』とはどのような雑誌だったのだろうか。『噂の眞相』は、岡留安則氏(2019年1月31日死去)により、1973年に創刊。

月刊誌の総合雑誌部数では、『文藝春秋』につぐ規模を誇っていた。誌面の内容は、皇室、政治経済、あらゆる芸能スキャンダルまで、

「タブーなき雑誌」

を標榜。古くからジャニー喜多川氏に性加害問題を取り上げていた。

1999年に5月号は、東京高等検察庁検事長・則定衛のスキャンダルを報道、朝日新聞が後追いで1面トップで掲載し、則定は結局、辞職に追い込まれる。

2000年には、6月号で森喜朗氏の東京都売春禁止条例違反での検挙歴を掲載。検挙されたとされる当時、売春防止法は未制定で、都道府県条例で売買春を禁止。

森氏は名誉棄損で民事訴訟を提起するも、東京地裁は『噂の眞相』の申し立てに基づき、警視庁へ検挙歴の紹介を依頼。しかし警視庁は拒否した。結果、2001年に賠償金なしの和解となった。

例えば、現在は『週刊文春』が“文春砲”として名を馳せているが、しかし文春は作家への都合で記事化しづらい出版社系雑誌であるため、作家のスキャンダルは報道しない。

【関連】ジャニーズと大物作家は完全スルー。日本の大手メディアは“カス”ばかりである

他方、『噂の眞相』は作家スキャンダルも報道していたため、『週刊文春』は噂の眞相の足元も及ばない。

2014年7月からは噂の眞相のデスクと元副編集長が、ニュースサイト「LITERA」を立ち上げている(*4)。

ジャニーズ・タブーの構図

2000年代半ば、筆者が大学時代にメディア研究を始めた理由は、まさに以下のようなものだった。ようは、なぜ日本に「タブー」は存在するかである。

インターネットが普及する以前、20世紀の時代には、電通や統一教会、そしてジャニーズの問題については、『噂の眞相』以外、まったく報道しなかった。

ところが21世紀に入り、インターネットの普及とスマートフォンの普及によるネットニュース・メディアが増加。既存の利害関係を持たない媒体が増加した。

それとともに、2010年代に入り、一連の東京五輪汚職に伴う電通の“自爆”、安倍元首相銃撃による衝撃のもとの旧統一教会バッシングにより、タブーは瞬く間に崩れさった。

しかしだ。“たかが”、“所詮”芸能人のスキャンダルの範疇ともいえるジャニーズの問題は、いまもって“タブー”のままだ。

岡本さんが外国特派員協会で記者会見して以降も、新聞各紙は社会面などで記者会見の内容を報じたが、テレビ局はNHKをのぞきすべて黙殺。

では、なぜジャニーズのスキャンダルはタブーなのか。

新聞は傘下にテレビ局を持つ。そのテレビ局は、ワイドショーとて、ドラマなどでジャニーズのタレントを使う立場だ。週刊誌は、同じ出版社でジャニーズタレントのカレンダーを出版する。

このような日本のメディア・システムが“タブー”を生んだのだ。

■引用・参考文献

(*1)「それでもジャニーズ問題を報じないメディアの末期的症状」ビデオニュース・ドットコム 2023年4月15日

(*2)片岡亮「テレビ、新聞、雑誌…マスコミが『統一教会の報道を避けてきた』恐るべき実態」現代ビジネス 2022年8月2日

(*3)田部祥太「Jr.だけじゃない。中居クンも過去に『妊娠・中絶』スキャンダルが」LITERE 2014年7月26日

(*4)「LITERA

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)2023年4月23日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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