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指切断の後も配達を続けた男性に世間から同情の声。背景に「時間指定まもれ!」とキレる客の存在

4月24日、京都府舞鶴市の路上で、帰宅中の小学生が人の指の一部を発見し保護者が警察に通報した。当初は事件性も疑われたが、その後、市内に住む男性配送作業員(60代)が、配達中に車のスライドドアに指を挟んで切断してしまったことが判明。男性はその場で止血を行い、指は路上に落としたまま配達を続けたといい、世間からは様々な反応があった。

なぜ、指を失っても配達を続けたのか

車のスライドドアに挟んだ指が切断された…。激痛が走ったことは想像に難くないが、男性はなぜ病院へ行かずに配達を続けたのだろうか。

ニュース番組でもこの件を取り上げており、配送業の人手不足が要因なのではないか? という問題を指摘していた。

これに「はい、人は足りていません」と話すのは、1年前まで大手宅配企業に勤めていた男性(40代)だ。

「とにかく、荷物の数と配達員の数が合っていないです。私は新宿エリアに勤務していたので余計そうだったかもしれませんが、どこの地域でもきっと似たようなもんだと思います。『午前中に1人でこれだけ運ぶのか…』と毎日絶望していました。コロナの時なんて1日12時間くらい働くのはザラで、結局私は体を壊して辞めました」

だが、男性曰く「私はまだ楽だった方かもしれないですね」と言う。

「私は一応、正社員でしたので。個人事業主の方は本当に地獄だと思いますよ。某大手と業務委託を結んで働いていた知り合いなんて、どれだけ荷物を運んでも日当いくら…という形で働かされていました。車のガソリン代も自己負担で、コロナの巣ごもり需要で荷物は大量です。当然、担当エリアの荷物を配りきらないと業務を終えることができませんから」

つまり、指を切断しても病院に行けないほどの業務量だった可能性もあるということだ。

「その方が会社勤めか個人事業主かはわかりませんが、いずれにせよ荷物は大量で、病院に行っている暇……と言いますか、『とにかくすべて配達しなくては』で頭が一杯だったのだと予想します。彼の気持ちは痛いほどわかりますね」(前出の男性)

「時間を返せ」と怒鳴るバカ客

今回の件はネットでも、

「指より配達を優先させなきゃいけないってどういうこと?」

「そこまでノルマがきついのか?」

「どういう労働環境なんだ」

「大怪我をしたのに仕事をしなきゃいけない状況が怖い」

のような反応があり、業界の労働環境に疑問を抱く人が多いとわかる。だが、前出の男性は「会社のせいだけではない」とも話す。

「ネットで注文したら1日で届くのが当たり前になったのか、言葉を選ばずに言うと“わがままで自分勝手な客”が増えたと思います。荷物が多い影響で時間指定に数分遅れると『時間を返せ』だの『お前と違って暇じゃないんだ』と罵声を浴びせられたこともありました」

確かに、現代は時間通りに荷物が来るのが当たり前という便利な世の中になったが、そのことで、配達員はつらい思いをしているようだ。

「午前中指定でAM11:30とかに配達に行って、不在だったとき。BOXもないので仕方なく不在票を入れて他の配達をしていたら、その客から電話が来て『今すぐ持ってこい!』と。すぐには難しい旨を伝えると『会社にクレーム入れるぞ!』『SNSに晒す』など、大の大人からめちゃくちゃなことを言われるんですね。これ本当の話ですからね。はっきり言って、時間通りに荷物が届いて当然と思っている客の存在も、荷物の量と同じくらいストレスになっていました。指を切断した方も“遅れたら客に怒られるから早く配達しなくては…”のプレッシャーがあったのでは? と思っています」

物流業界の「2024年問題」で、社員の残業時間の上限が年間960時間に制限される。そのことで、労働基準法が適用されない個人事業主への負担増加が危惧されている。今回のようなことを繰り返さないためにも、配達員を守る態勢を早急に整えてほしいものだ。

image by: Shutterstock.com

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