世界中から視察がやってくる、田舎の村のNPO法人があります。いったいなにが、世界の人々の関心を集めているのでしょう?メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』で著者の佐藤きよあきさんが、その秘密を解き明かしています。
地域の困りごとを聞いたら、23の新規事業が生まれた!
高知県高岡郡日高村。この地に、いま世界中から視察に訪れるNPO法人があります。
「日高わのわ会」。
「わのわ」とは、「人の輪」「話の話」「平和の和」が繋がり、大きな輪となることを願って活動している団体です。
福祉事業や農産物の加工・販売、カフェ、食堂、宿泊施設など、23のコミュニティビジネスを展開しています。
NPO法人がここまで手広く事業を行うことは珍しく、世界から注目されているのは、なぜでしょうか。
NPO法人の発端は、子育て中のママさんたち。
子育てのすきま時間に、何か人の役に立つことができないものか、と考えたのがキッカケです。
まず最初に取り組んだのは、地域の特産品であるフルーツトマトの規格外品、つまり廃棄されるものの利用方法を考えること。
農家の困りごとを聞いたことから始まりました。
その結果生まれたのが、NPO法人の活動を支えることとなった、『とまとみそ』。
パスタにもご飯にも使える万能みそです。
これが大ヒットし、注目されるようになりました。
そこから、トマトソース、トマトジャム、パスタソース、ピザソース、トマトスープ、トマトのチーズケーキなどが誕生しました。
また、農家との繋がりができたことで、農作業の手伝いもするように。
その現場では、人手不足の問題を知り、元気な高齢者や障がい者、子育て中のママさんを紹介する事業にも繋がりました。
さらに、就労支援の体制も整え、働く場を広げていきました。
そして、トマト加工品の需要を増やすために、食堂とカフェ、販売所を作り、ネット通販も開始しました。
加工品が売れるようになると、その製造に携わる人を増やす必要があり、雇用の機会が広がりました。
加えて、障がい者とのつき合いから知ることとなった困りごとに応えるために、自立支援相談、リハビリのサポート、買い物代行、グループホームの設立を手掛けることになりました。
高齢者に対しても、同じような困りごとがあることから、同等のサービス事業を展開しています。
また、地域全体のことを考え、村おこしにも力を入れています。
大学生と共同で食のイベントを開催したり、周辺の飲食店に働き掛け、オムライスをテーマにした、村づくりにも取り組んでいます。
ママさんの困りごとから始まったこの活動は、農家の困りごと、高齢者の困りごと、障がい者の困りごとなど、地域みんなの困りごとを解決する活動へと発展していきました。
目指すのは、「村まるごと家族プラットホーム」。
日高わのわ会が、村みんなのお母さんとなり、歳を取っても、障がいを持っていても、その人らしく日高村で暮らすことが願いなのです。
ここをお手本にしたいと、海外からも視察に来るのは納得です。
しかし、“最初のママさんたち”がいなかったら、どうなっていたでしょうか。
この素晴らしい村は、生まれていませんでした。
地域を良くするのは、行政の仕事です。本来なら、行政が取り組むべき課題です。
行政が発案し、民間の協力者を募り、地域おこしを実現させなければならないのです。
地域の衰退は、加速度的に進んでいます。
いますぐ始めなければなりません。
行政がやらないなら、民間がビジネスとして参入しても良いでしょう。
何れにしても、行動するのは「いま」なのです。
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