5月18日に自宅で倒れていた歌舞伎俳優・市川猿之助。両親の死因が「向精神薬による薬物中毒」と発表され、警視庁による猿之助への事情聴取が行われています。しかし、事件に関してまだまだ疑問点が多いのも事実です。今回は、芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんが、この事件で記者たちも疑問に思うあることについて言及しています。
猿之助の両親の死因…意外と身近な向精神薬
先週末、若い芸能記者たちと集まる機会があったのですが、そこで話題になったのは市川猿之助に関して警視庁捜査一課が正式発表した“向精神薬による薬物中毒”という死因についてでした。
大人が亡くなってしまう程の向精神薬の入手ルートとその効用について、普段こんな薬物とは縁のない若い記者たちにとっては想像もつくはずがなく、陰で何か恐ろしい、得体の知れないものが暗躍しているんじゃないかと口にしていました。
実は私、もう10数年くらい前から向精神薬を服用しているのです。
昨日和田アキ子も、明日の仕事の為に寝ようと思っても、その日の仕事終わりの脳が覚醒したままでなかなか寝付けず「睡眠導入剤をお医者様に処方していただいている」と話していたようですが、私の場合は睡眠が慢性的に非常に浅く、深い眠りを確保できないのがその理由です。
日中に入って来た大量の情報や大脳から出た老廃物の処理をして脳の働きを修復し、よりよい活動をするために必要なのが睡眠だと言われています。
その処理をする時間が少なければ当然精神的にも肉体的にも支障が出てくるわけで…医者の指導のもと、向精神薬が必要になってくるわけです。
『デイリー新潮』は、猿之助の御両親が服用した向精神薬は“医師の指示通りには服用しておらず、大量にため込んでいた模様”と推測しています。
御両親なのか猿之助なのかはわかりませんが、普段から多めに処方されていた余りを捨てずにとっておいたのか、それとも虚偽の申告だったのかは定かではありません。
更に“50~60錠を飲み込んだ”とも報じていますから、それだけの量となれば処方された薬を飲んだり飲まなかったりしていたのか、手元に残るまで数ヶ月はかかるでしょう。
そう考えると『女性セブン』が報じたセクハラ、パワハラ記事が引き金を引いたきっかけになったのかもしれませんが、もしかしたらかなり以前から、『澤瀉屋』が輪廻転生を信じていたとするならばその時はこれで…と計算されていたことも否定できないような気がします。
向精神薬というのは実に厄介な薬のようで、この10数年の間には何度となく厚生労働省からの物言いが入り、そしてその度患者と担当医とのディスカッションが必要になるものなのです。
概ね“クオリティ・ライフの維持”とか“依存症への警鐘”…この経験から向精神薬が“諸刃の剣”であることを実感させられたものです。
100錠飲んでも「死ぬ」とは限らない
先週末の会合で特に熱い議論が交わされたのは“70代半ばの人間がどのくらいの量の薬をフィジカルな負担が無く飲むことができるのか”という疑問でした。
私の手元には直径0.5㎝程度の薬がありますが、大量の水と一緒に飲めば40~50錠、数回に分けて飲めば100錠でも“大仕事”ではないと思われます。
ただそれで確実に死ねるかと言えば、100%死に至らないと専門家たちは口を揃えます。
都内のホテルから飛び降りたある役者のこと
若い記者たちの喧々囂々を聞きながら、私の頭の中には1983年6月に都内のホテルから飛び降り自殺をしたある役者の事が思い浮かんできました。
事件の内情はオンタイムでは知りませんが、芸能記者として“あの事件の主演たちは今…”というような企画物に加わり、複数の関係者に接触したことが思い出されます。
関係者の証言を聞いているうち、まるで長年の友人のような感覚に、そしてまだどこかで彼が生きているかのような錯覚に囚われたことを憶えています。
彼は“おやじ 涅槃で 待つ”という遺書を残したのですが、『文春オンライン』によると猿之助も“次の世で会おうね”という遺書を最愛の人に遺していたそうです。
飛び降りた役者は、複数の関係者が“非常に刹那的だった”と言っていました。
“涅槃で待つ”と“次の世で会おう”
…現世では叶わない何かが来世への旅立ちを急がせてしまったのでしょうか。
本格的な事情聴取は始まったばかりです。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
image by:Chris 73 / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons