さまざまな原材料の値上げによって、消費者だけでなく小売店からも悲鳴が聞こえている状況です。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、 今、「三重苦」に陥っているスポーツショップの現状を紹介。そこから打つ手立てを分析しています。
小売店の三重苦(値上げ編)
1.三重苦とは
今、三重苦に襲われていると訴えられる、スポーツショップの店主がいます。三重苦とは、
1.メーカーによる、商品価格の値上げ
2.メーカー、問屋による、品切れと納期遅れ
3.問屋からの仕入掛け率の上昇
のことです。商売に直接かかわることですから、たまりませんよね。この三重苦から逃れる方法はあるでしょうか。その方法を、私なりに考えてみました。今回から、3回に分けてお伝えします。
まずは、「値上げ」です。メーカーさんも、原材料の値上げにあっています。
商品価格に転嫁してくるのは、やむを得ないことかもしれません。何割ぐらい上がっているのでしょう。1割でしょうか、2割でしょうか。商品が高くなれば、今までのようにお客様が買ってくれないかもしれません。小売店さんにしたら、メーカーさんに文句の一つも言いたいところです。
とはいえ、文句を言って価格が下がるわけではありません。価格の決定権は、メーカーさんにあります。小売店さんには、どうしようもありません。では、スポーツショップはどうしたら良いでしょう。
2.商品の値上げはチャンス
商品が同じなら、どの店にとっても値上げは同じです。ですから、値上げによってお客様が離れていくものではありません。
もちろん、お客様にとっては値上げの無い方が良いに決まっています。しかし、その値上げを了解してもらうのもお店の力です。それどころか、値上げをうまく利用することも出来ます。
そこで、値上げに対して、次のような手を打てばどうでしょう。
・POPで値上げの説明をする
・値上がり前に、商品を仕入れる
・取り扱いブランドを変える
・弱小ブランドに力を入れる
順番に説明していきます。
お客様には、値上がりをした理由を伝えなければなりません。どのお店も、口頭では説明するでしょうが、なかなかPOPで説明をすることはないようです。この機会に、POPで説明されてはいかがでしょう。例えば、
・すみません、原価高騰につき…
・新しい機能がプラスされました!
・「質」と「サービス」がアップしています
といった感じでアピール出来ませんか。さらに、値上がりの時期をお知らせします。
・お急ぎください、〇月〇日までにお買い求めを!
とか何とか。
さらに言えば、お店にとっては、値上げは悪いことではありません。値上げをした商品が売れれば、その分売上も利益も増えます。一つのチャンスだとも言えるのではないでしょうか。
3.取り扱いブランドを変える
次に「値上がり前に、商品を仕入れる」という手があります。メーカーさんは、商品を値上げするとき、品番を変えることが多いです。そうした場合は、古い品番の商品を多く仕入れます。しかも、安い価格で。そうすれば、利益が上がります。
それでも、値上げに納得できなければ、次の手を使ってはどうでしょう。それが「取り扱いブランドを変える」という方法です。
値上げによって、自店で売りたい価格帯より高くなってしまったとします。今まで扱っていなかったブランドに、その価格帯の商品はないでしょうか。
そんなブランドがあれば、今までのブランドから乗り換えてみるのも一つの手です。決して、強力なブランドだけに頼る必要はありません。
そして、「弱小ブランドに力を入れる」のも手です。どんな競技にも、3番手、4番手のブランドがあります。この機会に、3番手、4番手のブランドに力を入れるのです。そうしたブランドならば、仕入価格の交渉もしやすいでしょう。当然、利益も取りやすいです。
メーカーさんの方も、自社ブランドを一生懸命売ってくれる店に、力を入れてくれるに違いありません。そうすれば、現在取り扱っているメーカーさんの値上げに困らなくても済むではありませんか。
つまり、扱っていなかったブランド、力を入れていなかったブランドの商品を売ることで、「値上げ」の問題は解決できそうです。さまざまな知恵を出していきましょう。
さて、次の「苦労」は、「品切れと納期遅れ」です。次回も、解決方法を考えてみます。
■今日のツボ■
・小売店の三重苦は、「値上げ」「品切れ・納期遅れ」「卸掛率」である
・値上げは、小売店にとってのチャンスとしてとらえる
・弱小ブランドに力を入れてみるのも、良い手である
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