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大事なことはファミレスで学べる。なぜ飲食業のバイト経験が人生の役に立つのか?

多くの方が人生のどこかのタイミングで経験するアルバイト。マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者ののもときょうこさんは、数多ある業種の中でも飲食業やサービス業でのアルバイトを強くお奨めするといいます。その理由はどこにあるのでしょうか。のもとさんはメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』で今回、自身とお子さんの体験から導き出された「飲食業のアルバイトを推奨する訳」を紹介。その上で、「皆が一度は経験すべき」と綴っています。

私が飲食店でのアルバイトをお奨めする理由

長男がファミレスでアルバイトを始めてしばらく経ちます。

私は全員が一度は飲食業界(またはサービス業)を経験した方がいいと思っています。

生きていくための方法を増やす

長男が選んだファミレスは、夫が学生時代にバイトしてたのと同じ店でした。

しかし、意外にもコンプライアンスもちゃんとしていて、服取りに行った日にも時給を出してくれるし、無理なシフトは入れないし、割と働きやすいみたいです。

今回、いいなと思った理由は4つあります。

1つには、これまで海外で過ごしてきた人にとって、日本社会を経験できるよさがあると思います。

2つ目は、仕事の引き出しが増えることです。レストラン業界で働いている大人たちをみておくこと、すごく重要ではないかと思ったのです。

3つ目は、サービス業の基本がわかることです。レストランの仕事は同時進行しなければいけないことが山ほどあって大変です。

4つ目は、今の時代、「生きていく方法が増える」ことはいいことだと思ったからです。知的労働が激動する中、「安心な仕事」なんて多分ありません。

「なんとか生きていける方法」を1つでも多く見つけておくと、後の人生で「あーもうやだな」と思ったときに助けになります。

私が会社を辞められたのは、なんだかんだ言って、「飲食業で雇って貰えば、最低でも1日一食のご飯は食べられる」と思っているから。

あとは、他の仕事と組み合わせればいいだけです。例えば、ライター一本で食べていけない人も、飲食店と組み合わせたらやっていけると思うのです。

今のところ、割と居心地が良いようで、「俺、ずっとこの仕事でもいいな」と言い出しました。シンプルに誰かのためになっている実感が持てる、と。私もまったく同じことを学生時代に思っていました。

飲食業のスピード感を知ることができる

私も大学生時代、4年間、飲食店で働きました。

ファミレスではじめ、後半は掛け持ちでファミレス、そして市ヶ谷にあるコーヒーショップの3つです。

「4年生大学で、うちで4年間続ける人は少ないよ」とファミレスの店長に言われましたが、多分性に合ったのだと思います。

というか、楽しかったのです。それに当時はお金がなかったので、ご飯をいただけるので助かっていたのです。

初日には、ただ先輩について動きを観察するのですが、まずそのスピード感と手際の良さに圧倒されました。

意外だったのは、肉体労働でありながら同時に思考が必要なことです。

私はホールでしたが、混雑時にレジと新規来店と料理と3つ同時に重なったら、急いで帰りたいお客さんのことを考えてレジを優先。次に料理を出して、新規来店を案内する、と教わりまして、「なるほどなぁ」と思いました。当時はメニューの値段を暗記しなくてはならず、数字に弱い私は大変でした。

ランチやディナーの時間帯は走り回っていたことをよく覚えています。肉体労働なので、くたくたになりますが、ボーッとしている時間がなく、あっという間に仕事が終わります。終わったら、ぐちぐちその日のことを考えることもなく、スッキリです。

飲食業の良さは、お客さんと近く、さらには人に喜んでもらえる、シンプルな業態であることです。従業員なら、出かけて行って、働いて、帰って、寝る。そんな感じです(オーナーや、マネージャーや店長になると、数字が出てくると思いますが!)。

最後に働いたコーヒーショップだけは、だいぶのんびりしていて、オーナーとおしゃべりしたりする余裕がありましたが、ここはすぐに閉店してしまいました。最後の日は閉店が悲しくて泣きました。

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実はライティングの仕事にも生きてくる

塾講師や家庭教師もやってましたが、ずっとファミレスの方が色々学べました。

レストランというと、若い人ばかりでは、と思われるかもですが、フツーに社員として働いている中年以降の人も、オーナーもいました。

マレーシアに行ってからも、来る仕事は拒まない式で、旅行博のスタッフやら、デパートの売り子やらの仕事をやりましたが、書き物の仕事には、その経験の方が生きています。

村田沙耶香さんは、大学時代にアルバイトでコンビニの仕事を向き合い、小説『コンビニ人間』で、芥川賞を取りました。本書には、コンビニの仕事の喜びというか気持ちよさが表されていますが、割とレストランと似てるかもと思いました。

最近読んでいる角田光代さんの小説『それもまたちいさな光』にも、レストランをやっている男性が登場し、リアルでした。

マレーシアで新聞社に勤める友人も、三人の子供を抱えて夫が亡くなり、お金に困ったときには、サテーなどの屋台を2つと掛け持ちして稼いでいました。今は学費の負担が終わったので、やめてマンションを買ったようです。

ファミレスに行くと懐かしく、私もまたやろうかな、とときどき思います。最近、近所のファミレスではシニアで働いてる人も少なくないです。

長男は「大変だけど、楽しいので毎日行きたい」「レストランに行ったときの見方が変わる」と言っていました。料理が出てくるのが遅ければ「ああ、注文が混んでて忙しいんだろうな」と思ったり、盛り付けが変なら「慣れてない人かな」と想像したり。

全員が、飲食業は一度経験した方がいいと思います。

ウエイター・ウエイトレスに尊敬が湧くと思います。

※ 本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年6月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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image by: Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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