MAG2 NEWS MENU

TOKYO, JAPAN - 11 December 2021:BIGMOTOR sign

不正疑惑のビッグモーターに「倒産」の可能性はあるか?事業再生コンサルの見解は…

数々の不正発覚で連日ニュースを賑わせている中古車販売大手・ビッグモーター。報じられた同社の不正内容は酷いものがあり世間の反感を買っている状況ですが、今後、会社はどうなっていくのでしょう?今回、メルマガ『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』の著者で事業再生コンサルタント、作家、CTP認定事業再生士の顔を持つ吉田猫次郎さんが、倒産と再建を含めてあらゆる可能性について言及しています。

いま話題沸騰中のビッグモーター、倒産の可能性は?再建の可能性は?

この話題は個人的に非常に興味があり、連日ニュースを追いかけています。先週あたりまではテレビで報道されておらず(TVCMスポンサーの為)、情報源はインターネットのみでしたが、今週に入ってからはTVCMが減り、NHKやTBSなどが順次、報道し始めています。

概要

中古車販売大手ビッグモーターは、CMなどによると、年商6,500億円、従業員6,000名、店舗数は全国に300以上あるそうです(株式上場していないので不詳な点も多い)。

業務内容は、中古車の販売が主ですが、ほかに買取、車検、板金、修理なども行っています。

昨今のニュースでは、「客から預かった車にわざと傷をつけて修理代を水増し請求」「タイヤに穴をあけてパンク修理代を請求」「不正車検」「保険会社への水増し請求」などが次々に発覚。こうした問題は、2022年以前から内部告発があったものの、会社はそれを無視。2023年1月、ようやく外部専門家による特別調査委員会が設置されました。

調査結果によると、不正件数は300件を超え、水増し請求をしていたのは33工場、それも、上司の指示により、「ゴルフボールで車を叩き、雹(ひょう)による被害に見せかけた」「マイナスドライバーで車体をひっかく」などの行為があることが発覚。

2023年7月6日には、こうした行為により大規模かつ組織的な保険金の不正請求があったことがハッキリしてきました。

そして7月18日に国土交通大臣が「言語道断だ」としたうえで、道路陸送車両法違反の疑義により、事情聴取を行う方針であることを発表しました。

ここまでダンマリを決め込んでいたビッグモーターですが(TVCMも普通に流していた)、7月18日以降は公式ホームページにおいて、調査報告書の全文公開や役員報酬カットなどを発表。そしてこの頃からやっと、テレビの報道でも取り上げられるようになってきました。

不祥事の背景には、従業員への過酷なノルマがあったようです。

2019年に外部団体が行った調査によると、ビッグモータ─の「経営計画書」には、「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」(原文ママ)という、目を疑うような文言が書かれていました。

中古車販売のノルマはもとより、買取なら1万円でも安く買い叩く、修理なら1万円でも高く修理代を見積もる、といったように。

【参考】
● 「ビッグモーター調査報告書、その内容は? https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/20230714/605/」NHK
● 企業法務ナビ「ビッグモーター、自動車保険不正請求事件の調査報告書受領を発表 https://www.corporate-legal.jp/news/5355

この記事の著者・吉田猫次郎さんのメルマガ

初月無料で読む

倒産の可能性は?

さてここからは私の見解です。私は会社の再生ばかり20年以上やってきた中で、「突然死」のような事例も少なからず見てきました。

ビッグモーターは非上場会社で、財務内容を公表していません。よって、私が一番知りたい自己資本比率や現預金残高、営業利益などがハッキリわかりません。数字で危険度を判断するのはできそうにありません。

ただ、月次の売上高と経常利益は、このサイトに詳しく書かれていました。

● 「【独自】ビッグモーター、実は大幅減益」AUTOCAR JAPAN

記事にはこう書かれています。

昨年までは40億円前後の単月経常利益が、今年4月に10億を切って7億7,000万円台にまで落ちました。

年商6500億円ということは、12で割ると月商541億円平均になります。去年までは、月商541億円、月の経常利益40億円 ≒ 7.3%の経常利益だったようです。かなり高い利益率ですね。

しかし直近では、月商はハッキリしませんが、仮に400億円に減収していると仮定して、そのうち経常利益が7億7,000万円だとすると、利益率は1.9%になります。かなり低い利益率ですね。

では数字以外の面ではどうでしょうか?

1.行政処分はあるのか?

現時点ですでに、不正車検を実施した複数の店舗が、店舗単位ではありますが、国土交通省から行政処分を受けています(佐賀、熊本、栃木など)

33店舗の工場で何らかの不正行為が発覚しているので、今後、国土交通省からの行政処分が広がる可能性があります(修理の認証工場、指定工場としての処分)。

また、「古物商」としても、なにしろ保険金の不正請求などをしたわけなので、全店規模で営業停止処分、最悪の場合は取消処分(免許剥奪)のおそれもあるでしょう。

2.民事上の責任を負うことはあるのか?

保険会社から、水増し請求分の返還を求められており、一部は既に支払われているようです。

証拠がハッキリすれば、エンドユーザーから「うちの車に傷つけられた!」など、損害賠償請求が発展するおそれもあるかもしれません。

3.刑事事件に発展する可能性はあるのか? 

保険会社から詐欺罪、エンドユーザーから器物損壊罪で刑事告訴される可能性もあるかもしれませんね。

4.顧客のビッグモーター離れ?

これは当然あるでしょう。

5.内部崩壊のおそれは? 

これも当然あるでしょう。もともと離職率の高い会社だったようです。

6.金融機関との関係は?

行取引約定書などに書かれている「期限の利益の喪失」条項に、よく、差押、不渡、その他、行政処分や信用を著しく損ねる行為があった場合は一括請求~といった内容の文言が書かれています。よって、追加融資や短期の書き換えは断られるかもしれませんね。

7.仕入れはできるのか? 

中古車の仕入は、多くの場合、業者オークションです。業界用語でAAなどとび、大きいところではUSSやTAAなどがあります。最悪の場合、本件により、オークション入場資格が剥奪される可能性もないとはいえないかもしれません。

8.テレビCMは続けられるのか?

20日のニュースで、ビッグモーターのイメージキャラクターである佐藤隆太がCMを降板する方向で協議中というニュースが流れていました。

9.保険会社との関係は?

保険会社からは現在、水増し請求分の返還を求められ、既に一部を返金済みのようですが、これはまだ序の口でしょう。返還請求額はおそらくもっと増え、さらには損害賠償請求、代理店契約解除などの動きもあるかもしれません。

10.その他 

現在の預金残高がいくらあるかわかりませんが、最悪の場合、全店規模で1~2ヶ月の営業停止になり、その後の売上も思うように回復せず、資金繰りが悪化し、テレビCMどころではなくなり、借入もできなくなり、資金繰り改善のために不採算店舗や遊休資産を売却、事業規模縮小、と、ここまではじゅうぶんありえると思います。

しかし、かなり大規模な会社なので、1~2ヶ月の営業停止処分や規模縮小くらいでは倒産には至らないでしょう。 

倒産があるとしたら、古物商免許の全店規模での剥奪(取消)があった場合でしょうか。

(メルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』2023年7月20日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・吉田猫次郎さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: yu_photo/Shutterstock.com

吉田猫次郎この著者の記事一覧

事業再生コンサルタント。認定事業再生士(CTP)。特に倒産寸前の中小企業、零細企業、自営業の自力再生(のサポート)を最も得意としています。著書『震災後に倒産しない法』(サンマーク出版)、『借金なんかで死ぬな!』(朝日新聞出版)、『連帯保証人 なってみたらすごかった でもまだ手はある』(ワニブックスPLUS新書)、『ブラックリストなんて怖くない』(宝島社)、『働けません。』(三五館)ほか多数。1968年東京生。乙女座A型。趣味は自転車、魚釣り等。無類のネコ好き。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎 』

【著者】 吉田猫次郎 【月額】 ¥528/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 10日・20日・30日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け