連日、多くの不祥事が報道されているビッグモーターは、TVやSNSでも大きな話題となっています。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、なぜこんな経営がまかり通っていたのか、経営者とはどうあるべきなのかについて語っています。
ビッグモーターの経営のズレ
ビッグモーターに関する報道があふれています。SNSでの投稿も後を絶ちません。
今回の件は、経営とはどうあるべきか、経営者はどうあるべきかを教えてくれています。
1.経営者の態度
ビッグモーターの売上は7000億円、店舗数は300、従業員は6,000名です。こんなに大企業なのに上場していません。
最近の報道を見る限り、その経営の仕方は、小さな会社がそのまま大きくなった感じです。松下幸之助さんが知ったら、きっと叱られます。
そこで、『松翁論語』から、いくつかの言葉をピックアップして、ビッグモーターの「経営のズレ」を見てみましょう。
『松翁論語』には、「経営の原点」は次のように書かれています。
商いの原点は、どうしたら売れるか儲かるかではなく、どうしたら人びとに心から喜んでもらえるかである。
ビッグモーターの人たちには、この「原点」が欠けているように思えます。経営者が、そうは思っていないからでしょう。人びとに喜んでもらえることを、経営の目標・目的にしなければいけません。
『松翁論語』には、「経営者の態度」に関する言葉も多く載っています。その中から、4つ挙げましょう。
成功は部下の努力のお蔭。失敗は経営者の判断ミスによる結果。
部下の努力あっての経営ということですね。そして、失敗は経営者がもたらしたものと言っています。経営者に責任感があれば、ビッグモーターのような不正はおこりません。
経営を預かる者に必要なものは知恵と知識である。しかし、往々にして知識だけで経営を試みる無謀者がいる。
ビッグモーターの二代目経営者は、高学歴やMBA資格をふりかざしているようです。知識があっても知恵がなければ、良い経営者にはなれません。
とらわれて決断をしてはならない。名誉にとらわれ、お金にとらわれ、世間の評判にとらわれて、正しい決断ができるはずがない。
名誉やお金、世間の評判にとらわれる経営者は多いです。ですから、ビックモーターの経営者は正しい判断をしてこなかったと言えるでしょう。
さらに、次の言葉もあります。
単なる金儲け、単なる虚栄のための経営であってはならない。人生とは何か、人間とは何かという哲学がなくてはならない。
そうなんです。経営者には哲学が必要です。はたして、ビッグモーターの経営者には哲学があるのでしょうか。
2.人材の育て方
ビッグモーターには、組織運営にも問題があります。松翁の言葉です。
部下を恐れさせる経営者は、愚かと言わざるをえない。恐怖政治では、部下が育つはずかない。
ビッグモーターでは、上司が部下に対し、恫喝や罵倒が頻繁に行われています。そして、幹部に部下の生殺与奪権を与えています。そのため、降格人事や転勤が頻繁です。ひどい会社ですね。
松翁は、こうも言っています。
上に立つ者が威圧とか権力で人を使うのは愚かである。安心感をもたせつつ、なお導いていくことができなければならない。
ビッグモーターの社員には、安心感などないでしょう。経営者や上司が愚かということです。
さらに、こう言っています。
お互いに思ったことをどんどん言えない組織は崩壊する。
ビッグモーターに、上にものが言える雰囲気はありません。崩壊が待っています。
そして、ビッグモーターには、人材を育てる気はあるでしょうか。松翁論語には、こうあります。
物をつくる前に人をつくる。いい人材からしか、いい物ができないからだ。
これをビッグモーターに当てはめてみると、いい人材でなければ、いいサービスが提供できないということです。不正を行う人間が、いい人材であるはずがありません
まず、人づくりから始めよということですね。
一方、松翁は人材について、こうも言っています。
いい人材ばかりを集めようとするのは虫がよすぎる。少々変な者がいても、大胆に構えて使う肚がないと、人など使えるものではない。
そうですよね。ビッグモーターでも、いい人材ばかりがいるわけではありません。要は、上司の姿勢次第ということです。
3.人間道
ビッグモーターでは、二代目経営者のことが話題になっています。ずいぶんと高圧的な人物のようです。松翁は、二代目について、こう言っています。
二代目の経営者はとくに謙虚であらなければならない。なぜなら創業のために凄絶な戦いをしてきた先輩諸氏を使わなければならないからだ。
ビッグモーターの二代目は、謙虚になることができるでしょうか。謙虚になるにはどうしたらいいでしょう。
素直な心があれば、おのずから謙虚な気持ちも生まれてくるし、人を許す心も生まれてくる。
なるほど。キーワードは「素直な心」ですね。とはいえ、「素直な心」になるのは、簡単ではありません。どうしたらいいでしょう。
素直な心になるためには、まず素直な心になろうと強く念ずること。そして、きょう一日、素直な心で過ごしたかどうか、反省することだ。
素直になろうとする努力と反省が必要ということですね。ビッグモーターの二代目に伝えてあげたいものです。
そして、ビッグモーターの記者会見を見ました。何ともひどい内容でしたね。松翁も言っています。
とるべき責任を、そ知らぬ顔で回避する人間ほど卑怯な人間はない。
本当にその通りです。最後に締めくくりの言葉を。
人間には人間道がある。人間道とは、人間をして真の人間たらしめ、万物をして万物たらしめる道である。
ビッグモーターの経営者は、今こそ人間道を身につけるいい機会かもしれません。
以上、「松翁論語」の言っていることと、ビッグモーターの経営とのズレを考えてみました。
■今日のツボ■
・経営の原点は、どうしたら人びとに喜んでもらえるかということにある
・経営には、人間とは何かという哲学が必要である
・素直な心があれば、謙虚な気持ちで経営ができる
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