多くの人が難しさを感じる、スムーズな人間関係の構築。しかしとある「テクニック」を使うことで、容易に進めることが可能なようです。今回のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』では投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹さんが、「認知バイアス」を用いた関係構築の方法を紹介。回りの人間からの注目度、関心度、期待値をアップさせる裏技を徹底解説しています。
ビジネスに役立つ!認知バイアスで人を動かす方法!
私たちの思考は、そもそも間違いを犯しやすいプロセスに満ちています。
私たちが物事の本質をつかもうとする時には、まずは 直感で判断しようとします。
瞬間的に、無意識に、単純化して考える脳の「システム1」が機能するのです。
あ、ヘビだ、危ない!」などと足下のヘビに気づけば、即座に飛びのくでしょう。
みんなに、お菓子を配るとき、集まった人数の分を把握する時でも、「ひい、ふう、みい、よう……」といった具合に、ざっと数人ずつの「かたまり」で全体をとらえたりします。
このように反射的に思考して、脳が疲れるのを防いでいます。
ところが、簡単に判断できない場合もあります。
「どうしたら、この商品の売上を伸ばすことが出来るのか?」といった問題を考えるときです。
時間をかけて、データを調べたり、仮説を組み立てたりと、論理的、意識的に思考しないと、こういう場合は考えがまとまりません。
これが、脳に負荷がかかる「システム2」というわけです。
このように、すばやく「勘」をはたらかせて判断する「システム1」と、論理的に思考を育む「システム2」のいずれにおいても、私たちは認知バイアスである「思考の癖」や「判断の偏り」「思い込みの罠」から逃れられません。
もちろん、瞬間的な判断を要する「システム1」をはたらかせる時のほうが、認知バイアスに影響されるケースは多くなります。スピード重視で判断処理しているからです。
こうした認知バイアスについての、基本的な知見を得ておくと、ビジネスにおける人間関係においても、いろいろ役立ちそうなことがおわかりいただけることでしょう。
今回と次回は、この「認知バイアス」について紹介していきたいと思います。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
「代表性ヒューリスティック」の罠に嵌るな!
「代表性ヒューリスティック」とは、対象を直感で判断するために起こる「脳の偏った決めつけ」です。
何か少しでも目立つ部分や特徴づける部分があると、それが全体を表わしているかのように錯覚してしまうのです。
人に対してだけでなく、モノや事象に対してもはたらきます。
有名な例に「リンダ問題」があります。
次はリンダのプロフィールです。
※ リンダは31歳の独身女性、大学時代は哲学専攻で、差別や社会的不公正の問題に関心があり、反核デモに参加したこともあります
さて、現在のリンダは「銀行員?」、それとも「フェミニズムに関心のある銀行員?」──と尋ねると、大抵の人が「フェミニズムに関心のある銀行員」と誤答します。
ただの銀行員であるほうが確率が高いのに──です。
代表的、典型的と思ったこと(要素)を過大に評価しやすい傾向、これが「代表性ヒューリスティック」です。誰もが持っている 「脳の癖」なのです。
たとえば、「あの人は東大卒」と聞くと、「すごく仕事ができそう」などと思いがちです。
一般的な頭はよいとしても、実際に「仕事ができる」のかどうかはわかりません。
にもかかわらずこの時点でそう思ってしまうのは、先入観や経験に基づく「社会的要素」による直感的判断をしてしまう傾向が人にはあるからです。
人物をひと目見ただけでも、このバイアスははたらきます。
折り目正しい雰囲気の人は、そこはかとない知性や教養を感じさせます(外見的要素)。
しかし、粗野な言動の人は、その逆を行く人にも思えてくるので警戒心を抱かせます(性格的要素)。
代表性ヒューリスティックは、このように「社会的要素」「外見的要素」「性格的要素」の3点において、その威力を発揮していることがわかります。
自分の存在感をより強く周囲に示したいならば、これらの要素での代表性ヒューリスティックを存分にはたらかせるようにするとよいでしょう。
すると、あなたへの注目度、関心度、期待値も上がっていくからです。
「社会的要素」では、自分の強味や弱味を分析し、好感度が上がる要素をそれとなく周囲にアピールしていくことです。
「学生時代はずっと野球部」で根性と体力のあるイメージを表わし、「趣味は料理」で家庭的なイメージを表わしたり──といったさりげない自分語りが、属性を形作ってくれるのです。
「外見的要素」では、髪型、容姿、身なりの他に顔の表情にも気を遣いましょう。
自分に重厚感を出したいなら黒系の服を選びます。
性的魅力度をアップさせたいなら赤系の色を服装の一部分に取り入れるようにします。
爽やかに見せたいなら青や白系の服装が好感度につながる──と色彩心理学は教えてくれています。
そして快活な笑顔を多く見せることで、明るい人柄も外見から演出できます。
次に「性格的要素」では、話し方を工夫し、明瞭、快活、丁寧な口調にこだわりましょう。
早口で話す癖があれば、落ち着いて格調高く話すようにします。そして誰にでも親切に接します。
親切で性格のよい人には人が寄ってくるでしょう。
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「バーナム効果」と「自己確証動機」を活用して人を味方につける!
さて、人間は悩む動物です。
悩みの内容は、些細なことから重大なことまで、いろいろあるでしょう。
しかし、悩みを突き詰めていくと、おおむね4つのカテゴリーに収まります。
- 健康
- お金
- 人間関係
- 将来
「よく当たる」と評判になる「占い師」は、このことをよく知っているため、4つのカテゴリーのどれかを当てはめ、初対面のお客を一瞬にして虜にするのです。
占い師 「お金と人間関係についてのお悩みですね」
お客 「えっ、そ、そうですけど…。よくおわかりですね…(汗)」
お客は、生年月日を尋ねられ、手相を診られる──といった自分自身に特化された占いの儀式を終えたのちに、「お金と人間関係の悩みがありますね」などと断定されると、たいていの場合、当てられた気分になります。
誰にでも当てはまることを告げられただけなのに──です。
占い師の抽象的な言葉を、お客は自身の具体的な悩みに自ら結び付けてくれます。
「実はリストラされ、就職が決まらず……」などと悩みを吐き出していくことでしょう。
誰にでも当てはまりそうな抽象的なことでも、お客に直接該当することとして断定的に伝えると、お客は自分を理解され、自分の内面を見透かされたような気になるのです。
これが「バーナム効果」と呼ばれる認知バイアスなのです。
その時点から、明るい未来を予言されればハッピーな気分になり、暗い未来を暗示されれば不安に駆られます。
自分を理解する人からの言葉ゆえに効くのです。どうせ伝えるなら、明るい未来を伝えてあげたほうがよいでしょう。
バーナム効果によって、「この占い師は自分のことをよく理解してくれる人だ」──こういったお客の思いが刷り込まれるのは、こうしたプロセスがあるからです。
ところで、人には誰でも「認められたい」「ほめられたい」といった「承認欲求」があるものです。
ゆえに、「ごもっともですね」「きみの言うことはいつも正しい」などと肯定的に自分をとらえてくれる人を好きになり、否定的な人は遠ざけたくなります。
こうした心理を「自己確証動機」といいます。つねに自分の味方や理解者に囲まれていたい──と願う心理を指しています。
誰かとコミュニケーションを深めたいとき、こうした「バーナム効果」や「自己確証動機」などの認知バイアスを活用するとスムーズになります。
「ぼくは、多くの成功者の評伝を読んでいるけど、きみの考え方は建設的で気が利いていて、成功者に通じるものが揃っているよ。将来きっと出世するはずだ。きみの考え方の前向きなところには、いつも感心させられるからね」
このように、「きみは〇〇」「あなたはきっと〇〇になる」などと、相手の現在や未来を肯定的に見透かしてあげます。
そして相手に同調し、共感を覚えていることを伝えます。
するとみるみるうちに、あなたが自分を理解し、応援してくれる存在のように思えてくるのです。
自分の内実をよく知る人には信頼を寄せたくなっていくわけです。
こうした「認知バイアス」を知っていると、人間関係構築に非常に役立ちます。ぜひ、覚えておいてほしいのです。
(つづく)
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