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維新代表が“高収益”社会福祉法人を乗っ取りか。逃げる馬場氏と橋下・松井・吉村氏のキナ臭い関係

支持率で立憲民主党を上回るのが常となり、次期衆院選で野党第一党を目指す日本維新の会。しかしここに来て、党勢を削ぎかねない疑惑が浮上しています。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、週刊文春が報じた維新代表・馬場伸幸氏の「社会福祉法人乗っ取り疑惑」を紹介。その不自然な理事長交代劇の説明責任を果たさぬ馬場氏の姿勢に苦言を呈しています。

維新の会代表に不安材料。文春が報じた馬場氏の社会法人乗っ取り疑惑

ついこの間まで、うなぎのぼりに見えた日本維新の会の人気に急ブレーキがかかってきた。

NHKの調査によると、維新の政党支持率は統一地方選後に急上昇し、今年5月に6.7%だったのが、6月6.2%、7月5.6%と下降、8月にはついに4.8%となった。8月の立憲民主党の支持率は4.7%なので、ほぼ同じ水準だ。

原因はいくつか考えられる。維新の目玉政策である大阪・関西万博の建設工事が大幅に遅れ、予定通り開催できない恐れが出てきたこともその一つ。所属議員の不祥事が続発している影響もあるだろう。だが、そのほかに見逃せない要素がある。

代表をつとめる馬場伸幸氏のことだ。橋下徹、松井一郎という“創業者”が政界を去り、維新を背負って立つ存在になったのだが、野党第一党も視野に入ってきたこの時期、さまざまな不安材料が噴出してきた。

維新というと、テレビ出演で顔を売り、今春の統一地方選で党躍進の原動力になった吉村洋文大阪府知事のイメージが強いかもしれない。だが、所詮は党のナンバー2である。全国進出をめざす党として、東京のメディアが重視するのは、馬場氏の言動ということになる。

7月23日のネット番組「ABEMA的ニュースショー」で、馬場氏が発言した内容が、大きな波紋を呼んだ。

番組のレポーターが、「維新は第2自民党でしかない」という立憲民主党議員の主張を伝えたのに対し、馬場氏はこう言い放ったのである。

「第1自民党と第2自民党でいいんですよ。(双方が)改革合戦、国家国民のためになることを競い合う。それが政治をよくするんです。立憲民主党さんがいても日本はなんにもよくならない」

もともと大阪の自民党から派生し、橋下徹氏と結んで生まれたのが維新である。本音を素直に漏らしたということだろう。第1と第2は「保守という原点は同じ」で、「大きく改革をするかどうか」が違うのだという。

小泉政権のときには、民営化や規制緩和などの構造改革を進める改革派と、守旧派とか抵抗勢力とか呼ばれる人々が同じ自民党にいた。小泉政治の司令塔だった竹中平蔵氏の構造改革路線を、維新が受け継いだということなのだろうか。

それなら、かねてから馬場氏が標榜している「自民党と維新の二大政党制」の実態は、自民党による「一国一党」制に近いものになりはしないだろうか。まさか「翼賛政治」をめざしているのではあるまいが、反対ばかりして足を引っ張るという理由で現在の最大野党を不要だとし、同質の政治勢力だけで固めるということになると、あまりに国民の選択の余地が狭まってしまう。

自分の気持ちに正直に喋るのはいいが、民主主義国家における公党の党首としては、いささか器量に欠けるのではないか。

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不自然な社会福祉法人理事長の交代劇

ところで、馬場氏には政党代表とは別に、大阪府堺市で4つの保育園を営む社会福祉法人「ドレミ福祉会」の理事長という肩書がある。今年6月25日付で、前理事長に代わってそのポストに就いたばかりなのだが、その交代劇にまつわる疑惑を週刊文春が報じている。

文春の記事によると、前理事長は今年81歳になる西侑子氏(仮名)。「ドレミ福祉会」を1980年に設立し、年4億円前後の収入のある法人に育てた人物で、馬場氏を堺市議時代から支持してきたが、何年か前から認知機能の衰えが目立つようになった。

西氏には身寄りがないため、ドレミのナンバー2である業務執行理事をつとめていた馬場氏が、老人ホームを手配して入所させるとともに、法人と個人の両方の銀行通帳や印鑑を管理している。老人ホームの月45万円の支払いも馬場事務所が西氏の銀行口座から出しているという。

問題は、馬場氏にどういう権限があって西氏の資産を管理しているのかということだ。西氏のケースだと、家庭裁判所が関与する成年後見制度を活用して資産や生活の管理をするか、信託会社に依頼するのがふつうだ。ところが、馬場氏はそういう手続きを踏まなかった。

この問題について、今年4月の統一地方選投開票日(前半)の翌日、ドレミ福祉会元理事A氏、西氏と30年来の付き合いがある別の社会福祉法人のB理事長、そして彼らが呼んだ弁護士が、馬場氏とその秘書を相手に話し合った。週刊文春はそのさいの音声データを入手し、記事の中で、発言内容を公開している。下記はその一部だ。

冒頭でA氏が西氏の認知症や要介護3の認定を受けている現状を踏まえ、「後見人をどうするのか」と質問。馬場氏はこう応じた。

 

「個人の財産とかも管理させて頂いています。それについては、西先生から一筆頂いて、やらせて頂いているんで。(略)西先生の今の状況では、成年後見人制度とかを使って、やるということはそぐわないということで」

「一筆頂いて」というのは、任意の財産管理契約を結んでいるという意味らしい。成年後見制度ではないため、適切に財産管理が行なわれているかをチェックする第三者がいないことになる。

B氏が「成年後見人をつけないのはおかしい」と重ねて訴えると、馬場氏は、「西先生の体調含めて、かなり今まで波あったんですね。かなり、正直申し上げて危ない時もあった。体調が良くなってきた時もあった。それとこう、認知とがこう、正比例したり、反比例したりしてきたんで」

西氏の体調や認知機能に大きな波があって判断が難しかったということだろうか。これでは、成年後見人をつけない理由にはなっていない。

最後に、弁護士が「馬場事務所が西氏の財産を管理している現状では、本人への報告義務含め、不明瞭な点が多い」などと指摘。B氏も「明確にしたほうがいい」と求めると、馬場氏は、「そらそうですね」

「そらそうですね」と言うのなら、一刻も早く、誰の目にも公正なやり方に変えるべきであろう。文春の記者の直撃に対し、馬場氏は「あなたに答える必要はないから」と、説明を拒否したようだ。

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日本維新の会という政党最大のミステリー

西氏が所有する保育園の土地は、亡くなったらドレミ福祉会に寄贈するという一筆を3年ほど前、「自筆証書遺言」の形で書いてもらっているという。その馬場氏は今やドレミ福祉会の理事長におさまっている。“乗っ取り”疑惑を晴らすためにも、きちんと説明するべきではないのだろうか。

今のところ、この件についての報道は週刊文春にとどまっている。だからといって、放っておいていいとは思えない。

維新という政党の最大のミステリーは、派手な“花形役者”だった橋下徹氏が早々に去り、渋味のある“助演俳優”の松井一郎氏も今年になって引退、橋下氏に代わる“看板”として人気を博してきた吉村氏には代表になる気などさらさらなく、結果として、“脇役”に過ぎなかった馬場氏が代表となって「総理大臣をめざす」と言わざるを得なくなっている現状である。

馬場氏は高校を卒業し、ファミリーレストランの厨房で働いた後、政治家秘書、19年にわたる堺市議を経て、衆議院議員4期目だ。地方議員の経験が長いという共通点のある菅義偉元首相を敬愛し、自らを“8番キャッチャー”“縁の下の力持ち”などと称してきた。

柔らかな大阪弁で、「イシューごとに是々非々」と唱える馬場氏の庶民的雰囲気は、維新の重視する「市民感覚」にマッチする面があるかもしれない。しかし、これまで自民党の補完勢力とか別動隊とか言われてきたことを自ら裏打ちするかのような「第2自民党」発言は、幾分の誤解が入り混じっているとしても、自民党の利権政治を嫌う人々を落胆させたのは間違いない。

そのうえ、今回の文春砲によって、他人の財産を思い通りにしている疑惑を突きつけられてしまった。自民党が続けてきた守旧的な大阪府市政を糾弾し、行政や議会の無駄を省いて、庶民の味方のイメージをふりまいてきた党の代表だけに、その反動の強さも想像できる。

馬場氏がどのような政治的言動をしようと自由だが、自らの身辺をきれいに整えないままでは、説得力を持たない。「第2自民党」というネガティブな響きがまとわりついてくるだけではないだろうか。

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image by: 日本維新の会 - Home | Facebook

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