苦しい時期を乗り越えたらちょっと楽しいことをしよう。そんなことを思って頑張って、いざその時が来てみるとなんだか気力が湧かないなんてことがあるようです。離婚後一人で育てた娘が就職して自立し、3年前から介護していた親も見送り、やっと自分の時間ができると思ったのに「心が晴れない」という単身女性の悩みに答えるのは、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で、公認心理師の永藤さん。死力を尽くして、いまフルマラソンを走りきったばかりのような人にとって、必要なことは何かを伝えています。
ちょっと御相談がありまして:心が晴れるはずなのに
皆様からお寄せいただいたご相談や質問にお答えしたり、一緒に考えたりしていきます。
Question
アラフィフ女性です。15年まえに離婚し、シングルマザーとして働きながら娘を育て、ようやく今年、彼女は就職で家を出ました。また、3年前から、近居で一人暮らしだった80代の父の見守り、そして介護をし、2か月前に見送りました。子どもも手を離れ、親の介護も終わり、ようやく肩の荷が降りました。
それまでは、子供の教育費がかからなくなったら、プチ贅沢をしよう、とか、親の介護が終わったら、旅行をしようとか、あれやこれやと考えて、それを目指して頑張っていたはずなのですが、今、その状態になったのに、全然やりたいと思えないのです。
また、亡くなるまで全く知らなかったのですが、親が残してくれたお金が、思ったよりあったということもありますし、マンションのローンも払い終えているのもあって、もうお金のことで大きな心配をする必要がない、ということもわかったのですが、なんだかちっとも心が晴れないのです。
ずっと歯を食いしばって、なにくそと思いながら働いてきました。お金がないことで娘が引け目に思わないようにと頑張ってきました。母は早くに亡くなっているのですが、父の面倒は自分が見ようと決意し、そちらもいろいろあったけど頑張りました。両方終わったら、自分のイメージとしては、ゴールテープを切った気持ちがするのかな、と思っていたのですが、なんだか全然実感が湧かず、次のステップに晴れやかに進んでいくこともできないのです。なんだか、しんどいです。
【永藤より愛をこめて】
本当に本当に、お疲れさまでした。シングルで働きながら娘さんを育て、そしてお父様の介護もされて、ずーっと歯を食いしばって頑張ってきたのですね。無条件に、手放しで、心の底からあなたをリスペクトします。
「ほかにも同じような人はいるから」とか「そんな大それたことやっていない」と謙遜される方も多いのですが、あなたがやってきたことは、誰が何と言おうと「偉業」です。堂々と、凱旋パレードをするような気持ちでいてください。
……それが、そんな気になれないんですよね。「心が晴れない」とおっしゃっている。終わったらゴールテープを切った気持ちがするのかな、と思っていたけれど、なんだかそんなドラマのような感じでもない。
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そりゃそうですよ。偉業を成し遂げたあなたは、心身ともに疲れ果てているのです。人間が疲れ果てるとどうなるかご存じですよね。顔は能面のようになり、感情も動かなくなり、ただただエネルギーを放出しつくして空っぽになってしまった心と身体を休ませる態勢に入るのです。そんなに早々に「次のステップ」に軽やかに行けませんよ。軽やかに行けるというのは、それまでの気力・体力を温存していた人だからじゃないでしょうか。
そうだなぁ、例えて言えば、フルマラソンとかトライアスロンを、死力を尽くして走り切って、ゴールテープを切ったばかりの息も絶え絶えで地面に倒れこんでいる人に、「おめでとうございます!今からご褒美で、東京ディズニーリゾート2日間満喫していただきます!チケットの期限は明日いっぱいです!」って言われて、「やったー!うれしい!今すぐ行かなきゃ!!」って言える人、いないでしょ?
「今、私は充電期間なんだ」
そう思って、心と身体をしっかり休めてください。心と身体がフル充電されたら、きっと次のステップに軽やかに行くことができます。
「それはいつなのか?」って?それは誰にもわからないけれど、きっとそのタイミングはご自身だけが気づくことができるのではないでしょうか。とにかく、本当にお疲れさまでした。お休みなさいませ♪
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