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「何のオーラも発しない」姿を露呈したドナルド・トランプ。なぜ米中首脳会談で米国大統領は“疲れ切ったお爺さん”的表情を見せたのか?

トランプ大統領が習近平国家主席に圧倒されたとの論評も少なくない、先日北京で行われた両首脳による会談。一体何がトランプ氏の気勢を削いでしまったのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、米中トップ会談の舞台裏や両国が持つ歴史観や時間軸の違いを分析。さらに日経新聞の連載記事の内容を引きつつ、超大国アメリカの衰退と中国の長期戦略について考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:超大国=米国の衰退ぶりを曝け出したトランプの北京訪問/「歴史のない国」特有の短絡心理では「歴史のある国」の10年・100年の中長期思考に負けるのは当然!

プロフィール高野孟たかのはじめ

1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

超大国=米国の衰退ぶりを曝け出したトランプの北京訪問/「歴史のない国」特有の短絡心理では「歴史のある国」の10年・100年の中長期思考に負けるのは当然!

5月14日の人民大会堂での会談、世界遺産「天壇」訪問、大会堂「金色大庁」夕食会、15日の中南海での茶会とワーキング・ランチの全日程を終えて習近平主席と並んで歩くトランプ大統領の姿は、俯き加減の渋い表情で何も言わず、いつものようにボタンを掛けないダブルの背広を下品に風にバタバタさせて、一言でいうと「疲れ切ったお爺さん」という感じで、何のオーラも発しないどころか、逆に深い徒労感を隠しきれずにいるようにさえ見えた。

それはそうだろう。2期目の就任から1年4カ月に打った施策と言えば全世界を相手取った関税攻撃とイランに対する凶暴な軍事攻撃。どちらも、華々しく始まったもののたちまち行き詰まり、修正、変更、縮小とウロウロを不様に繰り返した挙げ句、出口を見失って収拾がつかなくなっている点では全く同じで、その泥沼状態から脱するきっかけを訪中で掴みたかったのだろうが、そうは問屋が下さなかった。

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「歴史のない国」の悲哀

これを言ってしまうと身も蓋もなくなってしまうが、中国は夏王朝から数えても4,100年に及ぶ雄大な歴史を持ち、しかもその間、1840年アヘン戦争から1949年中華人民共和国成立までの100年余を例外として、何千年もの間インドと合わせて全世界のGDPの7~8割を占め続けてきた本物の大国であり、それに対して米国は今年7月4日に建国250年を迎える、世界史的に見れば全くの新参者の「歴史を持たない国」でしかない。

中国は、紀元前6世紀のアケメネス朝ペルシャ帝国に始まる2,600年の歴史を持つイランも同じだが、「歴史を持つ国」として当然、100年単位、短くても10年単位で物事を考えることが出来る。それに対し、米国や、古代イスラエル王国を別にすれば1948年の建国から80年も経っていないイスラエルは、長くて10年、トランプに至っては11月中間選挙までの6カ月間に何か目覚ましい成果を上げられないかという短絡的な心理しか持つことが出来ない。

事前にMAGA派の間に出回った予測というか希望的観測によれば、トランプは習近平からウクライナ戦争とイラン戦争の収拾について突っ込んだ議論をして協力を取り付け、北京からモスクワを電撃訪問するという密かなプランを抱いていて、これが成功すれば中間選挙の勝利間違いなしだという話だった。

真偽は不明だが、トランプがそのような妄想的な過剰期待を抱いていた可能性はないとは言い切れず、それで落ち込んで渋面を晒していたのかもしれない。「歴史のない国」の悲しさである。

私の勝手な想像では、トランプは夕食会が営まれた人民大会堂「金色大庁」の、確かに金色を多用してはいるけれども極めて洗練された豪華さを醸している様子(写真1)には胸を打たれたのではあるまいか。

トランプの金ピカ大好きは有名で、ホワイトハウスの執務室は安っぽい金色の置物や壁飾りで埋められていて(写真2)、これから300億ドルをかけて建設する予定の650人収容の東棟の大宴会場もかなり金ピカだが、品格において金色大庁に遥かに及ばない(写真3)。

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中南海という霊気漂う「謎の空間」

また、稲垣清『中南海/知られざる中国の中枢』(岩波新書、2015年刊)が言うように中南海は「謎の空間」とも呼ばれる深遠な静謐さの漂う空間で、私は1984年だったと思うが鄧穎超さん(周恩来夫人)の居宅・執務室を訪れた際に中に入ることが出来たが、やはり尋常でない気の流れを感じて身震いしたのだった。

中南海は12~13世紀の金朝の時代に皇帝の夏の離宮として造営が始まり、それから900年ほどの間、歴代王朝の権力中枢の血塗られた歴史を見てきた。こういう霊気立ち上る場所は米国にあるはずがなく、ここでもトランプは中国が持つ「歴史の重み」を直に体感したのではなかろうか。

そういうことも作用して、トランプはいつになく元気がなく、それどころかしょんぼりしているようにさえ見え、その結果、会談の結果は、日経新聞5月17日付で始まった連載「覇権の暗闇」第1回の見出しのように「すがるトランプ氏、突き放す習氏」という驚くべき様相を呈して終わった。

何が驚くべきか?「唯一超大国」を自認していた米国の大統領が恥も外聞もなく中国にすがりついて行ったというのに、習近平から突き放されてしまったが、その理由は中国が「この先、米国が衰弱していくと確信を持つに至ったからだ」と、同連載は言う。

これが今回の米中首脳会談の核心である。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2026年5月18日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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