先日掲載の「よく当たる占い師に学ぶ。他人を操る『人たらし』の心理テクニック」では、回りの人間からの注目度、関心度、期待値をアップさせる方法を紹介してくださった投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹兵輔さん。今回神樹さんは自身のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』で、認知バイアスを利用した人間関係を向上させる簡単な方法と、意中の異性に自分のことを好きになってもらえる裏技の使い方を解説しています。
【関連】よく当たる占い師に学ぶ。他人を操る「人たらし」の心理テクニック
ビジネスに役立つ! 認知バイアスで人を動かす方法!(第2弾)
ところで、唐突な質問ですが、勤め先や取引先との人間関係において、あなたは大切な存在として扱われているでしょうか。
考えてみたこともないな……という人も多いかと思いますが、自分が大事に遇されているかどうかは、人間関係形成の上でとても重要なポイントです。
人は誰でも、自尊心を持っています。
いつも軽んじられたり、否定的に扱われる状況が続くと、「どうせ私なんか」「自分はつまらない人間…」などと、マイナス方向にヤサぐれていきます。
そのうち、だんだんミスを気にしなくなったり、愚かな行動をとっても平気になっていくのです。
心理学ではこれを「ゴーレム効果」と呼んでいます。
人を誹謗するのは、もとよりよくないのですが、他人から軽んじられたり、否定的に扱われるモラハラに多く遭っている人は、次第に心に重大なダメージを引き起こすようになります。
自分を自分自身で尊重するだけでなく、他人からも尊重されるように、自己の人間性を培う努力をすることは、とても重要なことになります。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
適度な「レッテル貼り」で褒めるとよい人間関係に!
人間関係を向上させるには、礼儀正しく接する、感謝する、人を褒める──といったコミュニケーションが大事なのは言うまでもありません。
ただし、過ぎたるは及ばざるがごとしで、意識してやりすぎると別の結果も招きます。
たとえば、いつも誰かをほめている、讃えている──といった場合はどうでしょうか。
人はほめられすぎる──と増長し、評価者を小バカにするようにもなります。相手にもよりますが、その辺のさじ加減が難しいのです。
自分では友好的で立派な行為と思っていても、相手によってはやりすぎは禁物なのです。
それでも、褒め方や讃え方にひと工夫さえ凝らせば、けっしてそんな事態にも陥ることはありません。
よい褒め方、よい讃え方は、相手をベタ褒めするのではなく、「適度なレッテル張り」によってもたらされます。
適度なレッテル貼りなら、適切な人間関係も構築できるからです。これを「ラベリング効果」と呼んでいます。
つまり適度なレッテル貼りなら、よい意味でこちらの期待にも沿ってもらえるような人間にもなるからです。
部下からの仕事が早く上がってきた時には、「仕事が速いね」とタイミングよくほめてあげます。
すると、次第に、部下の仕事の効率がどんどん上がっていくでしょう。「仕事の早い山田くん」といったレッテルだからです。
同僚にパソコン操作を教えてもらう際には、「きみはパソコンの達人だものね」などと一言讃えておくと、パソコン操作で困った時には、いつでも頼みやすくなっていきます。
「パソコン達人の鈴木くん」といったレッテル だからです。
新婚当初は、奥さんの手料理がイマイチかもしれませんが、何か一品でも「これはうまいね」などとほめ続けていると、奥さんの料理の腕も上がっていきます。
「料理のうまいぼくの奥さん」といったレッテルだからです。
このように、同じレッテルを貼り続けてほめる「ラベリング効果」はよく知られていますが、なぜ、よい結果へとつながるのでしょうか。
それは、自尊心がくすぐられて快感──ということもありますが、「よい人物像」のレッテルを貼られると、その人物像を継続して演じたいという「一貫性の原理」がはたらくからです。
一貫性の原理とは、最初に示した態度を一貫させたい──という人間の習性です。
最初にYESと答えると、次々YESの肯定的態度をとりたくなり、反対に最初にNOを打ち出してしまうと、NOという否定的態度を取り続けたくなることをいいます。
人はこういう習性に支配されているのです。
自分の思想や行動は、一貫性をもっているほうが、社会的な信頼度も高くなる──といった暗黙知もはたらくからでしょう。
つまり、誰かによいイメージのレッテルを貼られると、つねにそういうよいイメージの人物像を演じて、レッテル通りに対応したくなるのが人間なのです。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
「ピグマリオン効果」もはたらき、期待に沿うべく行動する!
これは、「ピグマリオン効果」とも呼ばれる現象でも説明されています。
ピグマリオンとは、ギリシャ神話に登場するキプロス王のことですが、この人は自分で彫った、理想の女性像に恋をしてしまいます。
あまりにも彫像に熱中するピグマリオンの姿を哀れんだ「愛と美と性」の女神アフロディーテは、やがてピグマリオンのひたむきさに同情し、ついにはその彫像を人間に換えてあげた──という物語による「心理効果」なのです。
彫像に心を奪われたピグマリオンが、「これが人間だったら、どんなに素晴らしいだろう」と思い描く「期待」が強ければ強いほど、このように期待通りの結果が得られるようにもなる──というわけです。
ある教師が新しく教えるクラスについて、「このクラスの生徒は非常に優秀な者ばかりが揃っているよ」などと、ウソの情報を与えられた場合に、次第に他のクラスよりも著しく成績が上がった──といった心理学の効果実験もあります。
教師が無意識のうちに、生徒たちに「期待」をかけていたことによって、その思いが反映された結果──と推定されたのです。
このことより、「ピグマリオン効果」は、「教師期待効果」とも呼ばれることがあります。
さらに大きな期待をかけ、反応を向上させて実現させる方法!
ゆえに、職場の同僚や取引先の担当者に、「いつもご親切にありがとうございます」などと感謝を伝えていると、よい結果がもたらされる──ということは、容易に想像できるでしょう。
そうなのです。
やがて、相手が自分に対し、「つねに親切に対応してくれる」ようにもなるわけです。これはとても効果的な反応なのです。
ゆえに、日頃からこういう言葉を口にしていることのメリットは大きいのです。
それでは、こうした人たちへ、こちらの要求水準をもう一段アップさせたい時には、どうすればよいのでしょうか。
それには、相手のよいレッテルを明示しながら、「だけど、〇〇の場合は、さすがのきみでも無理だよね?」などと、ほんの少し見くびるような質問を付け加えればよいだけです。
「きみは仕事が速いけど、さすがに〇〇の案件だと、時間がかかるよな?」
「きみはパソコン操作の達人だけど、こういったケースの操作は難しいよね?」
「きみは料理が上手だけど、あと一品、中華風総菜を増やすのは無理かな?」
こんな言い方をされると、言われたほうは、ちょっぴり反発心が湧くでしょう。
すると、「いやいや、そんなの大丈夫」とばかりに請け合ってくれるようにもなるはずです。
これも、「一貫性の原理」に背中を押されるからです。
よいレッテルを貼られている手前、OKしないと沽券に関わるからです。
もちろん、希望通りにワンランクアップの要求が満たされたなら、大いに感激し、激賞してあげることを忘れないようにしましょう。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
「単純接触効果」で「他人が自分のことを好きになる」よう仕向けられる!
もうひとつ、人間関係を向上させる「認知バイアス」を利用した心理テクニックも見ておきましょう。
米国の心理学者で、コミュニケーションの要諦を説いて名高いのがロバート・ザイアンスです。
「単純接触の原理」を中心とした「ザイアンスの法則」は次の通りですが、これはぜひ覚えておきたい法則なのです。
- 人は、知らない人には、攻撃的、批判的、冷淡に接する
- 人は、会えば会うほど好意をもつ
- 人は、相手の人間的側面を知った時、より強い好意をもつ
2.の「人は会えば会うほど好意をもつ」というのが、「単純接触の原理」ですが、これには重要な条件があります。
「嫌われない限り」という前提付きなのです。
嫌いな人に何度も会うのは苦痛ですし、それが繰り返されるのは耐え難いからです。
街中に張り巡らされる選挙用ポスターなどでも、好感をもつのもあれば、不快に感じるものもあるでしょう。
この法則は、対人関係以外にも当てはまります。
テレビやネットで何度も流れる商品は、いつのまにか親しみを覚え、スーパーなどの棚で見つけると、つい買ってしまいます。
寒い冬場になるとインスタントラーメンのおいしそうなCMがやたらと流れるのも、この効果を狙っているのです。
あなたが意中の人と自然な形で親しくなりたい時、この「単純接触効果」は、お手頃で、おすすめの「認知バイアス」のテクニックとなります。
「単純接触」とは、接触時間の「長さ」ではなく「回数や頻度」です。一度に長い時間をかけた接触より、何度もこまめに会うという「接触頻度」がモノをいいます。
近づきたい人がいる場所に、何かと用を作り、頻繁に顔出しすればよいだけなのです。
犬の散歩でよく出会う人たちとは、自然に心の距離も縮まっていくことでしょう。
その要領を思い浮かべて実行してみることです。
愛想よく、ペコッと会釈する、「こんにちは」と軽く声かけする。
これを繰り返していけば、よいだけです。
やがて、お互いの警戒心が薄れ、気の利いた挨拶を交わしたり、少し雑談が出来る感じになっていけたら、しめたものでしょう。
ただし、ここまできたとしても、まだ「親しい顔見知り」の関係にすぎません。
「馴化作用」でモテモテ人間に変身する!
意中の人が異性なら、もう一歩進展させて、デートに誘えるようにもなりたいでしょう。
しかし、それには相当勇気がいる──と思われるかもしれませんが、心配はいりません。
とりあえず、何とも思っていない異性を片っ端からデートに誘い、予行演習を繰り返せばよいだけだからです。
要は練習あるのみなのです。
何とも思っていない異性になら、臆することなく「今晩、飲みに付き合ってくれない?」などと言えるでしょう。
大事なことは、自然体で振る舞えることなのです。
「初デート」で玉砕する人が多いのは、好きな相手に接すると意識しすぎて、言動がぎくしゃくし、相手からつまらない人間、変な人──などと思われてしまうからです。
とにかく、異性に慣れておけば、デートに誘うことなど、どうってことはなくなるのです。
これが、「馴化(じゅんか)」と呼ばれる認知バイアスなのです。
「慣れること」が重要なのです。
世間には、「モテる男」も「モテる女」もいます。
モテるのは異性に対して「自然体で振る舞いながらも、好意をアピールするのに慣れている人」たちだからなのです。
意識せずにすむ、そこら中にいる異性に声をかけ、モテる人を目指してデートに誘う練習をしていきましょう。
「単純接触の原理」を効果的にするのは、あなたの練習度合いにかかっているのです。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com