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「教員という職業が不人気になったから教員不足」という大嘘。現役小学校教師が“実態”を解説

前回の記事で教員不足について触れたメルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』。著者で現役小学校教師の松尾英明さんは、本当に教員のなり手がいないのか?という疑問にメスを入れています。

本当に教員のなり手はいないのか?

教員不足問題について。

各地で学校教員の数が不足している。これは事実であり、間違いない。学校はここ最近、慢性的な人手不足である。

大量採用の世代が一気に退職していることが理由の一つ。これに伴い、管理職不足を起こしている自治体もある。管理職はほとんどが上の世代であり、未経験でいきなり入れるポジションではないので、これは当然である。

団塊世代の大量退職により、教諭も足りていない。次のデータを見て見る。

【R4学校教員統計】中間報告公表について(文科省H.P.)

小学校教員の平均年齢は平成の半ば過ぎから現在の42.1歳まで常に下がり続けている。しかしながら、この「平均年齢」前後の教員の絶対数は、全ての中で最も少ない。つまりは、数としてが多いのが20代と60代というように、大きく割れている状態である。統計学的に表すと「標準偏差が大きい」という、平均値から大きく分散した状態である。平均値があまり当てにならない状態ともいえる。特に規模の大きな学校については、20代の若手が構成の中心である。ここは団塊の世代が定年により大量退職されるので、大量採用したいという単純な話である。

さらに諸々の理由により、教員定数を今まで以上に多く確保する必要が出ている。だから、採用数の方が多くなり続け、倍率は下がっているという構造である。

教員のなり手自体がいないのではなく、確実にいるのである。教育学部に行けば、熱い教員希望者はしっかりと存在する。教育学部でも教員にならない人が増えた理由は、そもそもの入学時の動機の違いも大きいと思われる。大学に入るのが「普通」の時代で、希望する大学名で入ったのがたまたま教育学部、というのは珍しくない。「実習単位だけ欲しい」という学生が一定数いるのも至極当然の流れである。そんな人の中にも、実習を通して教員になろうと変わる人もいるから面白いのである。

ただ、急に必要な数が多すぎる。何年もがんばって受け続けていた人が、これまでより多く受かっていくということである。これを続けている内に受験者が前より不足し始めるのは至極当然の流れである。

困るのは、これで「教員不人気」の誤ったイメージが流布することである。「なりたい人がなりやすくなった」というのが実際であり、言うなれば波が来ており、チャンスである。この誤ったイメージは、採用側にとって確実に不利益である。そして、現場教員のモチベーションにも悪影響である。

小中学校の段階の子どもたちを見ても、教師になりたいという子どもは一定数いる。私の経験上、どの学年であっても「将来先生に」という子どもが一人もいなかったという年はない(自慢のように誤解されそうなのできちんと伝えるが、私が担任する前から既にそうなのである)。35人学級に1人いると考えると、全体の3%弱である。かなりの割合である。

大切なのは、ニュースやSNSによる単なるイメージに過ぎないことを、事実として捉えないことである。教員という職業が不人気になったのではない。必要数が多すぎて、数が足りていないのである。ここは是非強調したいところである。

楽な仕事とは当然言わないが、世の中に元々楽な仕事なんてない。仕事をする側に立つ以上、誰も楽しませてはくれないのだから、大変な中にやり甲斐を見出すしかない。何かをしてもらう側の楽しみと、何かをする側の楽しさは、異質である。全ての主体は、自分である。主体性は、子ども以上に、働く大人にこそ必要である。

不親切教師のススメ』では、ここを強調している。先生がやりすぎて疲弊していてはダメなのである。教室の学びの主体は子どもなのである。こちらが主体性をもつべき点は、子どものお世話活動ではない。子どもの成長にとって何が最も大切であるかを見極め、必要なことをし、余計なことをしない。

「先生になりたい」という願いをもつ人たちが、今後も希望をもてるような仕事をしていきたい。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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