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コロナ感染で気づいた活動の力、“情報共有”というテクノロジーの福音

コロナ化により、直接コミュニケーションが必須と思われてきた福祉や支援の現場に否応なしに持ち込まれた“オンライン”でのコミュニケーション。副産物的につながり辛かった関係者間で多くの情報が共有され、次の一歩を踏み出す力になっているようです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で著者の引地達也さんは、コロナに感染して改めて感じた「障がい者の学び」を支援する活動への思いを綴ります。引地さんは、新たな道を切り開くには「やってみる」を原点とする“成長のマインドセット”が必要と伝え、「学び」による「当事者の成長」を社会と共有していきたいと考えています。

コロナになって気付くこと、「成長」を信じて創発する力

健康が取り柄だった私もとうとう新型コロナウイルスに罹患した。次の日からの講演等の出張が連続していたある日、体のだるさを感じながらも、夏の疲れがたまっているのだろう、ぐらいに思い、その日も日課のランニングコースを走り切った。いつもならこれで体がすっきりと万全なはすだが仕事中もそのだるさは抜けきらなかった。

出張先に安心してもらうためコロナ陰性の証明だけはとっておこうと、診断を受けたら、医師から当たりくじのように陽性の検査結果を示された。あっけなく「僕は大丈夫」神話は崩れ去った。

人体は儚く脆いからいつもケアが必要で、大丈夫ではないことを念頭にすることから、今従事する福祉領域の仕事は始まるのだが、自分だけは大丈夫、などと考えていたのは、やはり驕りだった。そんな反省をしながら、罹患中にもいくつかのオンラインでの会合に参加できたのは、便利という福音なのか、呪縛なのか、罹患中だからこそ抱く思いはもう少し冷静に考えたいと思う。

罹患中に参加したのが名古屋で開催された「全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会」(全専研)の実践研修講座である。全国で障がい者への学びを実践している団体がコロナ禍によって失ったものや得たものを議論する内容で、私も講義や討議コメントなどが予定されていたから、結局オンラインで参加することになった。

この数年、障がい者の学びを実践しながら常に考えてきたことは、学びの可能性を信じる力で動く支援者の思いと行動、そして学びで成長をみせる当事者の実態をどのように社会と共有できるかである。共有に向けた「伝道師」としても、今回集った方々と時間を共にし、考えていくのは重要だ。

それぞれが現場で働きながら感じること、発見することをまた教えてもらうのもありがたい。そんな気持ちでの参加だから、罹患しつつもアドレナリンが出ていたのか、会の最中は何とか集中して乗り切ることが出来た。

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私の話では、この障がい者の学びの分野は、新しい道を切り開くマインドが必要との認識から、先に開催された東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センターでの講義を引用して、新しい学びを考えていく上での「成長のマインドセット」を提案した。

それは「フィックスド・マインドセット」(Fixed Mindset)と「グロウス・マインドセット」(Growth Mindset)の比較から示すとわかりやすい。

凝り固まって柔軟性のないマインドセットの状態をフィックスドといい、それはこんな気持ちに支配されてしまうことをいう。「どうせできない」「失敗したくない」「どうやっていいか分からない」「やったことがない」。新しいことに対する最初の反応として、多くの方が抱く不安でもあるが、何かを乗り越えるためにはこれらの気持ちは障害である。

これに対し、新しい事に対して常に「成長」のキーワードを持ち続けていれば、これらの言葉はがらりと変わってくる。それが「失敗から学ぼう」「挑戦してみて分かることがある」「努力し続けることができる」「全力を尽くしてみよう」などのマインドである。

新型コロナウイルスの試練を乗り越え、私たちが新しい時代を切り開いていると自覚する時、きっとこのマインドは必然的に機能しているはずだ。

今回、「コロナ禍を受けて」とのテーマでのシンポジウムで紹介したのも、社会状況が激変する中でも、私たちはそれをさらに発展的に乗り越えていくために、新しい学びを追究するために、常に成長マインドが支ええてくれることに自覚的になるべきだと考えたからである。

加えて、障がい者の生涯学習の可能性を追究し実践する方々は、各地域でその新しい考えや取り組みゆえに既存の枠組みからの疎外感を感じることも少なくない。それを共に切り開いていける共通のマインドが「やってみる」ことが原点であり、社会が持つ創発性を喚起できることを確認したかったのもある。やはり、テクノロジーの便利さは福音と受け止め、新しい発見に向けて挑んでいこうと思う。

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image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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