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北朝鮮と中国の常套手段。恫喝・脅迫はしても絶対に戦争はしないワケ

中国の習近平国家主席が「戦争を引き起こすのではないか」と以前からささやかれていますが、果たしてそれは実現可能なことなのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、中国の現在と戦争について詳しく語っています。

恫喝すれど戦わず

こんにちは。

私は、現在の中国は戦争ができる状況ではなく、また、将来も経済が下落する以上、戦争はできないと考えています。というか、そもそも人民解放軍が戦う相手は国内の反政府勢力であり、他国の軍隊ではないと思うのです。

一部では、習近平主席の狂気が戦争を引き起こすのではないか、という意見もあります。しかし、そうなれば、軍事クーデターが起きるのではないでしょうか。その方が軍人が生き残る可能性は高いのです。

ということで、恫喝はあっても、戦争はない。あるいは、彼らの戦争とは恫喝であるというお話をしたいと思います。

1.北朝鮮の恫喝外交

日本は常に米国を見てきた。米国は、世界一の軍事大国であり、世界一の経済大国である。その米国に追随することが、日本の安全保障政策の基本となっている。長いものには巻かれ、強いものには従うという戦略である。

しかし、日本とは全く異なる戦略を用いる国もある。たとえば、北朝鮮だ。

北朝鮮は小国である。周囲にはロシアと中国、そして日本がいる。その環境の中で、北朝鮮は生き残りを必死に考えている。

彼らの基本戦略は、大国への追随ではなく恫喝だ。周辺国に対して恫喝を続けることで、存在感をアピールし、侵略されないように防衛している。

北朝鮮は、実際に戦うことはしない。戦っても勝てないことは知っている。だから、恫喝を行う。北朝鮮の軍事パレードもミサイル発射も恫喝が目的である。核を保有したことで、ますます恫喝が効果的になっている。

恫喝だけでは戦争にはならない。もし、他国が攻撃してきたら、国際世論に訴え、被害者としての権利を主張する。攻撃してきた国と対立する国に助けを求めることで、国際的な発言権を得ることができる。

ある意味で、綱渡りのような戦略だが、北朝鮮は辛抱強くそれを続けている。

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2.中国の軍備は恫喝の道具

1990年代に中国の最高指導者、トウ小平は韜光養晦、「才能を隠して、内に力を蓄える」という方針を打ち出した。当時、中国は89年の天安門事件で孤立しており、爪を隠して国際社会での存在空間を広げつつ、経済力もつける必要に迫られていたからだ。

2011年に中国のGDPは日本を追い抜き、世界第2位になった。その翌年の2012年、習近平は党総書記となった。

2017年に2期目となると、共産原理主義ともいえる思想を隠さなくなった。党規約に「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」(習近平思想)を明記させ、企業には共産党組織を設置した。この段階で改革開放は完全に否定された。

2016年にトランプ大統領が誕生すると、米中貿易摩擦が表面化し、そこに新疆ウイグルの人権弾圧問題が加わった。

更に、中国のゼロコロナ政策により、外資企業の撤退、中国輸出企業の倒産が増えた。

また、中国の不動産バブルが崩壊し、不動産開発企業の淘汰だけでなく、地方政府、金融機関の財政破綻にも波及している。

中国の軍事費は、経済成長と共に増加し、22年の国防予算は1兆4500億元超(約30兆円)で、日本の22年度防衛予算(約5兆4005億円)の5倍以上に達している。来れば経済の衰退に伴い、どのように推移するかは不明だ。

習近平政権は「強軍」実現を目指しており、空母の整備や東・南シナ海での活動を活発化している。そして、習近平政権は、事あるごとに台湾統一を強く主張している。

しかし、中国の行動を見ていると、北朝鮮と同様、恫喝や挑発に終始している。空母も原子力潜水艦も性能が低く、何度もトラブルを起こしている。

更に、習近平政権は完全に軍を掌握しておらず、現在は、軍幹部の粛清の最中である。同時に、習近平自身への暗殺やクーデターの不安も払拭できていない。こんな状況で、軍を派遣することはできないだろう。

習近平政権ができることは恫喝である。日本や台湾への恫喝を繰り返すことにより、中国に対する不安を増殖させることが狙いだ。もちろん、核恫喝も行うだろう。

同時に、政治工作や情報工作により、台湾国内に親中政権を誕生させ、平和的な支配をも目指している。日本に対しても、一方で恫喝を続けながら、一方で中国市場の可能性を訴求するなど、硬軟織りまぜた情報戦略で揺さぶりをかけている。

中国は、今後も日本領海付近で軍艦や海警船による恫喝を続けるだろうし、領空侵犯による恫喝を続けるだろう。中国に駐在している日本人をスパイ容疑で拘留したり、日本企業の資産を凍結するだろう。日本政府は日本企業は、こうした事態への対応について、十分に検討しておく必要がある。

中国は、台湾に対しても恫喝戦略を続けるはずだ。仮に台湾侵攻を実行したとしても、離島の占領等に留まり、その成果を派手に宣伝するだろう。

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3.戦争で利益をあげる勢力

戦争には莫大な戦費がかかる。そして、多大な犠牲や被害を被る。従って、簡単に戦争は始まらない。戦争が始まるのは、戦争により莫大な利益が期待できる勢力が存在することが条件だ。そして、様々な工作を仕掛けて戦争に追い込んでいく。しかし、我々が戦争の真実を知るのは、戦争終了後である。それまでは、マスコミが発表する公式見解を信じるしかないのだ。

中国や北朝鮮の脅威を煽ることで、日本や台湾が軍備を増強すれば、米国の軍需産業は潤う。また、軍そのものも不安を煽ることで予算が増える。

従って、北朝鮮や中国の恫喝行為は、米国軍需産業や米軍、台湾軍、自衛隊にとっても必ずしも悪いことではないだろう。

世界では、恫喝、挑発、脅迫が常態化している国もある。しかし、日本は恫喝になれていない。だから、恫喝が常態化するとストレスが溜まる。そうなると暴発するのは日本かもしれない。

恫喝する側は、単なる恫喝に過ぎないと割り切れる。しかし、恫喝される方は、本当に殺されるのではないかと、恐怖を感じてしまう。これが中国の狙いである。

難しいことだが、相手の狙いを読み切り、恫喝には反応せず、挑発に乗らないことだ。そして、平常心で淡々と対応する。それには、真の強さが求められるのかもしれない。

編集後記「締めの都々逸」

「差別しないで 刺激もせずに 自己を鍛えて 生きていく」

中国の経済成長は、目先の利益を追求することで達成されました。基本的な技術開発や専門的人材育成は時間が掛かるので、技術も人材も金で買った方が早いという考え方です。

多分、軍備も同様でしょう。とりあえず、周辺の国々を恫喝するために、数だけを揃える。多分、手抜き作業で作られた兵器は、不良も多いし、トラブルも多い。艦船や飛行機についても、訓練やメンテナンスが不十分だと思います。恫喝程度なら機能しても、集団で緻密な作戦を遂行することはできないと思います。

恫喝されたらユーモアで返す。言われっぱなしも駄目だし、切れてしまうのも駄目です。常に冷静に大人の対応をする。そうすれば、相手がイライラするはずです。そんな心理戦が必要だと思います。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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