一時は倒産の危機が囁かれるも見事な復活劇を演じ、再び世界的企業へと返り咲いたソニー。そんなソニーが2026年度までに、全社で顧客IDを統一することが大きく報じられました。その狙いはどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』ではMBAホルダーの理央 周さんが、ソニーがかなりの資金と時間をかけてまで顧客IDを一元化する理由を考察。その上で、顧客のニーズが多様化している市場において重要な「CRM」と呼ばれるマネジメント手法について解説しています。
なぜソニーは経営資源を投資して、顧客IDを統一するのか?~ソニーグループに学ぶCRMの重要性
ソニーグループが、顧客IDを統一する、というニュースが、日本経済新聞に出ていました(以下 2023年9月20日の記事より引用)。
ソニーグループは2026年度までに、全社で顧客IDを統一する。ゲームやエレクトロニクスといった、事業会社や製品群ごとに異なっていたIDを、1つにする。個々の顧客の利用実態に応じて販売促進策を打ち、サービスの改善に役立てる。世界で1億人以上の顧客情報から、事業を超えた連携の促進や、収益機会の深掘りにつなげる。
この記事によると、ゲームやエレクトロニクスなど、ソニーグループが手がける消費者向け各事業が、それぞれバラバラに保有していた顧客情報を、顧客ごとにまとめてIDを振り、それぞれ一元管理する、ということなのです。
記事によると、2026年までかけて行い、総数が1億人を超える、とのことです。
ここまでやるとなると、かなりの資金や時間、手間がかかると思われます。それでも敢えて顧客IDを統合するのか?
今回はソニーが顧客IDを統一した理由と、CRM(顧客関係性のマネジメント)の重要性に、焦点を当てて考えていきましょう。
今回ソニーでは、顧客IDを統一することで、一人一人の顧客を総合的に理解して、よりパーソナライズされたサービスを提供したい、と考えているでしょう。
顧客IDを管理し活用することは、企業にとって、以下のようなメリットがあります。
- 個々の顧客の理解が深まる
- マーケティング活動の効果測定が容易
- 顧客サービスの品質向上
- クロスセル、アップセルの機会拡大
- データの一元管理で効率アップ
顧客との長期的な関係を築くことは、成功するビジネスの鍵です。
このような考え方で事業をマネジメントすることを、CRM(顧客関係性のマネジメント)といいます。
CRMとは、顧客との良い関係を築き、維持するための戦略とその手法です。
ここで注意したいのは、CRMはソフトウエアやアプリ、SaaSの名称ではなく、重要な事業戦略の1つである、ということです。
顧客との関係性をマネジメントすることで、顧客と長期的な関係を構築できると、企業は、以下のようなことを望めます。
- 売上アップ:良い関係性でリピート購入を促す
- 顧客満足:サービス向上で口コミが広がる
- データ収集:顧客の購買履歴などを元に新たな販売戦略を考える
- コスト削減:長期的な顧客関係で、新規顧客獲得のコストが減る
- ブランド力強化:顧客との継続的なコミュニケーションでブランドイメージが向上
市場は、私たちが考えているよりも、速く激しく変化しています。
それにともなって、顧客のニーズも多様化しているのです。
先進的なマーケティング企業は、この市場と顧客の変化に素早く対応し、打ち手を打っています。
顧客ごとの、高度なパーソナライズが、求められる市場環境になっているのです。
このような背景の中で、顧客を理解し、その期待を超える最適な一手を打つことが、ますます重要になっています。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
一方で、CRMを事業として行う上で、事前に留意する点もあります。たとえば、
- 顧客データの管理:漏洩や誤用を防ぐ
- スタッフ教育:CRMツールだけではなく、人的要素も大切
- 無駄なアプローチ:顧客のニーズを考慮しないと、嫌がられる
- 短期的な結果ばかりを求めない:長期的な戦略が必要
といった具合です。
なぜそのような問題があるのでしょうか?
それは、多くの企業では、複数のプラットフォームを運営しているため、それぞれで分散されたデータを、保有していることが挙げられます。
今回ソニーがIDを統一する主な理由は、顧客データを一元化し、それによって顧客一人一人に合わせた、きめ細かいサービスや製品を、提供しようとしているのでしょう。
このようにして、顧客満足度を高め、長期的な関係を築く、そのためには、経営資源を投資しても、長い目で回収できる、とふんだのでしょう。
CRMと顧客IDの統一は、今日のビジネスで無視できない要素です。
正しく管理と活用をすることで、顧客満足度を高め、ビジネスを成長させることができるからです。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
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