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韓国の常識が崩れた。エリートスポーツでも日本に負ける理由とは?

韓国国内で定説だった「エリートスポーツは日本より韓国が強い」という言葉。いまや日本のほうが強くなってしまい、常識が崩れました。今回、無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、なぜ日本はエリートスポーツでも強国となれたのか、専門家の話とともに詳しく語っています。

ツナグ文化が日本の強み

韓国国内で「エリートスポーツ(国家代表級)は韓国、生活スポーツは日本が強い」という言葉が通用していたことがあった。しかしこの常識が崩れた。現時点で日本はエリートスポーツも韓国より強い。

野球とサッカー、バスケットボール・バレーボール(男女)の4大スポーツいずれも日本が韓国より世界ランキングが高い。特に、10年前までは一枚下だった男女バスケットボールでさえ日本が上だ。日本は陸上短距離などアジア選手には「壁」のように感じられた種目でもオリンピックメダルを獲得するなど底力を見せている。

生活スポーツ強国の日本は、どうしてエリートスポーツも強国になったのだろうか。国家代表選手たちの競技力向上の責任を負う日本体育界のリーダーたちに秘訣を直接聞いてみた。

彼らは、

1.前任者が立てた計画を簡単に覆さない文化

2.弱点を「顕微鏡分析」して補完するピンセット支援

3.成人代表チーム戦略を幼少年チームにも移植する協力システム

4.国家代表選手たちの心構え

などを挙げた。このような内容は危機のK(韓国)スポーツに与えるヒントでもある。

1.計画は100年単位、目標は世界制覇……ハッタリに聞こえない理由

「日本はもともと水泳リレーや陸上リレーなどリレーに強いです。自分の区間で最善を尽くして、次の走者にしっかりバトンを渡すことを重視する。長期計画も空念仏ではありません。」

日本代表の競技力向上を総括する笠原健二日本オリンピック委員会(JOC)強化部長は先月17日、東京のJOC事務所で韓国日報と会い、自信を持ってこう話した。「日本はなぜ超長期目標を立てるのか」という質問に答えた。東亜日報の質問には、「委員会や協会指導部が変われば、どうせ壊れる計画を示す形で出すのではないか」という疑問があった 。日本サッカーの「100年構想」やJOCの「ビジョン2064」などが代表的だ。しかし笠原部長は断固としていた。「日本は本当に実現する強い気持ちで100年単位の計画を出した」ということだ。

実際、日本サッカーが強くなった歴史を見れば笠原部長のことばがハッタリでないことはすぐわかる。日本サッカー協会(JFA)は1993年のJリーグ発足当時、「100年以内に世界を制覇する戦力を作る」と100年構想を打ち出した。2005年には「2050年に日本でワールドカップを開催し優勝する」という「ジャパンスウェイ」(Japan’s way・日本の道)ビジョンも発表した。5年または15年単位の細部計画も準備される。当面の成績の代わりに遠い未来を見据えた根本的な解決策をまとめ、遠大な目標を達成するということだ。

日本は徐々に水準を高めている。Jリーグ研修経験のある大韓サッカー協会のパク・グァンウォン元理事は「JFAは長期計画によって若い選手が少しでも可能性を見せても海外に送る」とし「日本代表の主力を見ればほとんど海外派だが、彼らを効果的に訓練させるためにドイツにクラブハウスを作る計画もある」と伝えた。

成果もはっきりしている。昨年カタールW杯で世界最強のドイツとスペインを破り、「死の組」で生き残った。田島幸三JFA会長は16強進出に成功した後「JFA会長が変わってもジャパンスウェイはまっすぐ行かなければならない」と強調した。

日本のスポーツはリレー種目に強い。水泳のリレーや陸上のリレーでオリンピックメダルを取った経験がある。幼い頃からリレー種目をたくさん練習しているうえ、特有の「つなぐ」文化の影響もありそうだ。2016年ブラジルリオデジャネイロ五輪で、日本陸上400メートル男子リレーチームが銀メダルを取ったのには驚いた。

専門家らは、日本が超長期計画を立てることができるのは、ツナグ文化のおかげだと語る。笠原部長は「日本人は今すぐでなくても『いつかは成果が出る』という考えで計画を継続することを大切にする」として「時代が変われば細部計画は少し変わることもありうるが、共に悩んで立てたビジョン自体は変えない」と話した。1964年東京オリンピック100周年になる2064年までにスポーツを通じて個人の成長と国家の発展、世界平和に貢献するという計画を盛り込んだ「ビジョン2064」も十分な社会的議論を経て作られたものだ。

ハン・ミン文化心理学者は「日本社会は『すべての人が決まった役割を果たさなければならない』という認識が強く、直ちにお金にならなくても継続投資する」とし「ノーベル賞受賞者20人余りを輩出したのも投資と研究が150年近く蓄積された結果」と説明した。日本の中小企業の研究職職員がたびたびノーベル賞を受賞する理由も、直ちに成果がなくても研究をあきらめないツナグ文化のおかげだという評価だ。

2.ディテールの力……「弱点のリバウンド確率を高めるために心の姿勢まで練習」

日本特有の細かさもスポーツ強国になった秘訣だ。特に、最近10年間飛躍的に成長したバスケットボールが「顕微鏡分析」のおかげを十分に受けた。日本はもともと「教科書のようなバスケットボールをする」という評価を受けていた。型にはまったプレーのせいで予測が容易だという酷評だった。

しかし、最近は変わった。韓国など相手は「日本選手が創意的に動いて阻止するのは難しい」と吐露する。東野智也日本バスケットボール協会(JBA)競技委員長は「2016年にJBAにテクニカルハウス(技術発展部)を設立し競技力が高まった」と話した。テクニカルハウスはバスケットボールワールドカップとオリンピック、アジアで開かれるすべての大会が終わる度に日本チームの競技内容を評価し、強・弱点を分析して技術報告書を作る。KBSNスポーツバスケットボールのソン・デボム解説委員は「JBA報告書を見たことがあるが、非常に具体的に補完する点を書いてあって驚いた」と話した。

実際、日本女子バスケットボール代表チームは2016年ブラジル・リオデジャネイロ五輪当時、ベスト8に進出したが、攻撃リバウンドでは弱い姿を見せた。東野委員長は「リバウンド確率を高められる位置選定法などを提示し、これを身につけるためのトレーニング方法と試合時に気を使わなければならない点、リバウンド状況で念頭に置くべき考え方まで報告書に書いた」と話した。努力は実る。2020東京オリンピックで代表チームの攻撃リバウンドが大きく向上し、銀メダルを獲得した。

3.「地域ユースチームも国家代表チームの戦略を理解しなければならない」

世界制覇を目指すため、日本には現在より未来がもっと重要だ。日本体育界はこのため、各地域のユースチームのコーチと選手たちがどのような努力をすべきかを提示する。

東野委員長は「五輪とバスケットボールワールドカップ技術報告書は、JBA指導者資格証所持者なら誰でも見ることができる」と話した。各ユースチームは個性を身につけようと努力もするが、日本に最もふさわしい戦略を理解しようと努める。

大阪郡栄女子学院バスケットボール部の安藤香織監督(46)は「日本女子バスケットボールリーグ(WJBL)などの研修を受ける際、『背の高くない日本バスケットボールが世界の強豪チームに勝つためにはスピードと得点効率を高めることが重要だ』と強調する」と話した。実際、幼少年の指導者たちはこのような助言を訓練の時に適用する。

サッカーなど他の種目も同じだ。JFAは47都道府県部(韓国の広域市・道の概念)に担当インストラクターを配置し、これらを通じて地域コーチに戦術別訓練方式などを伝える。

若い選手たちが「最高になりたい」という気持ちを持つように動機づけもする。日本文部科学省の東京オリンピックプロジェクトに参加した筑波大学体育科の洪性燦(ホン・ソンチャン、47)教授は、「日本では種目別有望株を休みの時に集め、東京のナショナルトレーニングセンター(NTC・国立選手村)で合宿訓練を受けさせる」とし「成人スター級選手もわざと同じ場所で訓練を受けるようにしているが憧れてきた選手がすぐそばで練習するのを見ると刺激を受ける」と話した。

学生選手が勉強を怠らないようにすることにも気を使う。日本国立スポーツ科学センター(JISS)の久留武所長は「6種目の最精鋭幼少年選手30人がNTCでよく訓練をしているが、彼らが近隣の中学校や高校に通うことができるようにする」とし「国立施設で訓練しながら勉強も並行できるので大学もよく進学する」と話した。

4.「スポーツ選手が子供たちの尊敬を受けなければ……人柄が重要」

JOCの競技力強化本部スローガンが「人間力(人格と魅力)なしには競技力向上もない」という点も目を引く。日本スポーツの全盛期が短く終わらないためには、国家代表級の選手が立派な存在と映ることが重要だという意味だ。笠原部長は「子供たちが運動選手たちを見て『私もスポーツに挑戦してみたい』という気持ちにさせるべきだ。憧れの的にならなければならないということだ」と話した。

日本のスポーツ選手たちが2010年代に入って、スポーツを通じてどのように社会貢献できるか悩み始めたことも、国際大会の競技力が高まった理由として挙げられる。韓日スポーツを取材してきた大島洋(作家、62)は、「日本の選手たちは2011年の東日本大震災という悲劇に直面し、『私がスポーツをする理由は何か』と考えるようになった」と評価した。スポーツを通じて国民に感動と希望を与えることが使命だと考えるようになった選手が多くなったという話だ。

大島作家は「韓国通貨危機当時、野球の朴賛浩とゴルフの朴セリが韓国人に希望を与えたのと同じだ」と付け加えた。実際、東日本の岩手県出身の「野球スター」大谷翔平(29、LAエンゼルス)は「大震災前までは自分のために野球をしていたとするなら、災害後は社会に貢献する方法も考えながら運動するようになっている」と話した。

(韓国日報ベース)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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