多くの経営者たちが参考にしている稲盛和夫氏の経営論。今回、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者土井英司さんは、稲盛氏の講演録をベースにしてまとめた一冊を紹介しています。
【稲盛和夫の講演録。】⇒『経営 稲盛和夫、原点を語る』
稲盛ライブラリー+ダイヤモンド社「稲盛和夫経営講演選集」共同チーム・著 ダイヤモンド社
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、故・稲盛和夫氏の膨大な講演録をベースにした『稲盛和夫経営講演選集』全6巻のなかから、稲盛経営論の原点ともいうべき中核的な講演を抽出し、まとめた一冊。
売上400億円の頃の講演に始まり、700億円、4500億円、1兆円、4兆円と、規模が拡大していくにあたって、著者が何を語っていたのか、その経営哲学がわかる、興味深い講演録です。
なぜ高収益でなければならないのか、売上最大、経費最小を実践するために経営者がどう数字と向き合うべきか、リーダーのための自己修養、アメーバ経営と京セラ会計学…。
これまでさまざまな本で語られてきた稲盛経営学の集大成とも言える内容で、稲盛ファンはおさらいするのにピッタリの内容だと思います。
講演録ということで、内容の重複や冗長なところが見られるのが難点ですが、要領よくまとめられた書籍と異なり、行間に氏の本音が垣間見えるのが、本書の醍醐味だと思います。
マーケット創造にあたり経営者が考えるべきこと、中小企業の販売戦略、会計を「コックピットの計器」に変えるための具体的方法などは中小企業経営者に是非とも読んでいただきたいところです。
既に『実学』で紹介された京セラ会計学についても、これ一冊で要諦がわかるよう、上手にまとめられています。(土井は『実学』が稲盛氏の最高傑作だと思いますが)
『実学』
どんなところで誰を相手に語っていたか、という点も面白く、なるほどこんな団体相手にはこんな話をしていたのだな、と興味深く拝読しました。
原理原則は変わりませんが、会によって若干事例などが違っており、その辺が本書の魅力かもしれません。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
非常に移ろいやすく、はかないのも人の心ですが、同時に、人の心ほど、どのような逆境の中でも頼りになるものもありません
私は研究開発とマーケットの開拓とはまったく同じだと思っています。その前例が、養殖真珠をつくられた御木本幸吉さんです。当時は、おそらく天然真珠が全盛の時代だったでしょうし、その中で養殖真珠を世間に認知させるには相当時間もかかり、多くの妨害もあったはずです。けれども、御木本さんが「できる」と強く信じ込んだからこそ、養殖真珠を認知させることができたと思っています
自分の研究には愛着が湧いてきますから、ともすれば、自分の研究のプロセスを正当化しがちな甘い人では、優れた研究はできない
商いの極意というのは、お客様に尊敬されることだろうと私は思います。尊敬されれば、値段がいくらかという問題ではなく、「あなたの会社からしか買わない」と言ってもらえるわけです
フィロソフィとは判断基準です。それは経営陣がもつべき判断基準であると同時に、それを従業員に浸透させていくと、その哲学は会社全体の判断基準となっていきます
ハードネゴシエーションをして買収が決まっていくと、不満が残ります
何かに遭遇して物事を実行しようとするとき、まず自らに「動機善なりや」ということを問いかけ、さらに自分の周辺に「天の時、地の利、人の和」という三要素が備わっているかどうかを考えます
高収益性とは、近未来に起こってくる経費負担に耐えられる度合いを示す
「売上を最大限に」というのは、限界を自分でつくるのではなく、あらゆることにチャレンジして売上を増やしていくということ
会計事務所などでは勘定科目を大きな括りにしているのに、A社はなぜそれを細かくしたのか。それは細かくした勘定科目を見て、経費を最小にするためには、どの経費を減らせば良いのかということを、経営者が見られるようにするためです
登る山によって準備や装備が違うが如く、どういう人生、どういう経営を目指すかによって、その人がもつ「考え方」のレベルはまったく違ってくる
700ページ近い大著ですが、講演録ということで大変読みやすいのと、各トピックのまとめにスペースが割かれているので、読むのはそれほど大変ではありません。
稲盛氏の経営の要諦を一冊で学びたい方に、おすすめの一冊です。
ぜひ、読んでみてください。
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