22年、テレビ番組での発言で名誉を毀損されたとして、ジャーナリストの有田芳生氏と紀藤正樹弁護士を相次いで訴えた旧統一教会。東京地裁は先日、この2つの訴えを棄却する判決を言い渡しました。今年1月、弊サイトに掲載した記事で教団側の「敗訴ラッシュ」を予想していたのは、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さん。多田さんはメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回、これらの判決が意味することを解説するとともに、今後の旧統一教会の動きを見据えた議論の必要性を訴えています。
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※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:3月12日、13日とも旧統一教会の訴えは却下 教団の関連団体が行う能登半島ボランティア活動についての弁護士の見解
今年に入って、統一教会側の敗訴「3連打」が意味すること
今月に入っても、推薦状に盛山正仁文科大臣がサインをした写真が出されるなど旧統一教会の問題は盛んに報じられています。しかも、これは教団の関連団体の信者側からのリークで、教団側が旧統一教会の問題の火を消すまいと必死になっている姿にさえみえてきます。
さらに、3月12日、13日に東京地裁で、旧統一教会がジャーナリストや弁護士を訴えた裁判の判決もありました。連日、訴えは却下となり、教団側は自分に降りかかった火を消そうとして、その火がより燃え広がっている結果となったように感じています。
1.「日本テレビと有田芳生氏」を訴えた教団側の訴えは棄却
2022年8月19日のテレビ番組「スッキリ」で有田芳生さんが発言した「やはりもう、霊感商法をやってきた反社会的集団ってのは、警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係を持たないと、そういうことをスッキリ言わなければだめだと思うんですけどね」について、旧統一教会は名誉棄損されたとして日本テレビと有田芳生氏さんを2,200万円の損賠賠償請求と謝罪広告で訴えました。その判決が3月12日にありました。
原告の請求は棄却です。
判決後に行われた司法記者クラブの会見で澤藤大河弁護士は「全面的な棄却判決となり、名誉毀損ではないという判断が明快に示された」と話します。
光前幸一弁護団長も「裁判所がこの判断を下すということは、有田さんの発言には真実性があることを踏まえた上で、統一教会の主張に対しては門前払いの判決になっている」としています。
有田さんは勝訴判決を受けて「そもそも名誉毀損に当たらないという門前払いだということに大きな意味があると思っております。これからひるむことなく、統一教会の反社会性について発言をしていきたい」と力強く話します。
2.文科省による統一教会への解散命令請求の前哨戦になるとの見解
有田芳生さんの弁護団は「この訴訟は単なる名誉棄損事件ではなく、被告側の有田さんから原告の統一教会の反社会性の立証を積み上げてきたものである」として文科省による統一教会への解散命令請求の前哨戦になるとしています。
阿部克臣弁護士は「2022年の10月27日の提訴時の会見で、これは確実に勝てる訴訟だ、かなり絞り込んでいるんだと自信を見せていたんですね。ところが、今日の判決では、そもそも名誉毀損に当たらないということになりました」と話します。また
「もう一つ補足しておくと、現在の東京地裁で別の裁判官が審理している解散命令請求事件と今日の判決が関わってきます。
解散に値する教団かどうかの要件として、組織性、悪質性、継続性というのが言われています。
まさにこういうスラップ訴訟(不都合な言論を封じることを目的にした訴訟)をどんどん起こしてくるということ自体が、悪質性を裏付けるものになるわけです。統一教会のこういう反社会的な属性を示しています。まさにそこを裏付けたという意味で、解散命令請求にも影響を与える判決だと思います」
とも述べます。
3.「読売テレビと紀藤正樹弁護士」を訴えた裁判は
2022年7月20日に放送された「ミヤネ屋」で紀藤正樹弁護士が「信者に対して売春させていた事件まである」と話した内容が、統一教会を誹謗中傷するものだとして、読売テレビと紀藤正樹弁護士に対して2,200万円の請求の訴えを起こしました。23年3月13日に、その判決があり、原告(統一教会)の訴えは却下されます。
この発言の趣旨は、「統一教会から分かれ出た、一番ひどい分派団体の事例について述べたもので、統一教会自体の名誉を棄損するものではない」と、紀藤弁護士側は主張していましたが、それが認められた形になっています。
番組内で紀藤弁護士は「非常に深刻な事件まであって、お金集めのためには何でもするっていう発想が今分裂含みで問題が生じていると思います」との話をしていますが、この点についても裁判所は認めた形の判決になっているとのことです。
ただこの判決が、メルマガ発行の前日ので、充分にまとめきれていませんので、あらためて他の記事などで詳しくまとめられればと思います。
4.今年に入って、教団側の棄却、敗訴3連打が意味することとは?
すでに今年1月25日「ミヤネ屋」(読売テレビ)で本村健太郎弁護士の発言をもとに訴えた裁判でも、「『裁判所の判断として原告の布教活動が違法であると認定されている』という本件発言ないし、論評の前提事実の重要な部分は真実であると認められる」として、原告(旧統一教会)の請求は棄却されています。今年に入って、敗訴が3つ続いています。
12日に出された「統一教会スラップ・有田訴訟の勝利判決を得ての声明」のなかで「本判決がこのような判断に至ったのは、有田発言に真実相当性があると判断したからだと弁護団は考えている」としており、言論の萎縮を狙ったスラップ訴訟であることが裁判の場で示された結果になったといえるかと思います。
その観点からみれば、フランスの反セクト法(カルト規制法)には「多大な司法的闘争」がありますが、豊富な資金力をバックに、自分たちに反対するものを駆逐するために訴えを起こすことが示されたとすれば、今後も社会との軋轢を生む行為を起こす可能性があります。それだけに、こうした判決の結果が続いたことで、フランスのようなセクト規制法に向けての議論も必要になってくるかと思います――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年3月14日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Unification Church Hungary, CC0 1.0, via Wikimedia Commons