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大谷翔平の大失態を「犯罪的」と見る米国。金融リテラシーのかけらも無い資産管理に「極めてシビア」報道が続く理由

連日のように日米のメディアを騒がせている、大谷翔平選手と元専属通訳の水原一平氏との間で勃発したトラブル。しかし事件を巡る報じられ方は、両国で大きな相違があるといいます。その理由を分析しているのは、かつてニューヨーク・タイムズに記者として3年間も身を置いていたジャーナリストの上杉隆さん。上杉さんはメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』で今回、アメリカで「大谷騒動」がどのように報道されているかを紹介した上で、米国メディアが大谷選手に厳しい視線を向ける背景を解説しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

日米で真逆の報道。問われている大谷翔平「認識の甘さ」

大谷翔平選手の専属通訳である水原一平氏の引き起こした一連の騒動(違法賭博)は、日米間の野球論のみならず、法律論、社会論、ジャーナリズム論、さらには人間関係論の違いさえも浮かび上がらせている。それは、両国間の文化や考え方の違いというよりも、商契約における合理性とプロフェッショナリズムの厳しさの相違が、騒動に対する評価を分けているように思えてならない。

ニューヨーク・タイムズで3年間、米国ジャーナリズムの現場の厳しさを学んだ筆者からすると、日本のメディアや専門家のコメントをみて、その認識の甘さが気になって仕方ないのだ。それはなにも今回のことに限られているわけではなく、いつものことだが、やはりいつものことなのかと、いつもながらに嘆息してしまうのだった。

きっかけは、ESPNとLAタイムズによる見事なスクープ報道だった。FBIを中心とした組織的な違法賭博の調査の中で大谷選手の名前が挙がり、その流れで水原氏の関与が確実となり、ロサンゼルス・ドジャースが通訳(水原氏)を解雇、騒動が一気に広まったのだ。

とはいえ、実は米国のメインストリームメディアではこのニュースはそれほど扱われていない。

日本では、いまだにテレビ・新聞含めたほとんどすべてのメディアにおいてトップニュース扱いだが、米国では一般ニュースで取り上げられることはほとんどなく(スポーツ専門チャンネルは除く)、欧州などは報じられてさえいないほどだ。

水原氏への疑惑は、大谷選手の銀行口座からの不正な資金流用が指摘されたことで、大谷選手自身の関与も疑われていた。大谷翔平というスーパースターで善良な人物への疑念は、そのまま日米報道の差といってよいだろう。

日本の報道の大半は「大谷選手と一平さんとの友情はどうなるのか?」「大谷さんと新婚の奥さんがかわいそうだ」「信じている人に裏切られた大谷選手の今後のパフォーマンスが心配だ」という牧歌的なレベルの感想に終始していたが、米国の報道は極めてシビアなものだった。

MLBを知るものならば誰もがピート・ローズ氏の悪夢が脳裏をよぎったに違いない。野球賭博によりMLBから永久追放されたあのスーパースターの事件と比較し、当初より大谷選手にも同様の処分が下される可能性を懸念する声が多かった。

仮に、大谷氏が違法性を認識していたとしたら、詐欺罪で告訴しない限り共犯として、MLBから処分を受けることになるだろう。また、仮に水原氏が野球に賭けていたとしたら、永久追放すらあり得る状況だったのだ(まだその可能性は完全には消えていない)。「信頼している人に裏切られた」「大谷さん、かわいそう」というような甘いレベルではないのだ。

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米国エリート層には犯罪的にすら映っている大谷の資金管理

実際、大谷選手が会見で関与を完全否定した後でも、質疑応答のない会見では疑惑が払拭されたとは言い難いという声が上がっている。先述のピート・ローズ氏本人はこの件について皮肉交じりに「あの70年代、80年代、俺にも通訳がいたら、きっと無罪だったろうに」とコメントしている。このような背景が、一部の米メディアによる大谷選手への厳しい視線の理由となっている。

水原一平氏についての騒動は、米国においては法的並びに倫理的な観点からの評価が中心になっている。とくに、大谷翔平選手の口座から水原氏に送金された6億7,500万円という巨額の資金が関与しているため、社会的責任が大きく問われているのだ。

米国では、日本と違って、財産運用も含めた資産リテラシーを幼い頃から学んでおり、資産管理は自己責任という風潮が強い。とくに東部エスタブリッシュメントやエリート層には、今回の大谷選手の資金管理は、気の毒というよりも、愚鈍かさもなくば犯罪的にすら映っているだろう。

一方、日本ではお金に無断着なことが美徳とすらされている。実際に、日本におけるメディア報道は、米国と比較して、個人の私生活や人間関係に焦点を当てた情緒的なものが多い。今回のケースも、日本のメディアでは野球ファンのみならず、全国民が大谷選手のメンタル面への影響を心配し、彼を支持する声が上がっているかのような報道ぶりだ。

このような背景を踏まえると、大谷翔平に対する米国メディアの厳しい視線は、野球界の歴史における賭博問題の深刻さだけではなく、幼少の頃より培ってきた金融リテラシーの資質の差異が大きいのではないかと考えるのである。

(本記事は有料メルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2024年3月29日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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