弊サイトでも既報のとおり、社会問題化している著名人になりすましたアカウントがSNSで投資話を持ちかける詐欺広告。10日には業を煮やした「なりすまされた」著名人らが自民党本部を訪れ早急な対策に乗り出すよう「直談判」し、フェイスブック等を運営するメタ社を提訴する考えも示唆しました。そんな彼らの行動を取り上げているのは、かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さん。多田さんはメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回、前澤氏らの動きを高く評価するとともに、記事などを通じ「援護射撃」することを宣言しています。
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何もしないことが、被害の拡大を引き起こす。統一教会問題と、有名人をかたる投資詐欺
旧統一教会の問題は司法の場に移り、文科省による旧統一教会への解散命令請求の裁判だけでなく、4月8日に東京地方裁判所による、教団の田中富広会長への10万円の過料の決定(教団側は即時抗告)が出される動きもありました。
詐欺の世界では、有名人をかたるSNS上の広告から誘導されて投資詐欺の被害に遭うケースが増えるなかで、前澤友作氏らはプラットフォームへの広告規制の在り方を政府に提言するなどして、被害を防ぐ歩みもしています。
1.なぜ今『統一教会の元信者が明かすその手口と実態』を出したのか
急きょ『統一教会の元信者が明かすその手口と実態』(アドレナライズ)を出版しました。これには理由があります。
統一教会による解散命令請求の裁判が進んでいますが、非訟事件(非公開)ですので、裁判がどのような観点で進んでいるのか、多くの人からはみえない状況です。一方で、旧統一教会側の田中富広会長は、2月22日の裁判の審問に出席した後に、すぐに会見を開いて、自らの主張を展開しています。教団側は情報の出し入れを通じて、世論を誘導する術には長けています。
それは盛山大臣が推薦状を受け取っていたという信者らからの情報リークや、「未証し勧誘」により、多くの人たちの個人情報を握られて壺などを買わされたり、信者にさせてきたことからもわかります。
文科省としては法律にのっとっての行動ですので、なかなか裁判の情報も出せないと思います。しかし教団側に有利な情報ばかりだされて多くの方が惑わされることがないようにとの思いから、解散命令の裁判のポイントになるだろう、最近に至るまでの記事内容をまとめたものを出しました。
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2.民事裁判において示した元信者としての体験から、解散命令請求裁判の中身もみえてくる
『統一教会の元信者が明かすその手口と実態』の序章にて「私はなぜ入会したのか、なぜ脱会したのか」という自らの体験も書いています。
1999年に私が元信者らとともに旧統一教会に対して起こした損害賠償を求める裁判では、文化庁が指摘する「未証し勧誘」による伝道の違法性を問いました。しかし教団は「信者らが勝手にやったこと」で、教団本部は関係ないとする主張を展開してきましたが、その活動実態を裁判の場で赤裸々に明かすことで、教団側の使用者責任が認められての勝訴判決となりました。
当然ながら、今回の解散命令請求の裁判でも、いかに教団が組織的なお金集めと伝道活動をしてきたのかが問われます。
それゆえに、元信者らの民事裁判の結果は大きなウエイトを占めてくるはずです。
実際に、東京地方裁判所の10万円の過料の決定文なかでも、旧統一教会の不法行為が認定された「民事訴訟22件」について触れています。
「法令違反行為をしたとの疑いがあったと認められる」として、「被害に遭った者すべてが訴訟を提起するとは考え難いことからすれば、22件の民事判決で被害者とされた者のほかにも、(旧統一教会の)信者から同様の被害に遭った者が少なからずいることが推認される」としています。
こうした実態を踏まえたうえで、文科省の報告徴収質問権に教団が答えなかったとしての過料決定となっています。
つまり、今回の解散命令請求の裁判でも、多くの元信者からのヒアリングを通じた内容や、これらの民事裁判の結果は重く受け止められることになりますので、過去の裁判の状況を知れば、今の裁判の状況も自ずとみえてくるということになります。
3.返金阻止の信者らに署名させた念書には2通りのパターンがある
被害者家族である中野容子さん(仮名)の母親は信者時代に約1億円もの献金をしました。そして返金の裁判を旧統一教会に起こしましたが、信者の頃に「返還請求や不法行為を理由とする損害賠償請求など、裁判上・裁判外を含め、一切行わない」ことを約束する念書に教団に指示されて署名をさせられため、地裁、高裁とも敗訴しています。
しかし中野さんは諦めずに最高裁に上告しました。2024年6月10日に最高裁判所が弁論を行うことになっています。
木村壮弁護士は立憲民主党を中心とする国対ヒアリングのなかで、念書合意書には2つの種類があるといいます。
1つ目は「一部の返金をするが、残り(のお金)については放棄させるパターンです。このパターンについては、既に東京地裁、高裁で錯誤もしくは公序良俗に反するということで無効とする判決が出ています」
2つ目は「献金を受ける前の段階で『返金請求をしない、裁判も起こさせない』という合意をさせるパターンです。これがこの中野さんのケースの念書のパターンで、これについては、実は東京地裁で敗訴判決が別件でも出ております。ただその件については控訴した高等裁判所の段階で和解をしていますので、この念書の有効性に関しては確定していない状況にある」ということです。
「今回、弁論が開かれますが、この訴えを起こさせないという合意は、司法の救済を受けさせないというものですので、権利の制限の意味合いが大きいものになります。こういったものの有効性についてやはり最高裁がきちんと判断を示すということは、今後の被害救済にとっても非常に重要だと思いますので、その内容に期待したいと思っております」とも話します。6月の弁論を受けて、最高裁が今後、どのような判断を出すのかに注目が集まっています。
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4.詐欺グループも想定外のなりすまされた有名人らの行動
これまでハリウッド俳優をかたり、世界中の人たちからお金を巻き上げてきた詐欺グループは、ここ数年、日本人をターゲットにしたグループを立ち上げて狙ってきています。
これまでSNSのプラットフォーム側は何の対策を打たないままの状況でしたので、かなりの被害が広がりました。
しかし前澤友作さんや堀江貴文さんといった、なりましの被害を受けた有名人らが国に対して詐欺につながる広告を出すプラットフォーム側の広告規制を促すなどの行動をとっています。さらに、前澤氏はフェイスブックやインスタグラムの運営会社であるアメリカのメタ社を提訴するとも話しています。この動きは、運営会社だけでなく、詐欺グループにとっても想定外だったと思います。
旧統一教会の問題もそうでしたが、国の側が何らの被害を防ぐ対策を講じなかったために、高額献金や霊感商法の被害が長年にわたって生み出され続けてきました。
「何もしない」これは詐欺や悪質商法を行う者たちにとって、追い風となります。
そうした状況を許さない行動に対して、私自身も微力ながら、記事などを通じて援護射撃ができればと思います――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年4月14日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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