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目の前で起きた「高級ブランド崩壊」の瞬間。なぜ“産地偽装”は起きてしまうのか?

ファッション、雑貨、食品……さまざまな業界で「高級ブランド」は理想であり夢を与えてくれるものですよね。しかし、それを逆手にとった事件が起きました。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、とある高級ブランドの「カニ」の産地で起きた偽装事件について紹介し、ブランドのありかたについて持論を展開しています。

高級ブランド、消滅!! 産地偽装がもたらす、大きな代償

ブランド化。それは、モノを売る人間にとって、理想であり、夢でもあります。

高級ブランドとして成長すれば、その収益は莫大なものとなり、ビジネスの成功者と呼ばれるようになります。

そのためには、優れた商品開発、ルールづくり、品質管理、PR方法など、緻密なブランド化戦略が必要になります。

そうした戦略を立案・実践し、高級ブランドとして、全国に知られるようになった商品のひとつに、「間人(たいざ)ガニ」があります。

京都府京丹後市の漁協の中でも、たった5隻の漁船のみに名前の使用が許されているブランドです。

京都府の最北端、経ヶ岬の沖合約20~50kmを漁場とし、味・品質ともに最上級と言われるカニなのです。

周辺で獲れた一般的なズワイガニが1杯1万円だとすると、「間人ガニ」は4万円の値がつくこともあると言います。

それほど価値に違いが出るのは、厳格な選定を実施しているからです。

船上で1杯1杯厳しくチェックし、身詰まりや大きさ、重さ、キズ、色艶、形の良し悪し、成長の度合いなど、約50もの厳しい基準により、選別されています。

この基準をクリアしたカニだけが「間人ガニ」を名乗れ、1杯4万円の価値が生まれるのです。

1988年に「間人ガニ」が誕生して以来、着実に高級ブランドとしての地位を確立してきました。

ところが、突如、私たちは高級ブランド崩壊の瞬間を目の当たりにすることとなったのです。

卸売り業者による産地偽装。

「間人ガニ」を扱う業者が、普通のズワイガニに、不正に入手した認定タグをつけ、販売していたのです。

産地偽装は、ブランドにとって大きな問題なのですが、この事件で重大なのは、この業者1社による犯罪ではないこと。

まずは、認定タグの不正入手先です。

漁協から認められた漁船5隻のうちのひとつが、タグを横流ししていたのです。

漁船が漁協からタグを購入するのですが、「タグを海に落とした」と嘘をついて、通常の倍の数を購入していたのです。

この一部を業者に渡していました。

このタグを普通のズワイガニにつけ、旅館などに卸していたのですが、旅館もそのことを知った上で、安く仕入れていたのです。

漁船、卸売り業者、旅館が手を組んで、不正を働いていたということになります。

こうした不正を10年以上前から行っていたと言います。

漁業関係者は、「町の誰もが知っている。もっと前から他にもやっている奴はいる」と証言しています。

つまり、やっていたのは一部の人だったとしても、漁船・業者・旅館が手を組んでいたことと、みんなが知っているという意味では、“町ぐるみ”の犯行だと言えます。

市長や漁協の人間が、「二度とこのようなことが……」と表明したところで、時すでに遅し。

消費者の信頼は失われ、ブランドは消滅してしまうのではないでしょうか。

1社の犯行ではなく、産地そのものが産地偽装したのですから、ブランドの立て直しは不可能だと思います。

このニュースに触れて、もうひとつ私が気になったのは、ブランドの価値そのもののこと。

逮捕された業者は、「他の産地のカニと味の違いなんて、わかるわけがないと思った」と供述しています。

また、他の漁業関係者や料理人曰く、「味の違いはわからない」。

つまり、普通のカニと「間人ガニ」の味に差はないということです。

大きさや見ために違いはあれど、味は同じなのです。

ならば、4倍もの金額を払う意味があるのでしょうか。

ブランドとはそういうものなのかもしれませんが、モノの価値を見直す必要があるのではないでしょうか。

しかし、ブランドを有難がる消費者の幻想がある限り、産地偽装はなくならないのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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