9日、国賓としてアメリカに招かれ、11日に米国連邦議会上下両院合同会議で演説を行った岸田首相。「米国は独りではない」等の内容で喝采を浴びたと伝えられましたが、アメリカは日本を世界戦略上、どのように見ているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、米国の外交専門誌に掲載された日米関係をめぐる論文を引用しつつ、アメリカが軍事・安全保障面で日本にどのような役割を期待しているかについて解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです
米国の世界戦略から見る日本
岸田首相は4月9日、国賓待遇でアメリカを訪問しました。とてもよい訪問だったようです。
実際のところ、米国の世界戦略上、日本はどう位置付けられているのでしょうか?
これについて米国の外交専門誌フォーリンアフェアーズ4月10日版で「アジアにおけるアメリカの親友、日米同盟を強化するケース」としてジェフリー・W・ホーナング氏が発表しています。
インド太平洋における米国の同盟関係は、個別の2国間パートナーシップである。
米国が軍事同盟を結んでいるのは日本、オーストラリア、フィリピン、韓国、タイの4か国だけである。
このような構造はもはや現実を反映しておらず、今日の安全保障の状況に対処するには最適とは言えない。
米国は、単に日本と協力するだけでなく、より広いインド太平洋地域の安全と安定を促進するために、米国の戦略における日本の中心性を活用する方法を模索すべきである。
今こそ日米同盟をアジア地域グループ連合の中心とする時である。
解説
米国はアジアにおいて「日本を中心とした多国間の枠組み」を作るべきである、というのです。
なぜ日本が中心であるべきか、同論文は説明しています。
インド太平洋地域にはNATOに相当するものは存在しない。
その代わりに、クワッド(オーストラリア、インド、日本、米国)のような外交グループや、AUKUS(オーストラリア、英国、米国)のような技術パートナーシップなどがある。半導体グループ「チップ4」のような経済的な取り決めもある。
日本は、これらすべての関係の中心的存在である。
これほど多くの同盟国グループにおいて、これほど重要な役割を果たしている米国インド太平洋地域の同盟国は他にない。
自国の防衛にとどまらず、安全保障問題にも積極的に関与するようになった日本は、米国がまさに必要としている同盟国である。
解説
日本への強い信頼がうかがえます。
その発展的進化の具体的ステップについてもフォーリン・アフェアーズは言及しています。
まず日本が果たすこのような中心的役割を公式化することである。
この新しい「スーパーグループ」はNATOのような防衛協定を結んだりすべきではない。
また、他の国々は、独自の外交戦略や二国間同盟関係を日米同盟に従属させる必要はないだろう。連合的アプローチは、2国間同盟を補完するものであって、それに取って代わるものではない。
【関連】「この人アカンわ」岸田総理の米議会“売国演説”を京大教授が激辛採点!新聞が報じぬ対米従属 日本を壊す不治の病
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
解説
この日米同盟を中心としたアジアのスーパーグループは、現在の米国とアジア諸国の関係を壊してつくるものでなく、日米同盟を基軸とした形の補完をするだけだ、との提言です。
この論文が掲載された外交専門誌フォーリン・アフェアーズは米外交問題評議会(Council on Foreign Relations)によって発行されています。
そして米国の対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われています。
米国の軍事・安全保障の枠組みにおいて、日本の存在が、我々が思う以上に大きくなってきています。
日本本土の上空ではありながら、日本の航空機は自由に飛ぶことができない横田空域など、日本が要求できる事はたくさんあるでしょう。
PS
本件に関連して一言。
2022年10月に岸田首相はオーストラリアでアルバニージー首相と会談し、新たな安全保障協力に関する共同宣言に署名しました。
日本の新聞では「新安保宣言に署名」という書き方でしたが、海外の新聞はほぼ全部Security Pact(一部Agreement)という言葉を使っていました。
宣言と条約では語感が全く違います。
条約なら国会の承認が必要でしょう。そして条約か否かの判断は表紙の文言ではありません。中身なのです。
国民の目をくらますための誤魔かしならば悪質です。正式な手続きをとって進むのが民主国家です。当たり前の事です(2022年10月24日の本メルマガ参照)。
【関連】日豪安保“条約”をいつの間に結んだというのか。信頼できぬ日本メディア
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
(『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』2024年4月14日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために
メルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』 では、在米14年の経験と起業家としての視線、そして大学教授という立場から、世界で起きているさまざまなニュースを多角的な視点で分析。そして各種マスコミによる「印象操作」に惑わされないためのポイントを解説しています。4月中であれば、4月配信分のメルマガ全てが「初月無料」でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。
月額:¥330(税込)/月
発行日:毎週 日曜日(年末年始を除く)
形式:PC・携帯向け/テキスト・HTML形式
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
image by: 首相官邸