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楽天・三木谷会長の心中やいかに。NTTドコモと「Amazon」が協業開始のウラ側

Amazonで買い物をするとドコモのdポイントがたまるサービスがスタート。NTTドコモとアマゾンジャパンは、記者発表会で協業サービスの内容や狙いを説明しました。「楽天グループに対抗」の言葉は出なかったと語るのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、この20年の間に変化してきたドコモと楽天の関係を振り返り、三木谷会長が携帯事業への参入を決断し、巨額の負債を抱えることになった背景にもドコモとの関係悪化があると説明。今回の競合同士の協業に思うことがあるはずと綴っています。

Amazonで「dポイントが貯まる、使える」サービス開始。あからさまな「楽天対抗策」に三木谷会長は何を思う

NTTドコモとアマゾンジャパンはdポイントに関する戦略的協業を発表。Amazon.co.jpにおいて「dポイントが貯まる、使える」サービスを開始した。

Amazon.co.jpでは「他社のポイントが使える」サービスとして、すでにJCBやリクルートのポイントが使えるようになっているが、「他社のポイントが貯まる」という点においてはdポイントが初のこととなるという。

このタイミングでNTTドコモがネット通販においてdポイントを強化してきたというのは「楽天経済圏」を意識しているのは間違いない。

質疑応答では「我々がやっているすべての取り組みは、基本的に『お客さまのために何をすべきか』から逆算し『Amazonとして何をすべきか』という考え方に基づいている。他社がやっているからというわけではない」(アマゾンジャパン担当者)、「競合他社というよりも、dポイントクラブ会員のニーズに応えるにはどうすればいいのか、というところが起点」(NTTドコモ担当者)ということだったが、さすがに「楽天グループに対抗する」とは口が裂けても言えないだろう(言っちゃえばいいのに)。

今回の協業、20年以上、業界を見ている立場からすれば「NTTドコモと楽天グループが仲が良かったら、あり得ない組み合わせだな」と改めて思う。そもそも、NTTドコモと楽天グループは2005年、いまから20年近く前に「iモードサイト上でのオークション事業を共同展開する」という発表をおこなっている。楽天の一部門を分社化し、新会社「楽天オークション」を設立。そこにNTTドコモも出資していた。

当時のケータイWatch記事にはNTTドコモの中村維夫社長、夏野剛マルチメディアサービス部長、楽天の三木谷浩史会長兼社長が仲良く握手をしている写真が掲載されている。当時、パソコン向けとしてヤフーオークションが強かったが、携帯電話向けオークションは広まっておらず、KDDIがDeNAと組んで「auオークション」を展開していたのだった。

10年前からは、NTTドコモ回線を使ったMVNOとして「楽天モバイル」も提供していたが、楽天が「第4のキャリア」として新規参入する前ぐらいから、両社の関係は冷え切ったものになっていたようだ。

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実際、三木谷会長に「なぜ、MVNOではなく、MNOとして新規参入するのか」と尋ねたら「MVNOはNTTドコモの奴隷でしかない」と吐き捨てていたので、NTTドコモからの「上から目線」に耐えきれなくなったというのが実情のようだ。

NTTドコモと楽天が対等なパートナーとして関係を継続し、三木谷会長が菅義偉氏にそそのかされなかったら、楽天は第4のキャリアとして新規参入しなかったかも知れない。そのまま、MVNOとしてNTTドコモの回線を使い続け、ネット通販の分野でも提携が行われていたら、KDDIやソフトバンクも脅威に感じる存在になれたかも知れない。

それこそ、楽天グループが設備投資につぎ込んだ1兆円なんて無駄な資金は必要なく、もっと少額の「プロモーション費用」をかけるだけで、ナンバーワンMVNOとして、絶対的なポジションを築けたのではないか。NTTドコモと仲良くし続けていれば、社債の償還に追い立てられることなく、いまごろ、もっと安泰な楽天グループだったはずだ。

NTTドコモとアマゾンジャパンの握手を、三木谷会長はどんな気持ちで見ていたのだろうか。

ドコモとAmazonの新たな協業に関する記者発表会終了後の担当者囲み動画(プレミア会員限定公開)- YouTube

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image by:FP Creative Stock/Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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