2023年10月7日、ハマスがイスラエルに対して奇襲攻撃をおこなったことで、多くの民間人を巻き込みながら今も続いている激しい戦闘。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、中東情勢の現実を発信している石田和靖さんが、なぜこんなことが起きているのか、現在の状況とともに語っています。
「中東」から世界のいまを読み解く
イスラエルとハマスの戦闘が激化の一途を辿り、その成り行きを世界が固唾を飲んで見守っている中東。石油などのエネルギーを通じて国際情勢・経済の大きな影響力を持つ中東でいま何が起こっているのか──
現地で長くビジネスや文化交流に携わり、「越境3.0チャンネル」などSNSを通して中東情勢の現実を発信してきた石田和靖さんに、ガザ紛争の内情、中東でいま起こっている大変化についてお話いただきました。
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(石田)
2023年10月7日、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配しているイスラム組織・ハマスが、イスラエルに対して大規模な奇襲攻撃を行いました。
それに対してイスラエル側も激しい報復攻撃を行い、多くの民間人を巻き込んだ戦闘がいまなお続いています。
日本の主要メディアの報道を見ると、過激なテロ組織であるハマスが突然奇襲攻撃を仕掛け、あくまでもイスラエルはそれへの報復として攻撃を行っているという論調がほとんどです。
もちろんハマスが行った民間人の拉致・殺害は許されることではありません。しかしそれではそもそもなぜハマスは奇襲攻撃を行ったのか、いま中東全体で何が起こっているのか、物事の本質が全まったく見えなくなってしまいます。
いま必要なのは「10月7日」以後でなく、むしろ「10月7日」より前の情報なのです。
私は長く中東・東南アジア地域のビジネス、文化事業に携わってきた経験をもとに、テレビやラジオ出演、講演、SNS投稿、書籍の出版等を通じ、現地の生の情報を発信してきました。
主宰するYouTubeチャンネル「越境3.0チャンネル」では、毎日夜の8時に最新の世界情勢の解説を行っており、再生回数4000万回、20万人に登録していただいています。
今回のイスラエルとハマスの武力衝突に関しても、私はその1年ほど前から、近いうちに「イスラエル側」が大きな戦争を引き起こすだろうと警告してきました。
詳しい経緯はとても紹介し切れませんが、パレスチナ問題の根本は、イギリスの「三枚舌外交」によって1948年にイスラエルが現在の地に建国されたことに始まります。
以後、イスラエルはパレスチナ人の住んでいた地域に入植を進め、何度か和平の機運は高まったものの、イスラエルとアラブ諸国、パレスチナは現在に至るまで対立を続けてきたのでした。
ところが、2020年8月、当時のアメリカのトランプ政権の仲介によって「アブラハム合意」が締結され、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化。この動きにバーレーン、スーダン、モロッコが続いたことで中東情勢は安定へと向かっていました。
しかし2022年12月、過激な極右勢力(シオニスト)と連立を組む第六次ネタニヤフ政権がイスラエルに誕生したことによって、状況が一気に変わります。パレスチナへの入植活動がどんどんエスカレートしていったのです。
例えば、武装したイスラエル軍が、突然パレスチナ人の自宅に上がり込み、強制退去させる。女性や子供が抵抗すればその場で射殺するということが日常的に行われるようになったのです。
実際、アラブ圏のメディアでは、「きょうは何人殺害されました」というニュースが毎日報道されていました。
そのような過激な入植活動に対し、ハマス側は何度も警告を発していましたが、ネタニヤフ政権は全く耳を貸しませんでした。ですから、10月7日の奇襲攻撃はこの鬱積が爆発したとも言えます。
また、ネタニヤフ政権は、イスラム教シーア派を国教とし「反イスラエル」を国是とするイランに対して、新たな軍事教義「オクトパスドクトリン」を策定・公表しました。
イランは核開発、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派などのシーア派民兵組織、スンニ派のハマスにも支援を行っているとされ、イスラエルと対立してきました。
つまり「オクトパスドクトリン」とは、タコの足であるヒズボラやフーシ派と戦っても意味がない、その足を操るタコの頭であるイランを叩かなければならないという軍事教義なのです。
ここに、私が「イスラエル側が大きな戦争を起こすだろう」と警鐘を鳴らした理由があります。
それから、ネタニヤフ政権が進めている司法制度改革にも……
※続きは最新号で。いま中東で何が起こっているのか、これから世界はどこに向かっていくのか、現地の情勢に精通する石田さんに分かりやすく紐解いていただきます。
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