魚類を口にした際に生じることのある発疹や吐き気。そんな症状に襲われた際に私たちはまっさきに「アレルギー」を疑いますが、こと青魚が原因の場合は「うそのアレルギー」である可能性が高いということをご存知でしょうか。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では現役医師の江部康二さんが、「本当の魚アレルギー」と「うそのアレルギー」の各々を解説。さらにその予防法もレクチャーしています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:魚のうそアレルギーについて
魚のうそアレルギーについて
● 夏に多い『魚のうそアレルギー』とは?アレルギー専門医が解説
以前ヤフーニュースに、このような興味深い記事が掲載されました。
内容をチェックしていきます。
【魚の細菌性食中毒】
夏は、まずは魚の食中毒(腸炎ビブリオ)に要注意です。
腸炎ビブリオは、海水や海産の魚介類などに生息している細菌です。
4℃以下だと、ほぼ増殖しないので、夏場で刺身などを購入した時は、氷や保冷剤を用いて、低温を維持して持ち帰りましょう。
【本当の魚アレルギーは、青身魚より白身魚の方が多い】
魚アレルギーを起こしやすいのは、魚の筋肉に含まれた「パルブアルブミン」という蛋白質です。
パルブアルブミンは、青身魚よりも白身魚のほうが多く含まれていることがわかっています。
従って抗原抗体反応による、魚アレルギーは白身魚のほうが多いのです。
青身魚のサバのアレルギー(☆☆☆)が有名なので目立ちますが、トータルには白身魚のアレルギ-のほうが多いということですね。
【魚のうそのアレルギーとは⇒ヒスタミンによる食中毒】
一方、魚アレルギーとは別のものである、ヒスタミン(☆)という化学物質による症状のことを「魚のうそのアレルギー」と呼んで注意喚起しています。
魚のうそのアレルギーとは、魚肉に直接含まれるヒスタミンによる症状を指しています。
医学的には抗原抗体反応は無関係であり、アレルギー反応ではないので、仮性アレルゲンなどと呼ばれます。
厚生労働省は、「ヒスタミンによる食中毒」(☆☆)として解説しています。
青身の魚の筋肉にはヒスチジンというアミノ酸が多く含まれています。
そして、青身の魚の筋肉にいる細菌の作用で、ヒスタミンに変わっていきます。
ヒスチジンが多く含まれる食品(魚肉など)を常温に放置したりすると、食品中のヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスチジンからヒスタミンがどんどん生成されて、蓄積していきます。
ヒスタミンは加熱しても安定であり、一旦できたものは消えないので、ヒスタミンによる食中毒を生じてしまうのです。
夏の魚による食中毒症状を起こす原因として、上述のビブリオ菌よりも、ヒスタミンによる中毒のほうが多いという統計結果もあるくらいですので要注意です。
低温管理と、冷蔵庫から出した後は速やかに食べるということですね。
【ヒスタミンによる中毒の症状と経過】
ヒスタミンによる中毒の症状としては、原因となる魚を食べてから10分から90分以内に、顔が赤くなったり、蕁麻疹、動悸、頭痛、めまいなどを起こします。
ほとんどは3-36時間以内に良くなりますが、まれにショックを起こすこともあります。
症状としてはアレルギーとそっくりです。
※ ☆印解説
(☆)ヒスタミン
種々の動植物組織に存在し生理機能に作用を及ぼす物質です。
動物体内でこれが過剰に遊離するとアレルギー様の反応を起こします。
(☆☆)ヒスタミンによる食中毒について – 厚生労働省
ヒスタミンによる食中毒とは?
ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症する、アレルギー様の食中毒です。
ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)にヒスタミン産生菌(例、Morganella morganii)の酵素が作用し、ヒスタミンに変換されることにより生成します。
そのため、ヒスチジンが多く含まれる食品を常温に放置する等の不適切な管理をすることで、食品中のヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが生成されます。
ヒスタミンは熱に安定であり、また調理加工工程で除去できないため、一度生成されると食中毒を防ぐことはできません。
ヒスタミンによる食中毒は、抗原抗体反応の結果ではないのでアレルギー反応ではありません。
(☆☆☆)鯖などの青魚を食べて起きるアレルギー
- 魚自体のアレルギー
- ヒスタミンによる“アレルギー様食中毒”または“ヒスタミン食中毒”
- アニサキスアレルギー
の三つがある。このうち一番多いのがアニサキスアレルギーである。
この記事の著者・江部康二さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com