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障がい者の生涯学習を支援する「みんなの大学校」が考える3つのポイント

「インクルーシブ教育」をキーワードに文部科学省が進める「学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業」を受託する「みんなの大学校」は、今年度3つのポイントを掲げて支援事業を展開するそうです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、みんなの大学校を運営する引地達也さんが、文科省に提出した取組概要について説明。過去2年間の知見を交えながら、注力する3つのポイントを具体的に伝え、区切りとなる3年目の終わりに目指す姿を示しています。

オンラインと青年学級と社会教育施設、障がい者の学びの区切りに向けて

障がい者の学びを研究・展開する文部科学省の委託研究事業が始まった。みんなの大学校は受託団体として、本年度、これまで取り組んできた障がい者の学びの知見をベースに3つのポイントで事業を行う予定。3年目の本年度を区切りとして、来春に3つの学びの形を提示したいと考えている。

先日の第1回目の連携協議会では、委員から文科省事業のキーワードである「インクルーシブ教育」に関する協議も行われ、これまでのみんなの大学校の歩みは、一般化されたインクルーシブの概念をさらに深めて進化に向けて動いていることも確認できた。

学びをキーワードにした活動は、活動のプロセスがインクルーシブを求める指向性に支えられてきており、それが活動の性質となり、成果を示して、その反応があり、今がある。障がい特性に応じて学びの場の設定を変えたとしても、それは一歩進んだインクルーシブへのプロセスとして必要かつ最適であるのだと、今の時点では考えている。

本年度の文部科学省「学校卒業後における障害者の学びの支援推進事業(地域連携による障害者の生涯学習機会の拡大促進)」に対して、みんなの大学校は「各種障がい特性に応じたオンラインでの学びの提供と青年学級との連携、指定管理業者に向けた場づくり研究事業」を題目として企画提案した。

3つのポイントとは

  1. 各種障がい(精神障がい、発達障がい、重度障がい、知的障がい)に応じたオンラインの学びの提供
  2. 青年学級での音楽プログラムの提供、開発
  3. 社会教育施設のインクルーシブな学びの場づくり研究と展開

である。

1はこれまでみんなの大学校が展開してきたオンラインでの学びの提供を、より効果的な形を追究するために、各種障がいに合わせた内容を実践するもので、5講座を各30回予定している。「メディア論」は知的障がい、発達障がい向け、「音楽でつながろう」は重度障がい者を中心に実施。「障がいと物語」「けいざいとくらし」は精神障がい、発達障がい向け、「禅・マインドフルネス」は精神障がい、発達障がい、知的障がい向けと位置付けている。

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2の青年学級でのプログラム実施では、公民館が行ってきた障がい者の生涯学習機会である青年学級から教えられながら、新しいコンテンツを開発する事業である。東京都国分寺市の「くぬぎ学級」、東京都国立市の青年学級が舞台となる。ここで音楽プログラム「夏の音楽会」「クリスマス音楽会」を実施し、受講者らへの学びを提供し、支援者やボランティアとともに新しい学びの形を考えていく予定である。

3の「社会教育施設のインクルーシブな学びの場づくり研究と展開」は、これまでの2年で指定管理として様々な文化施設を運営するサントリーパブリシティサービス株式会社とともに、障がい者の学びの場づくりを研究し、作成した「ガイドライン」をもとに、研修や検討を行い、ガイドラインの確定と、その展開を行う。同社が運営しているホールや美術館のほか、自治体が運営する生涯学習センター等と連携し、社会教育施設での「場づくり」の活性を目指すものである。

みんなの大学校のオンラインでの学びの提供は毎年300講座以上を実施し、延べの受講者は年間1500人を超す。

私が担当する「音楽でつながろう」は特別支援学校を卒業した重症心身障がいのある受講者にとっては唯一の「学び」の接点として静かに関係者に広がり、年々参加者が増えている。自宅で家族と一緒に参加するパターンや、自宅でヘルパーさんと見るのもあれば、生活介護事業所に通所し、その通所先で通所する方々と一緒に見る形も増えている。

この講義は「重症心身障がい者の方を中心に」との考えで、オンライン上のやりとり、コミュニケーションの受け答えにゆっくりとした時間をかけて、オンラインでも受講者どうしが「つながっている」を意識したプログラムである。

これは、重症心身障がいのある方の「分断」であり、インクルーシブとの矛盾に見えるかもしれないが、普段つながれていないところとオンラインを通じてつながれることが優先であり、その形を示すことが、インクルーシブの第一歩との考えだ。最後の1年、どんな発見があるだろうか。

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image by: shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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