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“小泉ポエム政権”が誕生しても短命に。自民総裁選で進次郎が勝ったら何が起きるのか?

10名を超える議員が名乗りを上げ乱戦の様相を呈する自民党総裁選。メディアは連日その動向を大きく報じていますが、識者はどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストの有田芳生さんが、注目する人物として石破茂氏を挙げ、彼とのエピソードを紹介。さらに小泉進次郎政権誕生の可能性についても触れています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:小泉進次郎首相誕生か?問われる立憲民主党の政権構想

セクシー首相の誕生はあり得るのか。自民総裁選で注目される人物

自民党総裁選は岸田総理が不出馬のため次の新しい首相を選ぶ選挙になる。9月12日に告示され、26日に党員投票が締め切られ、27日に開票、同時に国会議員の投票が行われる。立憲民主党の代表選は、9月7日に告示、20日に投票だ。

臨時国会を10月2日をめどに開き、新総理を選出、早晩に解散、総選挙に向かうと見られる。現状では11月3日投開票か11月10日投開票の可能性がある。後者なら10月15日解散、10月29日公示となる。

自民党は派閥が解消されたため、縛りがなくなったため、10人を超える議員が立候補への意欲を示している。典型的なのは宏池会で林芳正官房長官と上川陽子外務大臣が立候補の意向を示している。同じ派閥から2人が立候補するなら、これまでの派閥政治では見られなかった事態となる。

もちろん20人の推薦人が集まらなければ立候補できないので、最終的に何人の争いになるかは、まだ未定だ。8月23日時点では、小林鷹之議員が出馬会見を行い、24日には石破茂議員が鳥取の地元で立候補を表明する。

立憲民主党は8月21日に枝野幸男議員が立候補を表明、政策と野党共闘の方向を語った。泉健太代表も立候補の意向だが、推薦人20人を集めることができるかどうか。さらに「第3の候補」が出るのか、それが誰なのかが注目される。

自民党、立憲民主党の「新しい顔」の眼目は政策だ。注目される小林鷹之議員の会見を見ても、旧来の自民党の右派政治を踏襲するだけでなく、経済政策は「地方はもっともっと稼げる」という表現に見られるように、言葉に宿る政治哲学はきわめて貧弱だ。

枝野幸男議員は「ヒューマンエコノミクス─人間中心の経済」で、国公立大の授業料を段階的に無償化、保育・介護職の給与を大幅に改善するなど再配分を重視する。私は枝野代表時代に沖縄県連の代表だったので

沖縄県民の民意を踏まえ、辺野古新基地建設を含めた沖縄における基地のあり方や日米地位協定を見直すため、米国との交渉を開始する。

という政策にも注目する。

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民主党政権化でも踏みにじられてきた沖縄の民意

自民党も立憲民主党も立候補者の全体像が不明なので、ここでは国会にいたときの体験的人物像を記録しておく。小林鷹之議員には面識もなく、「コバホーク」などともてはやされているが、いまのところ政策に新味はないとだけ指摘しておく。私の視点でいえば、北朝鮮拉致問題については小林議員も枝野議員も言及がない。

枝野幸男議員については、代表選に出たときの推薦人にもなった経緯もあり、その思いを聞いてもきた。こんどの代表選に立候補する狙いは政権交代だ。2009年から3年3か月の民主党政権で官房長官と経産大臣を経験したことは大きな意味を持っている。官邸での経験は、第二次政権運営の基本となるからだ。

枝野議員は「閣議にどれぐらいの時間をかけるのか。端的にいっていつ切り上げるのかなどは経験者にしかわからない」と最近語っていた。官僚との関係など、民主党政権の失敗は、次の政権運営のための財産だ。「いきなり大きく変えようというのではなく、次の総選挙でも政権を維持できることが大事だ」という。

とはいえ沖縄の立場でいえば、自民党政権のもとで、さらには民主党政権でも民意は踏みにじられてきた。しかし枝野政権になれば、自民党政治が、この先数十年もかかると予測される辺野古の大浦湾埋め立て工事に莫大な予算を使うことはない。防衛省は事業費を約9,300億円と見積もるが、予算は22年度までに4,312億円を支出、沖縄県は総工費が2兆5,500億円になると独自の試算を出している。

辺野古の工事は政府が決めれば止まる。枝野政権では代表団をアメリカに派遣して粘り強く交渉を進めていく。「革命的」な政策がいっきょに行われるのではなく、人間の立場に立った施策が行われるのだが、なかでも辺野古工事の中断は沖縄県民に大歓迎されるだろう。そうした視点に立てば、政治家を「リベラル」か「保守」かで区別する意味は現実的には、あまり意味がない。

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石破総裁、小泉幹事長の布陣で生まれる国民の熱狂

私が注目するのは石破茂議員だ。世論調査ではいちばん期待が高く、共同通信の世論調査(8月17日~19日実施)では全体で25.3%、自民党支持層でも21.0%だ。ちなみに2位は小泉進次郎議員で、全体で19.6%、自民党支持層では24.2%と人気は高い。石破氏は軍事オタクと揶揄されるように憲法改正で9条に自衛隊明記を主張してきた。あるとき私は石破議員の部屋で北朝鮮の拉致問題について話をした。実際に解決に向けて進むには何が必要かを意見交換したのだ。

石破議員は、これまで2008年、12年、18年、20年に総裁選に出た。世論調査でも明確だが、国民的に人気があっても、国会議員のなかでは支持が広がってこなかった。こんどの総裁選の結果は不明だが、仮に石破茂総裁、小泉幹事長といった布陣になれば、流されやすい国民にある程度の「熱狂」が生まれるかもしれない。

その石破議員と私が一致するのは、北朝鮮の平壌に連絡事務所を設置することだ。北朝鮮に拉致問題の報告書を提出させ、それが事実かどうかを警察庁の専門家などに検証させるのだ。民主党政権の時代に北朝鮮側は、半年でも1年でも徹底して調査してよいと提案したこともある。「救う会」や「家族会」は猛反発するが、現実的に前に進めることなしに、日朝問題は解決に向かわない。

自民党の総裁選、立憲民主党の代表選。その布陣が決まった時点で政策と人物像を評価したい。ただし世論調査は小泉進次郎議員に流れる。日本経済新聞とテレビ朝日が8月21日、22日に行った緊急調査では、「次の自民党総裁にふさわしい人」の1位は、小泉進次郎議員だった。全体で23%(2位は石破茂18%)、自民党支持層で32%(2位は高市早苗15%、3位は石破茂14%)だ(『日本経済新聞』8月23日付け)。決選投票でもし小泉進次郎「ポエム政権」が誕生しても短命に終わるだろうが、それはまた別の課題だ。

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※ 本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年8月23日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

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ジャーナリスト、テレビコメンテーター。立憲民主党所属の元参議院議員(2期)。出版社に勤務後、フリージャーナリストとして「朝日ジャーナル」「週刊文春」など霊感商法批判、統一教会報道の記事を手掛ける。1995年から2007年まで、日本テレビ「ザ・ワイド」に12年間レギュラー出演。2010年には民主党から立候補、参議院議員となり、北朝鮮拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに取り組む。「北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実」(集英社新書)、「改訂新版 統一教会とは何か」(大月書店)など、著書多数。

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