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習近平国家主席は自画自賛。「収穫期」と位置づけたアフリカとの関係

9月4日から6日までの3日間、中国はアフリカ53カ国の首脳や関連機関のトップを北京に招き、「2024年中国アフリカ協力フォーラム首脳会議」(北京フォーラム)を開催しました。前回の2018年と比較すると、世界の注目度が大きく変わったというこの外交イベントで見えたのは、習近平国家主席と中国の自信だったようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂教授が、習近平国家主席の基調演説の要旨を紹介。習氏が中国とアフリカの良好な関係を自画自賛し、「収穫期に入った」と位置づけた背景を解説しています。

欧米の価値観外交に「脱貧困」の輸出で対抗する中国

まさにアフリカ一色に染まった1週間であった。9月4日から6日まで、「2024年中国アフリカ協力フォーラム首脳会議」(以下、北京フォーラム)が北京で開催された。出席したのはアフリカ53カ国の首脳や関連機関のトップら。中国中央テレビ(CCTV)の夕方のニュース『新聞聯播』は連日、放送時間枠をおよそ倍に拡大し各国首脳の到着や習近平国家主席との会談の場面を伝え続けた。

中国自身も「近年開催したなかで最大規模の外交行事」と位置付けた北京フォーラム。中国共産党中央政治局常務委員の7人に加え韓正国家副主席も動員し、慌ただしく会談が消化された。

歓迎レセプションと開幕式のほか、国政運営、工業化・農業の現代化、平和・安全保障、『一帯一路』(the Belt and Road)の質の高い共同建設という4つのハイレベル会合、及び第8回「中国アフリカ企業家会議」など、関連行事が続いた。

前回、2018年のフォーラム開催時には筆者も北京にいた。ホテルに設置されたセキュリティーシステムのため通行止めが多く、中心街が迷路のようになっていたことを思い出した。それにしてもこれほどの規模のイベントをやってのけるロジの力は相変わらずだ。

前回と比較して明らかに違っているのは中国の自信と世界の注目度だ。アフリカと手を結ぶ中国が、国際社会のなかで着実にその存在感を増しているという手応えを、中国もアフリカ諸国も感じているようだった。習近平国家主席の基調演説からも、その自信がはっきりと読み取れた。

注目は、中国─アフリカの関係が収穫の時期に入ったと位置付けた点だ。冒頭で、「春は花で秋は実り、豊作の年。この収穫の季節に、新旧の友人の皆さんと北京に集い、新時代の中国─アフリカ友好協力の大計を共に話し合うことをうれしく思う」とそれを匂わせると、続けて「われわれは世界の百年の変局の中、肩を並べ、手を携え、互いの正当な権益を守り、(中略)中国とアフリカの友好の感動的な物語を書いてきた。われわれは常に互いを理解し、互いを支持し合い、新しいタイプの国際関係の模範となった」とれまでの歩みを自画自賛してみせたのだ。

これが欧米先進国に向けたメッセージであるのは言うまでもない。習は、「西側の現代化プロセスでは発展途上国に深い苦難をもたらした」とけん制。「第二次世界大戦終結後、中国とアフリカを代表とする第三世界諸国は相次いで独立と発展を実現し、近代化の過程において、歴史的な不公正を絶えず是正してきた」と。その上で、「中国とアフリカが共に現代化の夢を追うことは、世界の南方の現代化に一つのブームを巻き起こし、人類運命共同体構築の新たな一ページを書くに違いない」と自信を示したのだ。

少し補足しておけば、中国がアフリカ諸国と非欧米を軸に連帯してきた歴史は長い。日本やアメリカが近年「グローバルサウスとの連携」をにわかに重視し始めたのとは年期が違うとの自負がある。そのルーツは1955年のアジア・アフリカ会議(バンド会議)だ。中国は、第三世界の代弁者を自認し、実行してきた。実際、筆者が北京に留学した80年代初めには中国が国費で招いたアフリカからの留学生があふれていた。

もちろん関係が長いことが即ち良好な関係ではないし、近いからこそ齟齬が生まれるのも外交である。しかし、それでも中国がまだ貧しかった時代から援助を惜しまなかったことはアフリカ諸国の記憶に刻まれている。

日本のメディアが、中国の対アフリカ援助は「債務の罠」だと批判しても、アフリカ諸国がほとんど反応を示していないのは、そのためだ。中国が、アフリカとの関係を収穫の時期と見定めたのは、一つにはアメリカとの関係悪化ためだ。早急にアフリカを貿易パートナーにしなければならない中国側の事情だが、そのアフリカがすでに──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年9月8日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

image by: SPhotograph / shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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