前回の記事で、石破首相になってから初めての衆議院選挙について総括したメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』の著者で『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さん。今回も引き続き先の衆院選を振り返りながら、ちっとも政権交代をする気がみられない野党にがっかりしつつも期待を寄せるなど、メルマガの中で「叱咤激励」しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:続・衆議院選挙の総括
続・衆議院選挙の総括
今週は米国時間の5日に米大統領選の投開票が行われその話題で持ち切りです。事前の報道では、歴史的にも稀にみる接戦で開票結果が判明するまでに時間も掛かりそうとされましたが、フタを開けてみると、トランプ氏の圧勝に終わり結果もすぐに判明しました。
米大統領選についてはまた回を改めて検証してみたいと思いますが、今回は、既に遠い話のようにすら思える日本の衆院選について、前回に引き続き振り返っておきたいと思います。
10月27日に行われた衆院選に対しては、前回書いたような様々な思いが残りました。それをまた繰り返すことはしませんが、自公に対する思い以外で最もモヤモヤしたのは、野党第一党として50議席を積み増して148議席を獲得した立憲民主党に関してです。
自公が過半数を割り込み、彼らを下野させる千載一遇のチャンスを得たにも関わらず、結局立憲民主党には本気で政権を取りに行く気がまったくないことが良く伝わってきた気がします。本当に、この政党はこれまで一体何をしていたのでしょうか。泉健太代表の時代を含めれば、政権交代の為の下準備を進める時間は十二分にありました。しかし結局その準備を怠ってきた、ということだと思います。というよりも、最初から政権交代など目指しているわけではなく、野党第一党の立場が最も居心地が良いと感じているのではないかとすら思ってしまいます。
野田佳彦代表は、選挙期間中「政権交代こそ、最大の政治改革」と言い続けてきました。しかし、うまく野党各党が連携すればまさに政権交代が実現可能な状況にまでせっかく自公を追い込んでおきながら、選挙の前も後も自党のことばかりで、積極的に前のめりで他党の党首と会談を重ねるわけでもなく、野党各党で連携して政権を取りに行く本気度はまったく感じません。
野田氏は、首相時代の2012年に、消費税を5%から8%、そして10%へと段階的に引き上げることを盛り込んだいわゆる「税と社会保障の一体改革関連法」を成立させた張本人です。しかし今回は、手取りが増えないまま物価高に苦しむ国民が多い中、消費減税や消費税撤廃を掲げるだけでも他の野党に対する大きな譲歩になり連携を進め易くなるにも拘らず、そのような気配は微塵もありません。よく言われている通り、財務大臣時代から、財務省の緊縮財政論に完全に洗脳されているのでしょう。
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代わりに目立っているのが、議席数を4倍の28議席に伸ばした国民民主党代表の玉木雄一郎氏です。野田氏が本気で政権交代を目指すのであれば、自分の代わりに玉木氏を総理に担ぎ上げてでも野党をまとめるという選択肢もあったと思います。国民民主党は維新と共に「ゆ党」とも呼ばれ、もともと自民党に秋波を送り続けてきました。結局今回も玉木氏からはまったく相手にされていない状況で、文字通りキャスティングボートを握った形の玉木氏から、いいようにあしらわれている印象しかありません。
「政権交代こそ、最大の政治改革」というのはまさにその通りです。自民党は、口先ではさかんに「反省の弁」を繰り返しながらも、実際にはまったく反省などしておらず腐敗し切っています。今回も、裏金問題の首謀者である旧安倍派5人衆の内の4人を始めとした裏金議員たちが18人も当選しました。自民党の岩盤支持層の人たちを含めて、同党に本来の反省を促し、際限なき政治腐敗を止めるためには、一度自民党を下野させて彼らの権力を奪うことが最も効果的です。
今回、その最大のチャンスを得ながら、その願ってもないチャンスをみすみす逃してしまうことしかできない立憲民主党を始めとした野党各党の不甲斐なさには心底がっかりです。
来週11日に予定されている国会の首班指名選挙では、石破氏と野田氏が決選投票に残り、最終的には石破氏が選ばれて少数与党政権が誕生する見込みです。自公が少数与党になったことによって、これまでのように国会を軽視して閣議決定ですべてを決めてしまうような自公の傍若無人は通用しなくなりました。
野党連携による政権交代が見込めないのであれば、せめて国会が与野党の議論の場としての機能回復を果たし、自公の長期政権によってボロボロになった日本の政治が少しでも正常化されることに期待したいと思います。自民党内で党内野党として孤立しながらも正論を吐き続けてきた石破新首相への期待が残るとすれば、党内都合よりも国会での議論を尊重した政権運営による、日本の政治の原点回帰以外にはありません。
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