石破茂首相になって初めての選挙だった衆院選は、裏金問題の影響で「自公過半数割れ」と大惨敗を喫しました。この原因はどこにあったのか、日本の政治はどこに向かうのか? 今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さんが、この衆院選を総括しながら、過去の気骨ある政治家たちを振り返りつつ今の政治に喝を入れています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:衆議院選挙が終わって
プロフィール:辻野晃一郎(つじの・こういちろう)
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。
“裏金の禊”は済んでなどいない。事前の予想通り「自公過半数割れ」となった衆院選
衆議院の解散総選挙が終わりました。結果は与党の惨敗で、自民党が56議席減の191議席、公明党が8議席減の24議席と、両党とも選挙前に比べて大きく議席を減らし、自公で過半数を割り込む形となりました。
比例の票数では、前回2021年の選挙に比べて、自民党は533万票減の1458万票、公明党も114万票減の596万票となり、両党とも1996年の比例代表導入以降で衆院選としては過去最低の得票数となりました。
もともと裏金問題が尾を引いて岸田首相が退陣し、石破茂氏が新たな総裁に選ばれた自民党および石破新政権の信任を自ら望んで問う選挙でしたが、自民党は、単独過半数はおろか、石破氏が勝敗ラインとした自公合わせて過半数という目標すら達成できませんでした。与野党の勢力が逆転したことで、自民党および石破新政権は国民の信任を得ることが出来なかった、という結果です。
公明党は議席数を減らしただけでなく、代表になったばかりの石井啓一氏(埼玉14区)と副代表の佐藤茂樹氏(大阪3区)が二人そろって落選しました。公明党は長く「下駄の雪」などと揶揄され続けてきましたが、その言葉通りまさに自民党の補完勢力に過ぎず、最近では山口那津男前代表が「(自民党と)同じ穴のムジナとは見られたくない」などと発言していましたが、存在感は薄まる一方です。今回も、自民党が非公認にした候補を推薦するなど、裏金問題に関してもどこまでも甘い対応に終始してきました。
一方、野党第一党の立憲民主党は50議席増の148議席を確保して躍進したものの、野田佳彦代表が目標とした比較第一党にはなれず、こちらも反自公の十分な受け皿にはなり切れずに中途半端な勝利に終わりました。その分、国民民主党が7議席から28議席と大幅に勢力を拡大し、今後のキャスティングボートを握る立場に浮上し注目を集めています。キャスティングボートを握る立場という点では維新も同じですが、こちらは6議席減らしており、かつての勢いは完全に失速しています。野党側では、首班指名で国民民主党の玉木雄一郎代表を担ぐ動きもあるようなので、立憲民主党他がその動きに加われば、1993年の細川護煕内閣誕生時の再来のようなこともあり得るかもしれません。私は、いかなる形にしろ、この機会を逃さずに一度自公を下野させた方が良いという意見なので、この動きには少し期待しています。
それにしても、自公が惨敗し、「大物」と言われる議員や問題のある現役閣僚も何人か落選して(以前に牧原秀樹氏についても問題ありと指摘しました)、政界浄化が一定程度進んだとは言えるものの、安保法制の強行採決やモリカケサクラから始まって、旧統一教会問題、裏金問題、マイナ保険証問題etc.と続く自公政権の腐敗や暴走を前にすれば、本来もっと壊滅的な議席減があって然りだったと思います。
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